今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 冲中敬二 国立がん研究センター東病院 総合内科

監修: 具芳明 東京科学大学大学院医歯学総合研究科 統合臨床感染症学分野

著者校正/監修レビュー済:2024/11/13
参考ガイドライン:
  1. CDCACIP Recommendations(2024年7月17日閲覧)
  1. 日本呼吸器学会日本感染症学会日本ワクチン学会:65 歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第6版 2024 年9月6日)
  1. 環境感染学会:医療関係者のためのワクチンガイドライン 第3版
  1. 米国感染症学会(IDSA):免疫不全者へのワクチン接種ガイドライン Infectious Diseases Society of America. 2013 IDSA clinical practice guideline for vaccination of the immunocompromised host. Clin Infect Dis. 2014 Feb;58(3):e44-100.
  1. 米国臨床腫瘍学会(ASCO):Vaccination of Adults With Cancer: ASCO Guideline. J Clin Oncol. 2024 Mar 18:JCO2400032.
  1. 日本臨床腫瘍学会:発熱性好中球減少症(FN)診療ガイドライン 改訂第3版
  1. National HIV Curriculum成人へのワクチン
  1. 米国リウマチ学会:ワクチンガイドライン
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、RSウイルスワクチンについて新たに項目を作成し記載した。
  1. 2023年に、60歳以上(Arexvy(アジュバントRSVワクチン)、Abrysvo(二価プレフュージョンワクチン))と妊婦(Abrysvo)を対象としたRSウイルスワクチンが国内で承認された。
  1. ArexvyおよびAbrysvoのワクチン効果に関して、免疫不全のない60歳以上を対象とした研究では、接種シーズンの下気道感染に対して前者では82.6%、翌シーズンが56.1%、2シーズンまとめると74.5%の効果が示され、後者では88.9%、翌シーズンが78.6%、2シーズンまとめると84.4%の効果が示された(Surie D, et al. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2023 Oct 6;72(40):1083-1088.)。
  1. 国内未承認のmRNAワクチンも免疫不全のない60歳以上を対象とした臨床試験では、下気道感染へのワクチン効果が約83%と報告されている(Wilson E, et al. N Engl J Med. 2023 Dec 14;389(24):2233-2244.)。
  1. ランダム化試験のメタ解析では、母親のワクチン接種はRSウイルスに感染した乳児の入院を減少させることが示されている(リスク比0.50;95%CI:0.31-0.82)(Phijffer EW, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2024 May 2;5(5):CD015134.)。
  1. その他のワクチンについても2024年7月時点での新たな推奨内容にアップデートした。
  1. 高齢者におけるインフルエンザ高用量ワクチン:2023年12月に日本国内でも販売製造承認申請が行われている。
  1. 肺炎球菌ワクチン:2024年8月末にPCV20が発売され、PCV13は9月で終売となった。2024年9月時点で日本国内で推奨されている65歳以上の成人に対する接種について、アルゴリズムを引用し加筆した。
  1. 帯状疱疹ワクチン:2024年7月現在、国内では65歳以上への定期接種の位置づけについて検討されている。

概要・推奨   

  1. ワクチン接種は接種した人を伝染性疾患から守るだけでなく、周囲の大切な人を守る役割も果たす。
  1. 特に医療従事者や免疫不全者のケアギバー(Care giver)は毎年のインフルエンザワクチン接種や新型コロナワクチン接種が推奨されている。
 
インフルエンザワクチン:
  1. 健常成人および高齢者へのインフルエンザワクチンへの一定の予防有効性が示されている(推奨度1)
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  1. 2020年2月4日付けの厚生労働省健康局長通知によって、予防接種間隔の改訂がなされることとなった。具体的内容は2月28日の厚生労働省医薬・生活衛生局医薬安全対策課からの事務連絡に記載がある[1]。10月1日に定期接種実施要領が改正された。
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病態・疫学・診察 

まとめ  
  1. 医療の進歩に伴い、免疫不全を伴う患者が増加傾向にある。2023年の統計では65歳以上人口は29%を超え、2070年には約2.6人に1人が65歳以上、約4人に1人が75歳以上と予測されている[2]。また、がん診療や自己免疫疾患治療の進歩に伴い、治療による新たな免疫不全者や、治療後の長期生存者も増加している[3]。このように市中の易感染者が増加するなか、このような易感染者を直接的もしくは間接的に守るためにもワクチンによる伝染性疾患の予防は今まで以上に重要となる。

各論 

健常成人  
インフルエンザワクチン:
  1. 2017~18シーズンの米国ではインフルエンザワクチンの効果は38%と報告され、ワクチンによって以下の予防がなされたと試算されている[4]
  1. インフルエンザ関連疾患:710万件
  1. インフルエンザ関連受診:370万件
  1. インフルエンザ関連入院:10.9万件
  1. インフルエンザと肺炎による死亡:0.8万件
  1. ワクチン接種により入院の10%が予防され、幼児(6カ月~4歳)では41%が予防された。
  1. 欧州では年間38,500例の死亡があり、その約9割が高齢者とされる[5]
  1. 年齢別の推定超過死亡率として、65歳未満が0.1-6.4/10万人、65~74歳が2.9-44.0/10万人、75歳以上が17.9-223.5/10万人と推定される[6]
  1. 65歳以上の高齢者はインフルエンザ罹患時の入院率が高いことが知られている。
 
米国における年齢ごとの入院率

65歳以上の入院率が非常に高いことが示されている。(情報元:CDCのMorbidity and Mortality Weekly Report)
*:流行の主流がA(H3N2)だった年を示す。

出典

Schaffner W, Chen WH, Hopkins RH, Neuzil K.
Effective Immunization of Older Adults Against Seasonal Influenza.
Am J Med. 2018 Aug;131(8):865-873. doi: 10.1016/j.amjmed.2018.02.019. Epub 2018 Mar 12.
Abstract/Text The 2017-2018 influenza season reminds us that it is important for health care professionals to be prepared for the annual onslaught of this contagious respiratory disease associated with potentially serious complications. Vaccination is by far the best method to prevent and control influenza, reducing illness, hospitalizations, and mortality. The highest rates of influenza-associated morbidity and mortality are observed in older adults. The immune function of older adults decreases with increasing age, a phenomenon termed immunosenescence. Immunosenescence not only confers increased susceptibility to influenza disease, but also renders vaccination less effective. To address the need for improved vaccines that provide enhanced protection to this high-risk group, 2 formulations-a high-dose vaccine and an adjuvanted vaccine-have been approved in recent years specifically for people aged 65 years and over. Here we discuss: the challenges of influenza immunization in those 65 years and older; the recent advancements in vaccines targeted at this age group; and the latest influenza vaccine recommendations for the 2017-2018 influenza season in the United States.

Copyright © 2018 Elsevier Inc. All rights reserved.
PMID 29544989
 
  1. また、ワクチン効果が劣る可能性のある人々を間接的に守るため(Herd Immunity)の接種意義もある。過去に日本で小児へのインフルエンザワクチン集団接種が中止になったことによって高齢者の超過死亡が増加したことが報告されている[7]
  1. 北半球では10月終わりまでに接種されることが推奨されるが、それ以降の接種でも意義はあるとされる[8]。(2023~24年の米国の成人への推奨では9月か10月の接種を推奨し、7月や8月の接種は特段の理由(7~8月に妊娠第3期となる妊婦など)がなければ避けることが推奨されている[9]。)
  1. 1982~2018年までの36シーズンにおける流行のピークは2月が42%と最も多く、12月が19%、1月および3月が17%であった[10]
  1. ワクチンの効果持続期間は6か月程度と考えられている[11]
  1. 接種対象者:国内では65歳以上(心、腎臓、呼吸機能障害により身の回りの生活を極度に制限されたり、HIV感染に伴って日常生活が不可能な場合には60歳以上)が定期接種対象者、生後6カ月以上のそれ以外の人は任意接種となっている(経鼻弱毒生ワクチンは添付文書上2~18歳が対象となっている)。
  1. 米国では6カ月以上のすべての人への年1回の定期的な接種が推奨されている(米国では65歳以上の高齢者や免疫抑制剤投与を受けている18~64歳の固形臓器移植レシピエントに対しては高用量不活化ワクチンもしくは結合型不活化ワクチンが推奨されている)[12]
  1. インフルエンザ関連合併症のリスクが高い人々が、ワクチン接種の対象者として特に重要と考えられる(ただしこれらの対象者には経鼻弱毒生ワクチンは推奨されない)。
重症インフルエンザによる合併症のリスクが高い成人集団[9]
  1. 50歳以上のすべての人
  1. 慢性肺障害(喘息を含む)、心血管系障害、腎・肝・神経・血液・代謝疾患を有する人
  1. 免疫不全の人(免疫抑制剤やHIV感染など)
  1. インフルエンザシーズンの妊婦
  1. 老人ホームなどの長期介護施設の居住者
  1. BMI 40以上の肥満者
  1. インフルエンザ関連合併症のリスクが高い人と同居または介護している人や医療従事者へのワクチン接種も重要である[9]
  1. 妊婦は妊娠第2~3期にインフルエンザに罹患すると重症化や合併症のリスクが高く、妊婦および新生児を守るためにもワクチン接種が推奨される[9]
  1. 妊娠中いつでもワクチン接種が可能であるが、妊娠中は経鼻弱毒生ワクチンは避ける。
  1. 不活化インフルエンザワクチンと有害な妊娠転機との関連性は指摘されていない。
  1. インフルエンザワクチンを毎年接種していると効果が下がる可能性が指摘されているが[13]、接種しないとその年のワクチン効果が得られないため、やはり毎年の接種が推奨される[4]
  1. 66歳以上を対象としたカナダでの検討では過去10シーズンに1度もワクチンを受けていない人のワクチン効果が34%であったのに対し、過去の接種回数に応じたワクチン効果は以下の通り。1~3回:26%、4~6回:24%、7~8回:13%、9~10回:7%。
  1. 原因は不明だが、過去のワクチン接種によって誘導された免疫反応とそのシーズンのウイルス抗原との交差反応による効果減弱などが疑われている[14]
 
  1. 健常成人および高齢者へのインフルエンザワクチンの効果:一定の有効性が示されている(推奨度1)
  1. 健康な成人へのインフルエンザワクチンの効果に関し、2018年のDemicheliらのコクランレビューがある[15]。16~65歳の健康な成人に対して不活化インフルエンザワクチンを接種すると、プラセボまたは接種なしと比べたランダム化比較試験のメタ解析によるリスク比は以下の通りであった。
  1. インフルエンザ発症:0.41(2.3%→0.9%へ減、95%信頼区間〔CI〕:0.36-0.47、n=71,221、エビデンスの質Moderate)
  1. インフルエンザ様症状:0.84(21.5%→18.1%へ減、95%CI:0.75-0.95、n=25,795、エビデンスの質Moderate)
  1. 入院エピソード:0.96(14.7%→14.1%、95%CI:0.85-1.08、n=11,924、エビデンスの質Low)
  1. インフルエンザおよびインフルエンザ様症状を有意に減少させるという結果であるが、その減少幅は少なく、インフルエンザに対するNumber needed to vaccinate(NNV)は71で、インフルエンザ様症状は29であった。
  1. 高齢者においても、2018年のDemicheliらのコクランレビューによって検討されている[16]。65歳以上の高齢者に対して不活化インフルエンザワクチンを接種すると、プラセボまたは接種なしと比べたランダム化比較試験のメタ解析によるリスク比は以下の通りであった。
  1. インフルエンザ発症:0.42(6%→2.4%へ減、95%CI:0.27-0.66、n=2,217、エビデンスの質Low)
  1. インフルエンザ様症状:0.59(6%→3.5%へ減、95%CI:0.47-0.73、n=6,894、エビデンスの質Moderate)
  1. インフルエンザおよびインフルエンザ様症状を有意に減少させるという結果であり、インフルエンザに対するNNVは30、インフルエンザ様症状は42であった。ただ、研究ごとのインフルエンザ診断根拠に関する情報が限定されたため、エビデンスの質は低いと判断されている。
  1. インフルエンザで入院した患者での検討では、ICUへの入室を59%減少させた(調整オッズ比0.41、95%CI:0.18-0.96)と報告されている[17]
  1. また、A(H3N2)に対するワクチン効果は他の型よりもワクチン効果が劣る可能性が示されているが[18]、特にvariant A(H3N2)が流行する年の高齢者のワクチン効果は下がる可能性が別のメタ解析で報告されている[19]
  1. 18~64歳 46%(95%CI:30-61)
  1. 65歳以上 14%(95%CI:-3-30)
  1. 追記:ベースラインの発症頻度が数%と低くNNVは大きな数字となっているものの、リスク比は大きな減少を示しており、特に併存疾患の存在やインフルエンザによる合併症のリスクのある高齢者にはワクチンの接種を勧める根拠となると考えられる。
    2012年のLancet Infect Disの成人(18~64歳)におけるプラセボとのランダム化比較試験のメタ解析[20]でもワクチン効果は59%(2.7%→1.2%へ減、95%CI:0.51-0.67、n=31,892)との結果が報告されている。
    また、高齢者においても症例・対象研究(test-negative design)のメタ解析がLancet respire Medで報告[21]されており、流行シーズンではワクチンタイプと適合した場合の有効率が44.38%(95%CI:22.63-60.01)、ワクチンタイプと適合しない場合の有効率でも20.00%(95%CI:3.46-33.68)とある程度の効果が示されている。
 
成人への不活化インフルエンザワクチン接種のリスク比および95%信頼区間

n=インフルエンザ症例数、N=登録例数
 
  1. Ohmit SE, Victor JC, Rotthoff JR et.al. Prevention of antigenically drifted influenza by inactivated and live attenuated vaccines. N Engl J Med. 2006 Dec 14;355(24):2513-22. PubMed PMID: 17167134; PubMed Central PMCID: PMC2614682.
  1. Ohmit SE, Victor JC, Teich ER et.al. Prevention of symptomatic seasonal influenza in 2005-2006 by inactivated and live attenuated vaccines. J Infect Dis. 2008 Aug 1;198(3):312-7. doi: 10.1086/589885. PubMed PMID: 18522501; PubMed Central PMCID: PMC2613648.
  1. Beran J, Wertzova V, Honegr K et.al. Challenge of conducting a placebo-controlled randomized efficacy study for influenza vaccine in a season with low attack rate and a mismatched vaccine B strain: a concrete example. BMC Infect Dis. 2009 Jan 17;9:2. doi: 10.1186/1471-2334-9-2. PubMed PMID: 19149900; PubMed Central PMCID: PMC2639595.
  1. Beran J, Vesikari T, Wertzova V et.al. Efficacy of inactivated split-virus influenza vaccine against culture-confirmed influenza in healthy adults: a prospective, randomized, placebo-controlled trial. J Infect Dis. 2009 Dec 15;200(12):1861-9. doi: 10.1086/648406. PubMed PMID: 19909082.
  1. Monto AS, Ohmit SE, Petrie JG et.al. Comparative efficacy of inactivated and live attenuated influenza vaccines. N Engl J Med. 2009 Sep 24;361(13):1260-7. doi: 10.1056/NEJMoa0808652. PubMed PMID: 19776407.
  1. Jackson LA, Gaglani MJ, Keyserling HL et.al. Safety, efficacy, and immunogenicity of an inactivated influenza vaccine in healthy adults: a randomized, placebo-controlled trial over two influenza seasons. BMC Infect Dis. 2010 Mar 17;10:71. doi: 10.1186/1471-2334-10-71. PubMed PMID: 20236548; PubMed Central PMCID: PMC2845585.
  1. Frey S, Vesikari T, Szymczakiewicz-Multanowska A et.al. Clinical efficacy of cell culture–derived and egg‐derived inactivated subunit influenza vaccines in healthy adults. Clin Infect Dis. 2010 Nov 1;51(9):997-1004. doi: 10.1086/656578. PubMed PMID: 20868284.

出典

Osterholm MT, Kelley NS, Sommer A, Belongia EA.
Efficacy and effectiveness of influenza vaccines: a systematic review and meta-analysis.
Lancet Infect Dis. 2012 Jan;12(1):36-44. doi: 10.1016/S1473-3099(11)70295-X. Epub 2011 Oct 25.
Abstract/Text BACKGROUND: No published meta-analyses have assessed efficacy and effectiveness of licensed influenza vaccines in the USA with sensitive and highly specific diagnostic tests to confirm influenza.
METHODS: We searched Medline for randomised controlled trials assessing a relative reduction in influenza risk of all circulating influenza viruses during individual seasons after vaccination (efficacy) and observational studies meeting inclusion criteria (effectiveness). Eligible articles were published between Jan 1, 1967, and Feb 15, 2011, and used RT-PCR or culture for confirmation of influenza. We excluded some studies on the basis of study design and vaccine characteristics. We estimated random-effects pooled efficacy for trivalent inactivated vaccine (TIV) and live attenuated influenza vaccine (LAIV) when data were available for statistical analysis (eg, at least three studies that assessed comparable age groups).
FINDINGS: We screened 5707 articles and identified 31 eligible studies (17 randomised controlled trials and 14 observational studies). Efficacy of TIV was shown in eight (67%) of the 12 seasons analysed in ten randomised controlled trials (pooled efficacy 59% [95% CI 51-67] in adults aged 18-65 years). No such trials met inclusion criteria for children aged 2-17 years or adults aged 65 years or older. Efficacy of LAIV was shown in nine (75%) of the 12 seasons analysed in ten randomised controlled trials (pooled efficacy 83% [69-91]) in children aged 6 months to 7 years. No such trials met inclusion criteria for children aged 8-17 years. Vaccine effectiveness was variable for seasonal influenza: six (35%) of 17 analyses in nine studies showed significant protection against medically attended influenza in the outpatient or inpatient setting. Median monovalent pandemic H1N1 vaccine effectiveness in five observational studies was 69% (range 60-93).
INTERPRETATION: Influenza vaccines can provide moderate protection against virologically confirmed influenza, but such protection is greatly reduced or absent in some seasons. Evidence for protection in adults aged 65 years or older is lacking. LAIVs consistently show highest efficacy in young children (aged 6 months to 7 years). New vaccines with improved clinical efficacy and effectiveness are needed to further reduce influenza-related morbidity and mortality.
FUNDING: Alfred P Sloan Foundation.

Copyright © 2012 Elsevier Ltd. All rights reserved.
PMID 22032844
 
  1. 高齢者におけるインフルエンザ高用量ワクチン:通常量よりも高い効果が期待できることが大規模研究で示されている(推奨度2)
  1. 高齢者におけるワクチン効果の増強目的にワクチン含有量を増加させる研究が行われている。DiazGranadosらの代表的な研究[22]で、65歳以上31,989人へ4倍量のヘマグルチニンを接種したところ、検査で確定されたインフルエンザ症例は高用量群で1.4%、通常量群1.9%と24.2%の相対的ワクチン効果を認めた。(95%CI:9.7-36.5)一方、高用量化にともなう副反応の増加はみられなかった(8.3% vs 9.0%;相対リスク0.92、95%CI:0.85-0.99)。この研究を中心としたメタ解析[23]でも、リスク比は0.76(95%CI:0.65-0.90、n=41,141)と高用量の接種を支持している。2023年12月に日本国内でも販売製造承認申請が行われている。
 
  1. 高齢者におけるインフルエンザ結合型ワクチン:従来型ワクチンよりも高い効果が期待できる可能性が示されている(推奨度2)
  1. 高齢者におけるワクチン効果の増強目的に結合型ワクチンを用いた研究が行われているが、60歳以上を対象としたメタ解析の結果では、欧州医薬品庁の基準(接種後有効抗体価保持率≧60%、接種前後の幾何平均比≧2、抗体陽転化率≧30%)を満たすことが示されている[24]。また、他のメタ解析では肺炎やインフルエンザによる入院の抑制効果が51%(95%CI:31-69%)と有意な効果を認めたが、インフルエンザ(Laboratory-confirmed)抑制効果においては60.1%(95%CI:-1.3-84.3%)と有意差は示されなかった。しかし非結合型ワクチンと比較するとリスク比が肺炎/インフルエンザによる入院0.577(95%CI:0.334-0.999、n=3,183、I2=81%)、インフルエンザ(Laboratory-confirmed)0.412(95%CI:0.190-0.893、n=110、I2=0%)と有意な抑制効果を認めたことが示されている[25]
 
肺炎球菌ワクチン:
  1. 2013~2014年度の国内291例の侵襲性肺炎球菌感染症(IPD:血液や髄液など本来無菌環境である部位から検出された感染症)の検討によると、年齢中央値が70歳と高齢者が多く致死率が20%と高い[26]
  1. 侵襲性肺炎球菌感染症はワクチン予防可能疾患の中でも致死率が高く(6.4~40%)、欧州28カ国で2014年に報告された侵襲性肺炎球菌感染症の死亡数は17,528例にのぼる[5]
  1. 2004年の米国における推定では肺炎球菌感染症による死亡は22,000例で、うち65歳以上が16,000例を占めるとされる[27]
  1. 肺炎球菌ワクチンにはポリサッカライドワクチン(ニューモバックス)と結合型ワクチン(プレベナー13、バクニュバンス、プレベナー20)の2種類がある。
  1. ポリサッカライドワクチン(PPSV23):23種類の血清型をカバーしている。しかし、免疫原性では結合型ワクチンより劣る。2歳以上が接種対象。2024年度以降65歳および60~64歳で心臓や腎臓、呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活を極度に制限される方、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方が定期接種対象となっている(66歳以上は任意接種)。
  1. 結合型ワクチン(PCV15/20):15/20種類の血清型をカバーしている。免疫原性に優れ[28]、2歳以下でも有効性が示されており、6歳未満が定期接種対象となっている。また、任意接種として高齢者や肺炎球菌に感染するリスクが高い人への接種も可能(2024年10月時点で成人に承認・流通してされているのはPCV15/20)。
  1. 米国では結合型ワクチンとして市中のIPDの約8割をカバーするPCV21(CAPVAXIVE)も承認され、2024年6月のACIP会議で、19歳以上の成人における1つの選択肢として推奨されている[12]。国内でもPhase1研究が行われている[29]
  1. 2010年に小児へのPCVの公費助成が始まり、その接種率は90%を超えている。これに伴う集団免疫効果によって高齢者のIPDも減少してきているが、IPDの起炎菌の血清型のうち非ワクチンタイプの血清型の占める割合が徐々に増加してきていること(血清型置換)が問題となっている[30]
  1. 2024年9月の日本国内での推奨としては以下の図(<図表>)の通り、PCV20単回接種、PCV15接種1~4年後のPPSV23接種、もしくはPPSV23接種5年以降のPPSV23再接種が選択肢となる。すでにPPSV23接種済みの場合は、PPSV23接種後1年以上の間隔をあけてPCV15/20の接種、その1~4年後のPPSV23接種が選択肢となる。PPSV23接種後再接種する場合の間隔は5年以上が必要である[31]
  1. 肺炎球菌ワクチン未接種のハイリスク者へはPCV20単独もしくはPCV15接種後8週間以上の間隔でPPSV23を接種することが推奨される。
 
65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(2024年9月)

出典

日本呼吸器学会感染症・結核学術部会ワクチン WG、日本感染症学会ワクチン委員会、日本ワクチン学会・合同委員会編. 65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第6版 2024年9月6日) .2024. p10. 図. https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/guidelines/o65haienV/o65haienV_240930.pdf
 
特定の免疫抑制状態にある19~64歳の成人に対する米国Advisory Committee on Immunization Practicesの推奨(2023年)

出典

Kobayashi M, Pilishvili T, Farrar JL, Leidner AJ, Gierke R, Prasad N, Moro P, Campos-Outcalt D, Morgan RL, Long SS, Poehling KA, Cohen AL.
Pneumococcal Vaccine for Adults Aged ≥19 Years: Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices, United States, 2023.
MMWR Recomm Rep. 2023 Sep 8;72(3):1-39. doi: 10.15585/mmwr.rr7203a1. Epub 2023 Sep 8.
Abstract/Text THIS REPORT COMPILES AND SUMMARIZES ALL PUBLISHED RECOMMENDATIONS FROM CDC’S ADVISORY COMMITTEE ON IMMUNIZATION PRACTICES (ACIP) FOR USE OF PNEUMOCOCCAL VACCINES IN ADULTS AGED ≥19 YEARS IN THE UNITED STATES. THIS REPORT ALSO INCLUDES UPDATED AND NEW CLINICAL GUIDANCE FOR IMPLEMENTATION FROM CDC:
BEFORE 2021, ACIP RECOMMENDED 23-VALENT PNEUMOCOCCAL POLYSACCHARIDE VACCINE (PPSV23) ALONE (UP TO 2 DOSES), OR BOTH A SINGLE DOSE OF 13-VALENT PNEUMOCOCCAL CONJUGATE VACCINE (PCV13) IN COMBINATION WITH 1–3 DOSES OF PPSV23 IN SERIES (PCV13 FOLLOWED BY PPSV23), FOR USE IN U.S. ADULTS DEPENDING ON AGE AND UNDERLYING RISK FOR PNEUMOCOCCAL DISEASE. IN 2021, TWO NEW PNEUMOCOCCAL CONJUGATE VACCINES (PCVS), A 15-VALENT AND A 20-VALENT PCV (PCV15 AND PCV20), WERE LICENSED FOR USE IN U.S. ADULTS AGED ≥18 YEARS BY THE FOOD AND DRUG ADMINISTRATION:
ACIP RECOMMENDATIONS SPECIFY THE USE OF EITHER PCV20 ALONE OR PCV15 IN SERIES WITH PPSV23 FOR ALL ADULTS AGED ≥65 YEARS AND FOR ADULTS AGED 19–64 YEARS WITH CERTAIN UNDERLYING MEDICAL CONDITIONS OR OTHER RISK FACTORS WHO HAVE NOT RECEIVED A PCV OR WHOSE VACCINATION HISTORY IS UNKNOWN. IN ADDITION, ACIP RECOMMENDS USE OF EITHER A SINGLE DOSE OF PCV20 OR ≥1 DOSE OF PPSV23 FOR ADULTS WHO HAVE STARTED THEIR PNEUMOCOCCAL VACCINE SERIES WITH PCV13 BUT HAVE NOT RECEIVED ALL RECOMMENDED PPSV23 DOSES. SHARED CLINICAL DECISION-MAKING IS RECOMMENDED REGARDING USE OF A SUPPLEMENTAL PCV20 DOSE FOR ADULTS AGED ≥65 YEARS WHO HAVE COMPLETED THEIR RECOMMENDED VACCINE SERIES WITH BOTH PCV13 AND PPSV23:
UPDATED AND NEW CLINICAL GUIDANCE FOR IMPLEMENTATION FROM CDC INCLUDES THE RECOMMENDATION FOR USE OF PCV15 OR PCV20 FOR ADULTS WHO HAVE RECEIVED PPSV23 BUT HAVE NOT RECEIVED ANY PCV DOSE. THE REPORT ALSO INCLUDES CLINICAL GUIDANCE FOR ADULTS WHO HAVE RECEIVED 7-VALENT PCV (PCV7) ONLY AND ADULTS WHO ARE HEMATOPOIETIC STEM CELL TRANSPLANT RECIPIENTS:

PMID 37669242
 
  1. 米国では65歳以上のすべての成人、もしくは19歳以上で特定の基礎疾患や危険因子(喫煙、慢性心/肝/腎疾患、人工内耳のある者、無脾症、先天性/後天性免疫不全、髄液漏、糖尿病、悪性腫瘍、HIV感染、医原性免疫不全、ネフローゼ症候群、鎌状赤血球症、異常ヘモグロビン症、固形臓器移植など)を有する成人へはPCV20単独もしくはPCV15接種後1年以上経過してからのPPSV23接種を推奨している[32](免疫不全者、髄液漏、人工内耳のある人は接種間隔を短縮することも選択肢[最低8週間間隔])。過去にPCV13やPPSV23を接種している場合は引用先を参照されたい。
  1. 抗体価の減衰を懸念したPPSV23の再接種に関し、5年以上の間隔をあけた場合には効果低下[33][34][35]や副反応増強の影響が少ないとされており、PPSV23を再接種する場合は5年以上の間隔をあけて接種することが推奨されている[31]
 
  1. PPSV23の効果:死亡率は変わらないもののIPD、肺炎を減らすことが示されている(推奨度1)
  1. 高齢者におけるPPSV23のワクチン効果に関するメタ解析として2017年に報告されたFalkenhorstらの報告がある[36]。これによるとランダム化比較試験によるリスク比は以下のとおりである。
  1. IPD:0.27(95%CI:0.08-0.90、n=43,590、I2=0%)
  1. 肺炎球菌肺炎:0.75(95%CI:0.35-1.62、n=43,590、I2=78%)
  1. 肺炎球菌肺炎:0.36(95%CI:0.20-0.65、n=3,887、I2=0%、バイアスが低い研究に限定)
  1. 死亡率を評価したメタ解析としてMoberleyらの2013年の報告があり[37]、有意差を持った効果は示されなかった。
  1. オッズ比0.90(95%CI:0.74-1.09、n=47,560、I2=69%)
  1. 国内で2011~2014年に実施された多施設前向き研究では、肺炎球菌肺炎に対するワクチン効果は27.4%(95%CI:3.2-45.6、n=2,036)で、ワクチンタイプの血清型では33.5%(95%CI:5.6-53.1)、非ワクチンタイプでは2.0%(95%CI:-78.9-46.3)であった[38]。この研究でも死亡率へは有意な影響はみられなかった(9.6%;95%CI:-218.4-74.3)。
  1. 国内での2013~2017年の侵襲性肺炎球菌感染症サーベイランスをもとにした研究ではPPSV23含有血清型へのワクチン効果は42.2%(95%CI:13.4-61.4)、PPSV23-非PCV13血清型への効果は44.5%(95%CI:9.6-65.9)であった[39]
  1. PPSV23接種は、国内の2014~2018年の65歳~95歳の肺炎による入院減少(ハザード比0.84;95%CI:0.77-0.91)と関連していた[40]。この報告では、90歳以上では統計学的に有意な効果は観察されなかった。
 
  1. PCVの効果:死亡率は変わらないもののIPD、市中肺炎、非侵襲性肺炎を減らすことが示されている(推奨度1)
  1. 高齢者へのPCV13研究ではBontenらの研究(CAPiTA)が最も有名である[41]。オランダにてPPSV23未接種の84,496人を対象にした大規模ランダム化比較試験結果が報告されており、ワクチン株に含まれる感染症におけるワクチン効果は以下のとおりである。
  1. 市中肺炎45.6%(95%CI:21.8-62.5%)
  1. 非侵襲性肺炎45.0%(95%CI:14.2-65.3%)
  1. IPD 75.0%(95%CI:41.4-90.8%)
  1. PCVの効果を示した大きな意味を持つ研究ではあるが、既にPPSV23接種を受けている人は除外されており、このような対象への効果が不明であることや、免疫不全者は対象に含まれていないこと、小児へのPCV13が導入され血清型置換が起こっている現代においても同等の効果があるかどうかは不明であること、などの複数のLimitationがある。
  1. 全生存率の改善はメタ解析では示されていない[42]
  1. PCV13 リスク比1.00(95%CI:0.95-1.05、n=86,263、I2=0%)
  1. PCV7 リスク比0.84(95%CI:0.53-1.33、n=46,890、I2=33.6%)
  1. 追記:PCV13はIPDを減少させることが示されている。市中で流行している血清型の変化が起こってきている現状において効果の幅に変化が生じている可能性はある。
 
  1. PCV導入後の血清型置換(推奨度2)
  1. 米国をはじめ日本を含む世界各国で、小児へのPCVが導入された後に小児のIPDは劇的に減少した[44]。これは、以前から小児の鼻腔に保菌された肺炎球菌が成人への主要な肺炎球菌伝播経路と考えられていたが、PCVの効果によって小児の鼻腔の保菌が減少したからといわれている。ところが、ここ最近では市中のIPDを引き起こす肺炎球菌の血清型が非ワクチンタイプ(非PCV13タイプ)に移行してきていることが示されている[30]。このなかで成人のIPDのPCV13ワクチンカバー率は小児へのPCV13導入前後で52.7%(2011~2014年)から38.5%(2018~2020年)に減少したことが報告されている。その一方で、市中に免疫不全者が増える中、IPD発症者における免疫不全者の占める割合が増加してきていることも示されている[45]。このため引き続き免疫不全者への肺炎球菌ワクチンの重要性は変わらないと思われる。このような中、近年の市中IPDの約8割をカバーするPCV21の今後の位置づけも注目される。
  1. 追記:小児へのPCV導入後、IPDの疫学は変わってきており、今後の動向やワクチン推奨内容の変更にも注意が必要である。
 
帯状疱疹ワクチン:
  1. 近年、帯状疱疹の頻度が増えてきている[46][47][48]
  1. 特に50歳以上での発症頻度が高く、85歳時における生涯の罹患リスクは50%に達する[49]
  1. 帯状疱疹後神経痛は5~30%に合併するとされ、著しく生活の質を落とす危険性がある。
  1. 米国では帯状疱疹予防として生ワクチン(Zostavax)が60歳以上へ推奨されてきたが、2017年にサブユニットワクチン(Shingrix)がFDAに認可され、2018年から50歳以上への帯状疱疹ワクチンの第1選択薬として推奨されるようになった。
  1. 日本でも同様の力価の生ワクチン(乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」)があり、2016年3月に“50歳以上のものに対する帯状疱疹の予防”という効能効果が追加された。
  1. 生ワクチンでありステロイド等免疫抑制剤投与中の接種は禁忌である。
  1. サブユニットワクチンも2018年3月に50歳以上の成人、2023年8月には帯状疱疹発症リスクの高い18歳以上を対象とした製造販売承認が得られている。
 
  1. 高齢者における帯状疱疹ワクチンは非常に高い効果を示しており、米国CDCの予防接種諮問機関であるACIPも、サブユニットワクチンが承認された翌年(2018年)から第1選択薬として推奨している(推奨度2)
  1. ネットワークメタ解析では、サブユニットワクチンは生ワクチンより帯状疱疹予防効果は高いが(確定帯状疱疹のリスク比0.15:95%CI 0.02-0.69)、接種部位の副反応は有意に多かった(リスク比1.79:95%CI 1.05-2.34)[50]
  1. 生ワクチン(Oka/Merck VZVワクチン、力価中央値24,600 pfu):
    60歳以上の38,501名を対象としたランダム化比較試験(修正ITT解析:接種30日内の帯状疱疹発症)[51]
  1. 帯状疱疹へのワクチン効果61.1%(95%CI:51.1-69.1、5.42 vs 11.12/1000人・年)
  1. 70歳以上に限定55.4%(95%CI:39.9-66.9、7.18 vs 11.50/1000人・年)
  1. 帯状疱疹後神経痛(PHN)への効果66.5%(95%CI:47.5-79.2、0.46 vs 1.38/1000人・年)
  1. 接種部位の局所反応はプラセボよりも多かったが重篤な有害事象には差がなかった。
  1. N=69,916のメタ解析[52]でのワクチン効果(リスク比) 0.49(95%CI:0.43-0.56)
  1. サブユニットワクチン:
    50歳以上および70歳以上を対象としたGlobal Phase 3のランダム化比較試験(2カ月間隔で2回接種)が実施されている。
  1. 50歳以上n=15,411(ZOE-50:[53]):ワクチン効果97.2%(95%CI:93.7-99.0、0.3 vs 9.1/1000人・年)
  1. 70歳以上n=13,900(ZOE-70:[54]):ワクチン効果89.8%(95%CI:84.2-93.7、0.9 vs 9.2/1000人・年)
  1. 2つの研究の70歳以上の参加者16,594名
  1. ワクチン効果91.3%(95%CI:86.8-94.5、0.8 vs 9.3/1000人・年)
  1. 帯状疱疹後神経痛(PHN)への効果88.8%(95%CI:68.7-97.1)
  1. いずれの研究でも、接種部位の局所反応はプラセボよりも多かったが重篤な有害事象には差がなかった。
  1. 接種4年目のワクチン効果もZOE-50:93.1%、ZOE-70:87.9%と良好であった。
  1. 接種後長期の効果(ZOE-LTFU)は接種後平均5.6~9.6年の追跡調査において81.6%(95%CI:75.2-86.6)と良好であった[55]
  1. 米国での大規模前向きコホート研究でのReal-worldデータでは2回接種後1年目のワクチン効果が79%、2年目が45%、3.4年目が73%であった[56]。PHN以外の帯状疱疹関連合併症への効果:50歳以上93.7%、70歳以上91.6%[57]
  1. 播種性疾患や神経疾患、眼科関連疾患、血管炎など
  1. 帯状疱疹発症後30日後の脳卒中リスクも減少させることが示されている。
    サブユニットワクチン 調整オッズ比0.55(95%CI:0.46-0.72)、生ワクチン0.77(95%CI:0.65-0.91)
  1. 認知症を予防する可能性も報告されている。
  1. 2017~2020年のワクチン接種者約10万人(95%サブユニットワクチン)を中央値4.15年経過観察し、2014~2017年の接種者約10万人(98%生ワクチン)を中央値6年経過観察した人と傾向スコアマッチングをして比較したところ、接種6年間の認知症リスクが低下した(restricted mean time lost ratio: 0.83:6年間で認知症と診断された期間が17%減少)[58]
  1. 追記:2024年7月現在、国内では65歳以上への定期接種への位置づけについて検討されている。
 
RSウイルスワクチン:
  1. RSウイルス感染症は北半球では通常冬から春にかけて流行する。
  1. 65歳以上における急性呼吸器疾患、入院の頻度は、6.7(95%CI:1.4-31.5)/1,000人・年、1.0(95%CI:0.5-2.1)/1,000人・年、病院内死亡率は1.6%(95%CI:0.7-3.8)というメタ解析の報告がある[59]。また、高齢者特有の病態として、RSV感染による入院によって14%の患者で要介護度が高くなったとする報告[60]もある。
  1. 一方、基礎疾患がある人の急性呼吸器疾患、入院の頻度は、30.3(95%CI:15.3-59.9)/人・年、13.2(95%CI:6.89-23.0;65歳以上の慢性心不全・呼吸器疾患がある患者)、病院内死亡率は11.7%(95%CI:5.8-23.4)というメタ解析の報告があり[61]、基礎疾患があるとリスクが高いことが窺える。
  1. 米国での60歳以上の成人におけるRSウイルス感染者の重症度はCOVID-19やインフルエンザと同等以上という報告がある[62]
  1. 最低1回の新型コロナワクチン接種率が81.5%の集団(中央値74歳)との比較で、RSウイルス感染者(中央値72歳)はCOVID-19感染者と比較して高流量酸素や非侵襲性換気(調整オッズ比[aOR]2.25;95%CI:1.65-3.07)、ICU入室(aOR1.49;95%CI:1.13-1.97)が多かった。
  1. インフルエンザワクチン接種率が48.3%の集団(中央値71歳)との比較で、RSウイルス感染者(中央値72歳)はインフルエンザ感染者より高流量酸素や非侵襲性換気(調整オッズ比[aOR]1.99;95%CI:1.36-2.90)、ICU入室(aOR1.55;95%CI:1.11-2.19)、機械換気もしくは死亡(aOR2.08;95%CI:1.33-3.26)が多かった。
  1. 臨床試験におけるワクチン効果
  1. Arexvy(アジュバントRSVワクチン)[62]:60歳以上の免疫不全のない約2.5万人を対象とした研究では接種シーズンの下気道感染に対するワクチン効果は82.6%、翌シーズンが56.1%、2シーズンまとめると74.5%のワクチン効果が示された。重篤な有害事象の相対リスクは4.10(実薬3.8%、プラセボ0.9%)で、Grade3以上の局所/全身反応として日常生活を妨げる程度の局所の発赤、発熱などが報告されている。3件の神経系有害事象が報告されている(1件ギランバレー症候群、2件ADEM[急性散在性脳脊髄炎])。基礎疾患を有する60歳以上の患者における下気道感染へのワクチン効果が92~95%であったとの報告もある(追跡期間中央値6.7カ月)[63]
  1. Abrysvo(二価プレフュージョンワクチン)[62]:60歳以上の免疫不全のない約3.7万人を対象とした研究では接種シーズンの下気道感染に対するワクチン効果は88.9%、翌シーズンが78.6%、2シーズンまとめると84.4%のワクチン効果が示された。重篤な有害事象の相対リスクは1.04(実薬1.0%、プラセボ0.7%)で、Grade3以上の局所/全身反応が報告されている。3件の神経系有害事象が報告されている(1件ギランバレー症候群、1件Miller Fisher症候群、1件既存の多発ニューロパチー悪化)。
  1. 国内未承認のmRNAワクチンも60歳以上の免疫不全のない約3.6万人を対象とした臨床試験が報告されており、下気道感染へのワクチン効果が約83%と報告されている[64]
  1. 乳児におけるRSウイルス感染症は致死的となり得るため、受動免疫を与えるために妊婦へのRSウイルスワクチン接種も推奨されている。約1.8万人6件のランダム化試験のメタ解析では、母親のワクチン接種はRSウイルスに感染した乳児の入院を減少させることが示されている(リスク比0.50;95%CI:0.31-0.82)[65]。この検討では接種に伴う子宮内発育不全、先天異常に関する懸念はないと結論付けている。
  1. 2023年には60歳以上(Arexvy、Abrysvo)と妊婦(Abrysvo)を対象としたワクチンが国内で承認された。
  1. 米国(ACIP:Advisory Committee on Immunization Practices)の推奨
  1. 60歳以上:医療従事者と患者のShared clinical decision-makingで1回接種
  1. 2024年6月のACIP会議で75歳以上および60~74歳の重症化リスクがある患者が対象として承認された。
  1. 妊婦:9月から1月までの妊娠32~36週妊婦に1回接種
 
百日咳ワクチン:
  1. 成人の百日咳は比較的症状が軽いものの、子供への伝播の感染源となり、罹患した小児(特に生後6カ月未満)が重症化する危険性が指摘されている。
  1. 精製百日咳ワクチン(Acellular pertussis vaccine)は発症防御能があるものの、感染防御効果が乏しい可能性が指摘されている[66]
  1. 欧米ではワクチンカバー率が高いにもかかわらず百日咳が近年再増加してきていることが示されており[67][68]、精製百日咳ワクチンは以前使用されていた全細胞ワクチンと比較すると免疫減衰が速い可能性が指摘されている[69]
  1. 成人への接種はドイツ、イタリア、フランスなどの欧州主要国[70]や米国などで推奨されている。
  1. 米国では小児期の接種後、11~12歳でTdap(破傷風、減量ジフテリア、減量精製百日咳)の接種が推奨されている。もし19歳までにTdap未接種の場合にも追加接種を推奨している。また、妊婦への妊娠ごとの接種も推奨されている。
  1. ただし、米国では成人への接種に用いるのはTdapで、小児向けのワクチン(DTaP)よりも百日咳ワクチンおよびジフテリアの抗原量を減らしたものが使われている。現在国内にTdapはなく、成人への追加免疫として3種混合ワクチン(沈降精製百日せきジフテリア破傷風混合ワクチン:トリビック[DTaP])0.5 mLの接種が承認され、2017年12月に添付文書に追加記載されている。
  1. 2018年1月から百日咳は全数把握疾患となった。従来からの培養や血清学的検査に加えて、LAMP法やウイルス・細菌核酸多項目同時検出法(FilmArray呼吸器パネル)が保険収載されている。
  1. 2018年に11,190例の発症が報告されている。5~15歳未満が全体の64%ともっとも多く、6カ月未満が5%、30~50代の成人では16%であった。もっとも多い5~15歳未満では発症者の81%が4回ワクチンを接種していた。また、重症化が懸念される6カ月未満の小児の感染源の多くが同胞(42%)であり、ついで両親(父親17%、母親14%)、祖父母が6%であった。この点からも成人への百日咳ワクチンの追加接種の重要性が示唆される[71][72]。2019年には約1.6万件の報告があったが、2020年にはCOVID-19の影響により2,671件まで減少した[73]
 
麻疹ワクチン:
  1. 2015年に日本は世界保健機関西太平洋地域事務局より麻疹排除国認定を受けた。
  1. 2015年以降も定期的に輸入株を発端としたアウトブレイクが国内で散発している。
  1. 2022年の国内における麻疹の抗体保有状況調査では、麻疹あるいは修飾麻疹の発症予防の目安とされるPA抗体価1:128以上の抗体価の者は全体で85.7%であるが、10代では1~2割、それ以外の年齢でも約1割前後はそれ以下の抗体価の者が存在することから、引き続き麻疹排除状態を維持するためにはワクチン接種が重要とされる[74]
  1. 成人において接種が推奨されるのは、大学生、医療関係者、国際旅行者、免疫不全者の家族、妊娠可能年齢で麻疹への免疫のない場合などである[75]
  1. 国内でも医療機関で生じた曝露による感染伝播の報告が複数あり[76][77][78]、2023年5月には厚生労働省からの事務連絡として、麻疹の国内伝播事例の増加に伴う注意喚起[79]がなされ、2024年2月にも再周知されている。
  1. 自動車教習所や小学校の入学式、工場内など、それ以外の場所でも麻疹のアウトブレイクの報告があり、上記の高リスク者以外へも広くワクチンの接種が推奨される[80]
  1. 2019年4月に「麻疹に関する特定感染症予防指針」が改訂され、医療機関のほか、児童福祉施設および学校等(幼稚園から大学、専修学校までの各種学校)の職員等への予防接種を強く推奨する必要があることが明記された[81]
 
風疹ワクチン:
  1. 2013年に14,000例を超える大流行となり、先天性風疹症候群の症例も大きな社会問題となった(2012年~2014年の報告は45例)[82]。2019年にも流行し、複数の先天性風疹症候群症例が報告されている。
  1. 妊娠出産年齢層の女性にワクチンを接種する場合は約1カ月間の避妊が推奨される(ワクチン株による先天性風疹症候群を懸念するため)。ただし、万が一妊娠していることに気が付かずワクチンを接種したとしても、そのリスクの低さから妊娠を中断する必要はないとされる。一方、男性は風疹ワクチン接種後の避妊は必要がないとされている。妊娠中に風疹抗体価が低いことが判明した場合は出産後早期あるいは1カ月検診時期の接種が望ましい[83]
  1. 2021年の国内における風疹の抗体保有状況調査では、抗体陽性と判定されるHI抗体価1:8以上の抗体保有率について、女性は2歳から50歳代までおおむね90%以上であったのに対し男性では40代前半~60代前半で90%を下回る抗体保有率が報告されている[84]
  1. 1962年4月2日から1979年4月1日生まれの男性に対し2019年から2022年3月まで風疹第5期定期接種(全額公費負担)が2025年3月末まで延長実施されている。
  1. 実際に2012~2013年の国内流行の主体は成人男性であり、職場における流行が目立ったことが知られているが2019年の流行でも30~40代の男性に多かった。一方、女性では出産年齢である20~30代に多かったことが示されている[85]
 
破傷風トキソイド:
  1. 2000年以降も年間100~130例前後の発症があり、ワクチン未接種である60~70歳代をピークとしている。
  1. 東日本大震災のような自然災害時にも高齢者を中心に10例の発症がみられている。2018年の中国地方の大豪雨でも高齢者2人が発症している。
  1. 2018年の国内調査ではDPaTワクチンが定期接種となる前の50歳代以降(1969年4月以前生まれ)の抗体価保有率が低いことが示されている[86]
  1. ワクチン未接種者への接種や、日常生活で農作業や外傷のリスクを伴う活動を行う人への追加接種が特に推奨される。
  1. 欧米では10年ごとのTd(破傷風、減量ジフテリア)の追加接種が推奨されている。
  1. 国内では2期(11~12歳)のDTワクチンが未接種であった17歳女性の発症(クラブ活動中に錆びたグラウンドレーキで受傷)も報告されている[87]
  1. また、外傷時に国内で推奨されている接種方法は以下に示す。
 
創傷処置(wound management)としての破傷風予防

参考文献:
一般社団法人日本ワクチン産業協会PR委員会・編集委員会編. 予防接種に関するQ&A集 2023. 日本ワクチン産業協会. 2023. p166. http://www.wakutin.or.jp/medical/pdf/qa_2023.pdf(2024年7月閲覧)

出典

「破傷風とは」 国立感染症研究所 https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/466-tetanis-info.html(2024年7月閲覧)より作成
 
ジフテリアトキソイド:
  1. 現在国内での発生は1999年以降ないものの2022-2023年にかけてナイジェリアでの1,439例(うち確定例557例)の大流行、2017-2018年にかけてイエメンでの大流行のほか、アメリカ大陸地域(ブラジル、ドミニカ共和国、ハイチ、ベネズエラ、コロンビア)など、海外では散発している[83]
  1. 致死率が5~10%と高く、欧米では10年ごとにTd(破傷風、減量ジフテリア)の接種が推奨されている。
 
B型肝炎ワクチン:
  1. 近年欧米に多く、慢性化率の高い遺伝子型AのB型肝炎ウイルスによる成人感染者の若年者や都心部を中心とした増加が問題となっている。
  1. B型肝炎の致死的な合併症として肝細胞癌がある。
  1. 2016年10月から小児への接種として定期A類に追加された。
  1. 米国では19~59歳全員および60歳以上でB型肝炎感染リスクのある方に推奨されている[75]
 
妊娠時:
  1. 生ワクチンは妊娠時の接種が禁忌であり、妊娠前の接種が推奨される(ACIPはワクチン接種後28日間妊娠を避けることを推奨しているが、国内では添付文書上接種前1カ月間および接種後2カ月間は妊娠を避けるべきとされている)。
  1. もし妊婦が風疹ワクチン未接種と判明した場合は、出産後速やかに接種する。(もし夫が未接種なら、夫も接種する)
  1. 妊娠前に幼少期のワクチン接種歴を確認することが望ましい。(特に風疹ワクチン)
  1. 米国では母体のみならず乳児を守るためにも、不活化インフルエンザワクチンおよび成人用3種混合(Tdap:ジフテリア、破傷風、百日咳)、RSVワクチン、COVID-19ワクチンの接種が推奨されている[88]。3種混合ワクチンに関し日本国内ではDTaPが流通しており、添付文書上は予防接種の有益性が危険性を上回ると判断される場合の接種と記載されている。
免疫不全者  
免疫不全者へのワクチンにおける一般的注意事項:
  1. 疾患予防の程度をアウトカムとした臨床試験は非常に少なく、多くは抗体価をサロゲートマーカーとした研究である。しかし多くの病原体において、抗体価の濃度と疾患予防効果との相関性は未確立である。このためエキスパートオピニオンをもとにした推奨が多い。しかしCOVID-19のパンデミックにより、新型コロナワクチンにおける研究は多数実施された。

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
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(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
冲中敬二 : 講演料(グラクソ・スミスクライン(株))[2024年]
監修:具芳明 : 研究費・助成金など(MSD(株),ビオメリュー・ジャパン(株))[2025年]

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