今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 馬屋原博1) 神戸低侵襲がん医療センター 放射線治療科

著者: 冨岡洋海2) 神戸市立医療センター 西市民病院 呼吸器内科

監修: 杉山幸比古 練馬光が丘病院 呼吸器内科

著者校正済:2025/05/14
現在監修レビュー中
参考ガイドライン:
  1. 日本肺癌学会:肺癌診療ガイドライン―悪性胸膜中皮腫・胸腺腫瘍含む 2024年版
  1. 日本放射線腫瘍学会:放射線治療計画ガイドライン 2024年版 第6版
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 『肺癌診療ガイドライン 2024年版』『放射線治療計画ガイドライン 2024年版』の発刊に伴いレビューを行った。
 

概要・推奨   

  1. 放射線照射開始後早期に発症した放射線肺臓炎は重症化しやすい。
  1. 放射線治療によって器質化肺炎(OP、BOOP)が起こることがある。
  1. 高精度放射線治療においても放射線肺炎の発症頻度は低くはない。
アカウントをお持ちの方はログイン
  1. 閲覧にはご契約が必要となります。閲覧にはご契約が必要となります。閲覧にはご
  1. 閲覧にはご契約が必要となります。閲覧にはご契約が必要となります。閲覧にはご
  1. 閲覧にはご契約が必要となります。閲覧にはご契約が必要となります。
  1. 閲覧にはご契約が必要となります。閲覧にはご契約
  1. 閲覧にはご契約が必要となります。閲覧にはご契約が必要となります。
  1. 閲覧にはご契約が必要となります。閲覧にはご契約が必要となります。閲覧にはご
  1. 閲覧にはご契約が必要となります。閲覧にはご契約が必要となります。閲覧にはご契約が必
  1. 閲覧にはご契約が必要となります。閲覧にはご契約が必要となります。閲覧にはご契約が必要となります。閲覧にはご契約が必要となります 。閲覧にはご 契約が必要となります。閲 覧
  1. 閲覧にはご契約が必要となります。閲覧にはご契約が必要となります。閲覧にはご契約が必要となります。
  1. 閲覧にはご契約が必要となります。閲覧にはご契約が必要となります。閲覧にはご契約が必要
  1. 閲覧にはご契約が必要となります。閲覧にはご契約が必要となります。閲覧にはご契約が必要となります。閲覧にはご契

病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 放射線肺炎は、胸部への放射線照射後、照射野内を主体として、ときに照射野外にも拡大する非感染性の肺障害である。臨床的には放射線肺臓炎と感染性肺炎が併発する場合もしばしばみられる。
  1. 肺癌をはじめとする胸部腫瘍性病変に対する放射線治療に伴う最も重篤で、また頻度も高い有害事象である。
  1. 照射により、放射線感受性の高いII型肺胞上皮細胞と血管内皮細胞が傷害され、膜の透過性が亢進し、TNF-α、IL-1α、IL-1β、TGF-β等のサイトカインが誘導され、間質の浮腫や炎症が惹起されると考えられている。
  1. 照射後、1~3カ月後の比較的早期に起こる放射線肺臓炎(radiation pneumonitis)と、6~12カ月後に起こり、晩期障害として治癒することなく継続する放射線肺線維症(radiation-induced pulmonary fibrosis)の2つの病態に分けられる。
  1. 古典的な2次元照射においては、症状を伴う放射線肺臓炎、線維症の発症頻度はそれぞれ14.6%、28%、近年行われている高精度放射線治療である3次元照射においても、ステロイド治療を要する放射線肺臓炎の発症頻度は2~31%と報告されている[1]
  1. 2005年に行われたわが国の全国調査では、3次元放射線治療例1,111例のうち11例が放射線肺炎で死亡したと報告されている[2]
  1. 2004年から2008年にかけてわが国で行われた169例のcT1N0M0 非小細胞肺癌に対するSBRTの第II相試験では、Grade 5の死亡例はなかったが、Grade 3、4の放射線肺臓炎は11例(6.5%)と報告されている[3]
  1. 切除不能Ⅲ期非小細胞肺癌に対する同時併用化学放射線療法後に、免疫チェックポイント阻害薬の投与による地固め療法が標準的治療として推奨されている(日本肺癌学会『肺癌診療ガイドライン 2024年版』)。デュルバルマブによる地固め療法(デュルバルマブ群)を、プラセボ群と比較する第III相試験では、放射線肺臓炎/肺炎はデュルバルマブ群32.8%、プラセボ群23.5%で認められ、Grade 3以上の放射線肺臓炎/肺炎については、デュルバルマブ群4.4%、プラセボ群4.3%で認められた[4][5]。デュルバルマブ群において全体の放射線肺臓炎の頻度は増加するものの、そのうちの重篤な放射線肺臓炎の頻度は変わらないと評価されている。放射線肺臓炎の発症時期に関しても、両群で地固め療法開始後中央値55日と不変であった[6]。日本人サブセット解析(日本人集団/全体集団:112/713例)における放射線肺臓炎は、デュルバルマブ群73.6%、プラセボ群60.0%であった[7]。そのうち、Grade 3~4の放射線肺臓炎は、デュルバルマブ群5.6%、プラセボ群2.5%、Grade 5の放射線肺臓炎については、デュルバルマブ群1.4%、プラセボ群2.5%で認められた。化学放射線療法そのものはプロトコール治療外で行われたため、照射技術や肺照射体積の詳細については明らかにされていない。評価方法の違いが考えられるものの、欧米人と比較して、日本人では放射線肺臓炎の発症率がもともと高い可能性があり、デュルバルマブの投与に伴うGrade 3~4の重篤な放射線肺臓炎の発症頻度についても、わずかながら増加する可能性もあることが示唆される。
  1. その後、わが国におけるreal world dataとして、いくつかの後方視的検討が報告されている。症状を有する放射線肺臓炎/肺炎は34~38% (うち死亡例0~1.1%)、リスク因子として、肺V5 ≧ 58.9%・年齢70歳以上・男性[8]、肺V20 ≧ 26%[9]、肺V20 Gy ≧ 25%・平均肺線量 (MLD) ≧ 10 Gy[10]、肺V20 ≧ 19%・原発巣局在部位[11]が報告されている。デュルバルマブ承認後の有症状放射線肺炎の頻度(34~38%)は、承認以前の多施設データをまとめた代表的な報告[12]の24%と比較して、10ポイント程度増加しているとみられる。
  1. PACIFICレジメン13研究1,885例のシステマティックレビュー/メタアリシスでは、肺臓炎の頻度は35%、Grade 3以上は6%で、65歳以上、アジア人で頻度が高い結果であった[13]
  1. 厚生労働省のデュルバルマブ最適使用推進ガイドラインによると、デュルバルマブ投与の安全性が確立されておらず、投与対象とならない患者として、根治的化学放射線治療後にGrade2以上の放射線肺臓炎の発現が認められた患者とPerformance Status 2-4の患者が挙げられている。また、慎重投与の対象として、間質性肺疾患や自己免疫疾患の既往が挙げられている。
  1. 2024年に発表されたADRIATC試験の結果より、新たに限局型小細胞肺癌に対しても、同時併用化学放射線療法後に、免疫チェックポイント阻害薬の投与による地固め療法が標準的治療として推奨されるようになった(日本肺癌学会『肺癌診療ガイドライン 2024年版』)。限局型小細胞肺癌に対して、化学放射線療法後にデュルバルマブによる地固め療法(デュルバルマブ群)を、プラセボ群と比較する第III相試験で放射線肺臓炎/肺炎は、デュルバルマブ群38.2%、プラセボ群30.2%で認められ、Grade 3以上放射線肺臓炎/肺炎については、デュルバルマブ群 3.1%、プラセボ群2.6%で認められた。Grade 5はデュルバルマブ群1例(0.4%)のみに認められた。デュルバルマブ群において全体の放射線肺臓炎の頻度はやや増加するものの、重篤な放射線肺臓炎の頻度は同様であると評価された。発症までの期間中央値は、地固め療法開始後55/65日であり、デュルバルマブ群において短縮する傾向が認められた[14]
 
デュルバルマブ承認前後の日本人集団における放射線肺炎(RP)の頻度に関するreal world data

下記参考文献を基に表を整理した。
 
参考文献:
1) Horinouchi H, Atagi S, Oizumi S, et al. Real-world outcomes of chemoradiotherapy for unresectable Stage III non-small cell lung cancer: The SOLUTION study. Cancer Med, 2020; 9(18): 6597-608. PMID: 32730697
2) Tsukita Y, Yamamoto T, Mayahara H, et al. Intensity-modulated radiation therapy with concurrent chemotherapy followed by durvalumab for stage III non-small cell lung cancer: A multi-center retrospective study. Radiother Oncol, 2021; 160: 266-72. PMID: 34023330
3) Shintani T, Kishi N, Matsuo Y, et al. Incidence and Risk Factors of Symptomatic Radiation Pneumonitis in Non-Small-Cell Lung Cancer Patients Treated with Concurrent Chemoradiotherapy and Consolidation Durvalumab. Clin Lung Cancer, 2021; 22(5): 401-10. PMID: 33678582
4) Saito G, Oya Y, Taniguchi Y, Kawachi H, et al. Real-world survey of pneumonitis and its impact on durvalumab consolidation therapy in patients with non-small cell lung cancer who received chemoradiotherapy after durvalumab approval (HOPE-005/CRIMSON). Lung Cancer, 2021; 161: 86-93. PMID: 34543942
5) Oshiro Y, Mizumoto M, Sekino Y, et al. Risk factor of pneumonitis on dose-volume relationship for chemoradiotherapy with durvalumab: Multi-institutional research in Japan. Clin Transl Radiat Oncol, 2021; 29: 54-9. PMID: 34151033

出典

著者提供
 
  1. 放射線肺炎の予防薬として確立されたものはない。
  1. 臨床的な有効性は確立されていないが、放射線肺炎を予防する薬剤(radioprotector、radiation mitigator)として、pentoxifylline[15]、amifostine[16]や、カプトプリルなどのACE阻害薬[17][18][19][20]、メラトニン[21]、BIO300[22]が研究段階にある。また、マクロライド系抗生剤であるクラリスロマイシンが、SBRTにおける放射線肺臓炎の重症化を抑制する可能性が報告されている[23]。さらに、抗線維化薬であるニンテダニブの放射線線維症への有効性が検討されている[24]
 
  1. 高精度放射線治療においても放射線肺炎の発症頻度は低くはない(O)。
  1. 従来の三次元原体放射線治療(3D-CRT)において、ステロイド治療を要する放射線肺炎の発症頻度は2~31%[1]、放射線肺線維症の頻度は51.4%、重症放射線線維症発症頻度は8.3%と報告されていた[25]。非小細胞肺癌に対する同時併用化学放射線療法症例836例の国際的なメタアナリシスによると、有症状放射線肺炎の発症率は30%、致死的放射線肺炎の発症率は2%であった[26]
  1. 近年、正常組織への照射を減らし、標的組織への効果的な照射が可能な体幹部定位放射線治療(SBRT)、強度変調放射線治療(IMRT)といった高精度放射線治療が行われるようになってきたが、広範な正常肺が低線量の照射野に含まれることになり、肺障害のリスクは低いわけではない。
  1. 2004年から2008年にかけてわが国で行われた169例のcT1N0M0 非小細胞肺癌に対するSBRTの第II相試験では、Grade 5の死亡例はなかったが、Grade 3、4の放射線肺臓炎は11例(6.5%)と報告されている[3]
  1. 非小細胞肺癌化学放射線療法において3D-CRTとIMRTを比較したメタアナリシスでは、症候性放射線肺臓炎の頻度は3D-CRTで24~35%、IMRTで9~32%であり、IMRTにより頻度低減が得られる可能性が示唆されている[27]
  1. 米国で行われた局所進行肺癌に対する第III相試験において、IMRT治療群は、3D-CRT治療群と比較しGrade 3以上の放射線肺臓炎の発症率が低かったと報告されている[28]
  1. 非小細胞肺癌化学放射線療法における線量増加の意義を検証した臨床試験のなかで3D-CRTとIMRTを比較したサブセット解析では、IMRTによりCTCAE Grade 3以上の重篤な放射線肺臓炎の頻度が低減できることが示唆された[29]
  1. IMRTにおける放射線肺臓炎発症に関して、肺に対する小範囲の高線量と広範囲の低線量のどちらがより関与するかについては明らかでなく、V20 Gy[30]のみならず、低線量の指標V5 Gy[8][31]などについても考慮する必要がある。
 
  1. 予防的リンパ節照射の省略により、放射線肺炎の発症頻度が低減できる(R)。
  1. 予防的リンパ節照射(elective nodal irradiation:ENI)とは、臨床上は明らかなリンパ節転移は認められないものの、腫瘍の進展形式から微小転移が高頻度に起こり得るリンパ節領域への予防的な照射のことを指す。肺癌の原発部位により、ENIの領域が異なってくる。日本肺癌学会と日本放射線腫瘍学会の共同で、『肺癌放射線治療計画のためのリンパ節部位のCTアトラス』が作成されている[32]。近年ではENIを設定せず、画像上の肉眼的病巣の進展範囲のみを照射する病巣部照射(involved field irradiation:IFI)が行われることがある。切除不能III期非小細胞肺癌に対してIFIを用いた化学放射線療法の線量増加を検証する第III相比較試験の結果、IFIにより線量増加が可能であること、ENI群に対するIFI群による放射線肺臓炎の発症頻度低減(29% vs 17%、 p=0.044)が得られたことが報告されている[33]。しかしながら、後に行われたIFIを用いた線量増加の意義を検証する第III相比較試験にて、線量増加の意義が否定されたことより(RTOG 0617試験)[34]、最近では肺毒性を低減させることを意図してIFIによる化学放射線療法が行われることが多い。腫瘍の進展範囲が大きいために照射野が広くなる場合にはIFIによる放射線治療が推奨される。一般的にIFIによる領域照射の省略に伴う明らかなリンパ節転移再発の増加や生存期間への影響は生じにくいと考えられている[35]
  1. 小細胞肺癌に対しても、近年の線量増加を試みる臨床試験ではIFIを行うことが一般的になっており、特に病期診断にFDG-PETを用いる場合には、ENIの省略も選択肢となる[36][37]。また、腫瘍体積が大きな小細胞肺癌に対して、導入化学療法を先行し、腫瘍縮小が得られたあとに化学放射線療法を施行する場合には、縮小後の腫瘍に限局した照射野設定を行うことが一般的である。
 
  1. 放射線治療計画において、線量体積ヒストグラム(Dose Volume Histogram:DVH)を用いた肺照射体積計算を行うことで、放射線肺臓炎の頻度をある程度予測可能である(O)。
  1. 胸部腫瘍に対するCT画像に基づく3次元放射線治療計画を行う場合、DVHを用いることで、ある線量以上が照射される肺体積の、全肺に対する比率を正確に計算することができる。DVHから導かれるさまざまなパラメータと放射線肺臓炎発症の相関性が検討されている。なかでもV20(20 Gy以上照射される肺体積の全肺体積に占める割合)と平均肺線量(mean lung dose:MLD)の有症状放射線肺臓炎との関連性がよく知られている[38][39][40]。Tsujinoらは非小細胞肺癌71例に対する60 Gy/30分割/6週間の化学放射線療法におけるV20とCTCAE Grade 2以上の放射線肺臓炎発症率の関係を解析し、V20 ≦ 20%、21~25%、26~30%、≧ 31%での発症率はそれぞれ8、18、50、85%でV20が高くなるほど発症率が高かった[38]。これらの報告から日本放射線腫瘍学会のガイドラインでは、通常分割60 Gy/30回程度の同時併用化学放射線療法においては、両肺のV20を30%以下、MLDを20 Gy以下にするよう放射線治療計画を行うことが推奨されている[41]。また、Tsujinoらは小細胞肺癌49例に対する45 Gy/30分割/3週間の加速過分割照射による化学放射線療法において、V20 ≦ 20%、21~25%、26~30%、≧31%での発症率はそれぞれ0、7、25、43%であり、通常分割照射と比較して、同一のV20値であっても、放射線肺臓炎の発症率がより低いことを報告している[42]
  1. 日本人を対象とした化学放射線療法の臨床試験では放射線肺臓炎の発症頻度が海外からの報告と比較して、やや多い傾向がみられることが知られている。V20が30〜35%の症例で致死的放射線肺臓炎の発症がみられたという報告もあり[43]、V20が30%を超える治療計画は臨床的に許容されるものの、治療経過には十分な注意が必要である。
  1. 強度変調放射線治療(IMRT)などの高精度放射線治療技術の普及に伴い、最近ではごく低線量の肺照射体積も重篤な放射線肺臓炎発症へ関与していることが指摘されている。YomらはIMRTを用いることで従来の照射(3D-CRT)と比較してGrade 3以上の重篤な放射線肺臓炎の頻度低減が期待できることを報告しているが、IMRT群においてV5が70%超の場合には逆に重篤な放射線肺臓炎が増加することを報告している[44]。KhalilらはIMRTにおいて従来の線量制約に対して、さらにV5 ≦ 60%の制約を加えることにより、致死的な放射線肺臓炎の頻度が大幅に低減できることを報告している[45]。また、同側あるいは対側肺のまったく照射されずに、スペアされる肺体積(Vs5)が放射線肺臓炎の予測に有用であるという報告もある[46]
  1. 臨床的I期非小細胞肺癌に対するSBRTにおいても、肺照射体積V25が症候性放射線肺臓炎を予測する因子であると報告されている[47]
  1. NTCP(normal tissue complication probability)と呼ばれる数理モデルを用いた放射線肺臓炎の予測法もあるものの、まだ十分に確立されたものではない[48][49][50]
  1. FDG-PETをはじめとする非侵襲的な分子イメージングによって、放射線性肺障害発生の予測が検討されている[51][52][53]
 
線量体積ヒストグラム(DVH)における肺線量のみかた

非小細胞肺癌に対して60 Gy/30分割の化学放射線療法を行った症例におけるDVHを上記に例示する。横軸(X軸:Gy)は線量を示し、縦軸(X軸:%)は各臓器あるいは標的における相対的な体積割合を示す。紺色で示す曲線が全肺のDVH曲線である。肺V(XGy)%は肺においてXGy以上の線量照射される領域の全肺における割合を示す。本症例におけるV20は、20 Gyから上方に伸ばし、肺DVH曲線との交点のY座標を読み取ることで、38%と見積もられる。

出典

著者提供
 
  1. CTやMRIなどの医療画像の関心領域を設定して大量の定量的特徴を抽出し解析するRadiomicsや、同様の解析を空間的放射線治療線量分布図を用いて行うDosiomicsをAIの手法を用いて解析し、より精度の高い放射線肺臓炎予測モデルの作成が試みられている[54][55]。また、4D-CTや肺換気血流シンチグラフィーなどの肺機能画像を用いて、より機能の高い部分をなるべく温存する放射線治療計画が研究されている[56][57]
 
  1. KL-6は放射線肺炎の血清マーカーとして有用である(推奨度2、C)
  1. 胸部放射線治療を受けた肺癌患者における血清マーカーをprospectiveに検討した報告では、40 Gy照射の時点におけるKL-6値が照射前値より上昇している場合には、放射線肺炎の発症を予測できる可能性があるとされている。なお、SP-Dに関しては有意な結果は得られなかった[58]
  1. 同様に体幹部定位放射線治療(stereotactic body radiotherapy:SBRT)における検討でも、照射開始2カ月後にKL-6が照射前値の1.5倍以上であれば放射線肺炎の発症を予測できる、との報告[59]や、KL-6照射前値が300 U/mL以上であればgrade 2以上の放射線肺炎の発症が予測されるとの報告がある[60]。また、予後に関しても、KL-6が照射前値の1.5倍以上に上昇した放射線肺炎(放射線肺臓炎)では、致死的になる可能性が高い[61]。なお、放射線治療後の器質化肺炎(radiation-induced organizing pneumonia)においては、一般的にKL-6の有用性は乏しい。
  1. そのほか、放射線肺炎に関する血清マーカーとして、TGF-β1、IL-1、IL-6、IL-8、PAI-1などが検討されている[62][63][64][63][64]。(参照:間質性肺炎
問診・診察のポイント  
  1. 放射線治療についての情報(開始日、照射方法、照射範囲、照射スケジュール)を確認する。

これより先の閲覧には個人契約のトライアルまたはお申込みが必要です。

最新のエビデンスに基づいた二次文献データベース「今日の臨床サポート」。
常時アップデートされており、最新のエビデンスを各分野のエキスパートが豊富な図表や処方・検査例を交えて分かりやすく解説。日常臨床で遭遇するほぼ全ての症状・疾患から薬剤・検査情報まで瞬時に検索可能です。

まずは15日間無料トライアル
本サイトの知的財産権は全てエルゼビアまたはコンテンツのライセンサーに帰属します。私的利用及び別途規定されている場合を除き、本サイトの利用はいかなる許諾を与えるものでもありません。 本サイト、そのコンテンツ、製品およびサービスのご利用は、お客様ご自身の責任において行ってください。本サイトの利用に基づくいかなる損害についても、エルゼビアは一切の責任及び賠償義務を負いません。 また、本サイトの利用を以て、本サイト利用者は、本サイトの利用に基づき第三者に生じるいかなる損害についても、エルゼビアを免責することに合意したことになります。  本サイトを利用される医学・医療提供者は、独自の臨床的判断を行使するべきです。本サイト利用者の判断においてリスクを正当なものとして受け入れる用意がない限り、コンテンツにおいて提案されている検査または処置がなされるべきではありません。 医学の急速な進歩に鑑み、エルゼビアは、本サイト利用者が診断方法および投与量について、独自に検証を行うことを推奨いたします。
薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※同効薬・小児・妊娠および授乳中の注意事項等は、海外の情報も掲載しており、日本の医療事情に適応しない場合があります。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適応の査定において保険適応及び保険適応外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適応の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
馬屋原博 : 研究費・助成金など(MSD(株))[2024年]
冨岡洋海 : 特に申告事項無し[2025年]
監修:杉山幸比古 : 特に申告事項無し[2025年]

ページ上部に戻る

放射線肺障害

戻る