今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 秋山健一1) 東北医科薬科大学 腎臓内分泌内科

著者: 花房規男2) 東京女子医科大学 血液浄化療法科

監修: 花房規男 東京女子医科大学 血液浄化療法科

著者校正済:2024/07/24
現在監修レビュー中
参考ガイドライン:
  1. 日本腎臓学会:エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023
  1. AKI(急性腎障害)診療ガイドライン作成委員会:AKI(急性腎障害)診療ガイドライン2016
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023』の発行に伴いレビューを行った。
  1. SGLT2阻害薬が、CKDにおいて糖尿病合併の有無を問わず腎保護効果が示され、積極的な内服治療が勧められる。
  1. 保存期CKDの腎性貧血治療において、ESAを用いた治療介入基準がHb 11から10 g/dL未満へ変更となった。
  1. 『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018』では、「収縮期血圧110 mmHg未満へ降圧しないよう提案する」とされていたが、エビデンスが少ないため、『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023』では採用されなかった。
  1. 正常アルブミン尿であるにもかかわらず、eGFRが著明に低下した非典型例の糖尿病性腎症も存在し、糖尿病に合併したCKDを包括する概念として、「糖尿病性腎臓病(diabetic kidney disease:DKD)」という概念が提唱された。

概要・推奨   

  1. 蛋白尿、慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)の存在は、全死亡、心血管疾患、末期腎不全イベントの強力なリスク因子であり、早期発見が大切である(推奨度1、SMJG)
  1. 急性腎障害(acute kidney injury:AKI)の存在は、全死亡、CKD、末期腎不全イベントの強力なリスク因子である(推奨度1、SMJG)
  1. 蛋白尿陽性の高血圧合併CKD患者は、RAS(renin-angiotensin system)阻害薬の内服治療が勧められる(推奨度1、SMJG)
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病態・疫学・診察 

疫学情報・病態・注意事項  
ポイント:
  1. 腎機能検査は、検診や通常の診療で測定される検査である。
  1. 慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)、急性腎障害(acute kidney injury:AKI)は、下記のように定義される。CKDの、推定患者数は日本の成人人口の約13%、1,300万人ともいわれており、頻度は高く、慢性透析患者は年々増え続けている(下図)。
  1. 蛋白尿、CKD[1]、AKI[2]は心血管疾患、全死亡のリスク因子である。
  1. わが国で初めて、2021年8月26日にダパグリフロジンプロピレングリコール水和物(sodium-glucose cotransporter 2 inhibitors:SGLT2阻害薬)が糖尿病の有無を問わず「慢性腎臓病(ただし、末期腎不全または透析施行中の患者を除く)」の治療薬としての適応が承認された。
  1. 保存期CKDの貧血治療に際し、エリスロポエチン産生刺激剤(erythropoiesis stimulating agent:ESA)を用いた治療開始基準がHb 11から10 g/dL未満へ変更となった(ただしHb 13 g/dL以上は目指さないこと)。
  1. 2019年11月、腎性貧血治療薬の内服薬であるHIF-PH(hypoxia-inducible factor-prolyl hydroxylase)阻害薬が世界に先駆けてわが国で発売された。日本腎臓学会より「HIF-PH 阻害薬適正使用に関するrecommendation(2020年9月29日版)」が公表されている。HIF-PH阻害薬は、血栓塞栓症、網膜イベント、悪性腫瘍関連死、ADPKD(常染色体優性多発性嚢胞腎)患者における嚢胞増大、これらリスクに関する懸念があるが、多くの大規模臨床試験においてESAに対するリスク増加のシグナルは認められていない。ただし、血栓塞栓症の発症リスクにおける詳細な分子機構は必ずしも明らかでない。2022年11月、市販後の症例の集積をもとにロキサデュスタットの添付文書が改訂され、重要な基本的注意および重大な副作用として中枢性甲状腺機能低下症が追記された。本剤投与中は定期的に甲状腺機能検査を行うなど、患者の状態を十分に観察することが必要である[3]
 
慢性透析患者数の推移

慢性透析を施行している患者数は、年々増加をたどり、2011年には30万人を超えた。

出典

日本透析医学会統計調査委員会:日本透析医学会. [https://docs.jsdt.or.jp/overview/index.html わが国の慢性透析療法の現況(2022年末の慢性透析患者に関する集計)] 第1章 2022年慢性透析療法の現況. 図1.(2024年6月参照)
 
CKDの定義[4]
  1. 下記のいずれか、または両方が3カ月を超えて持続する。
  1. 尿異常、画像診断、血液検査、病理診断で腎障害の存在が明らか、特に0.15 g/gCr以上の蛋白尿(糖尿病性腎臓病においては30 mg/gCr以上のアルブミン尿)の存在が重要。
  1. 糸球体濾過量(glomerular filtration rate:GFR)<60 mL/分/1.73m2
 
  1. 蛋白尿陽性またはCKD患者は末期腎不全、心血管死亡、全死亡リスクが高く、早期発見が大切である(推奨度1、 MSOJG)。(参考文献:[1][4][5][6][7][8]
  1. 蛋白尿陽性、CKD患者は、末期腎不全に進行する危険度が高い。また、心血管死亡、全死亡リスクも高く早期発見・早期治療が提唱されている。治療介入による蛋白尿の減少、eGFR低下速度の鈍化が治療判定マーカーとなる。
 
急性腎障害の定義(KDIGO [Kidney Disease Improving Global Outcomes] 2012年の基準より)[9]
  1. 以下のいずれかを満たす。
  1. 血清クレアチニン(SCr)値が ≧ 0.3 mg/dL上昇した場合(48時間以内)。
  1. SCr値が基礎値より ≧ 1.5倍増加した場合(7日以内)。
  1. 尿量が6時間にわたって<0.5 mL/kg/時間に減少した場合。
KDIGO診療ガイドラインによるAKI診断基準と病期分類

sCr:血清クレアチニン
注):定義1~3の1つを満たせばAKIと診断する。sCrと尿量による重症度分類では、重症度の高いほうを採用する。

出典

AKI(急性腎障害)診療ガイドライン作成委員会編:AKI(急性腎障害) 診療ガイドライン. 日腎会誌, 2017; 59(4): 445, 表3.
  1. Scr(≧ 0.3 mg/dL)のわずかな変化(AKI)が、死亡率、入院期間、入院費用増加と関連する。AKIは、全死亡、CKD、末期腎不全発症と関連する(推奨度1、SMO)。(参考文献:[10][11][12][13]
  1. アメリカ都市部の大学病院に入院した19,982人の成人を対象とした後ろ向きコホート研究では、SCr 0.5 mg/dL以上の上昇は、死亡率(オッズ比6.5倍増加)、入院期間(3.5日増加)、費用(7,500ドル増加)と有意に関連した。心臓および胸部大動脈手術を受けた4,118人の患者を対象とした前向きコホート研究では、手術後48時間以内のSCrの変化が30日間の死亡率に与える影響を分析し、SCrが0.5 mg/dL以上増加した患者グループは、その他のグループと比較し死亡率が32.5%と最も高かった。システマティックレビューとメタ解析の報告では、AKI患者は、非AKI患者と比較し、全死亡率(ハザード比2.0倍)、CKD発生率(8.8倍)、末期腎不全発生率(3.1倍)が有意に高かった。
 
  1. 糖尿病の有無を問わずCKD患者はSGLT2阻害薬を内服することが勧められる(ただし、eGFR 15 mL/分/1.73 m2未満では新規に開始しない。継続投与して15 mL/分/1.73 m2未満となった場合には、副作用に注意しながら継続する。なお、多発性嚢胞腎、ループス腎炎、ANCA関連血管炎、免疫抑制療法中の患者における十分なエビデンスがないため、これら症例に対しては適応について慎重に判断する)(推奨度1、RsJG)。(参考文献:[14][15][16][17][18][19][20][21][22][23]
  1. EMPA-REG OUTCOME試験にて心血管イベント高リスク糖尿病患者を対象とし、標準治療にSGLT2阻害薬またはプラセボを追加するプラセボ対照二重盲検ランダム化比較試験が行なわれ、SGLT2阻害薬群は、主要複合心血管転帰の発生率と全死因死亡率が有意に低く、また腎疾患の進行が遅く、臨床的に重要な腎イベントの発生率も有意に低いことが報告され、SGLT2阻害薬による血糖降下作用とは独立した生命予後改善、心血管保護、腎保護効果が初めて確認された。DAPA-CKD試験は、非糖尿病性CKD患者を初めて対象とした唯一の試験(非糖尿病性CKD患者割合32.4%)であるが、糖尿病の有無を問わず腎保護効果が認められた。その後、 DAPA-HF試験、EMPEROR-Reduced試験、 EMPA-KIDNEY試験においても糖尿病非合併CKDに対するSGLT2阻害薬の腎複合アウトカム(末期腎不全への進展、eGFR 50%以上の低下、年間eGFR低下率)に対する有効性が示された。わが国におけるリアルワールドデータを用いた研究の結果(Japan Chronic Kidney Disease Database:J-CKD-DB)、主要評価項目であるeGFRの年次変化と、副次評価項目である腎複合イベント(eGFRの50%以上の低下あるいはeGFR 15 mL/分/1.73 m2未満)いずれもSGLT2阻害薬投与群が優れていたと報告された。
 
腎機能の推定法:
  1. 18歳以上の日本人では、eGFR(estimated GFR:推算糸球体濾過量)は以下の計算式を用いる。
  1. eGFRcreat(mL/分/1.73 m2)=194×SCr(mg/dL)-1.094×年齢-0.287(女性は×0.739)
  1. SCr値によるCockcroft-Gaultの式によるCCr(クレアチニンクリアランス)推算式
  1. 推算CCr(mL/分)={(140-年齢)×体重(kg)}/{72×SCr(mg/dL)}〔×0.85(女性の場合)〕
  1. Cockcroft-Gault法は若年者、肥満者では腎機能を過大評価し、高齢者では腎機能を低く見積もってしまう欠点がある。そのため肥満患者に対しては理想体重を用いて算出する。多くの薬剤添付文書ではこの方法によるCCrで用量を決めている。健常者の腎機能をCCrで100 mL/分としており、添付文書のCCr別の投与量はGFR別投与量とみなしてよい。
  1. 実測CCr は、尿中Cr値×尿量/SCr値で表される。
  1. Jaffe法で測定したSCrは、日本で用いられることが多い酵素法によるSCrよりも高く測定されるため(約0.2 mg/dL高値)、酵素法を用いて推算CCrを計算するとCCrが高く見積もられる(米国ではCr測定の標準化が1995年頃に行われ、Jaffe法で測定しても0.2 mg/dLのsystemic biasを補正し、酵素法レベルの値を表示するcompensated-Jaffe法が普及している)。
  1. Crは筋肉から産生され、SCr値は筋肉量の影響を受けるため、サルコペニア(長期臥床など)、筋疾患、四肢欠損で筋肉量の減少している症例ではeGFRcrが高く推算(過大評価)される。逆にアスリート運動習慣のある高齢者などの症例では、筋肉量が多いためeGFRcrが低く推算(過小評価)される。
 
シスタチンCによる日本人向けGFR推算式:
  1. 体表面積未補正eGFRcys(mL/分)={104×シスタチンC-1.019×0.996Age〔×0.929(女性の場合)〕}×体重(kg)0.425× 身長(cm)0.725×0.007184/1.73 m2
  1. シスタチンCはSCr値に比べ、軽度の腎機能の低下を明確に判断でき、筋肉量や年齢、性別の影響を受けにくい利点がある。ただし3カ月に1回しか保険で算定できない。
  1. シスタチンCは末期腎不全になっても4 mg/L程度で頭打ちになり、6 mg/Lまで上昇することはほとんどない。そのため、末期腎不全であればSCr値だけでも腎機能は簡単に判断できるため、シスタチンCは軽度腎障害の判定に適している。
  1. シスタチンCは全身の細胞から産生され、血清シスタチンC値は筋肉量の影響は受けないが、甲状腺機能、喫煙、炎症、脂肪量、妊娠、免疫抑制薬などに影響を受ける。
問診・診察のポイント  
  1. これまでの腎機能を含めた検査歴、健診などの過去のデータ。

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
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(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
秋山健一 : 特に申告事項無し[2025年]
花房規男 : 未申告[2024年]
監修:花房規男 : 未申告[2024年]

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腎機能の低下(Cr上昇、BUN上昇、eGFR低下)

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