今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

監修: 花房規男 東京女子医科大学 血液浄化療法科

著者校正/監修レビュー済:2023/10/11
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 高カリウム血症に対する新規の薬剤が上市された。これまでのポリマー性の吸着レジンとは異なり、非ポリマー無機陽イオン交換化合物である。この新規薬剤の使い方を追加記載した。

概要・推奨   

  1. K排泄機構を理解し、患者の病態に合わせた高K血症予防が重要である。
  1. 偽性高K血症が疑われる場合には、疑われる要因を取り除いた状態で再検し、Kが正常化するかどうか確認することが重要である。
  1. 薬理作用から高K血症を来し得る薬剤を使用する場合や、腎機能障害を引き起こす可能性のある薬剤を使用する場合には、血清Kや腎機能の変化に注意する必要がある(推奨度1)
アカウントをお持ちの方はログイン
  1. 閲覧にはご契約が必要となります。閲覧にはご契約が必要となります。閲覧にはご契約が必要となります。閲覧にはご契約が必要となります。閲覧には

病態・疫学・診察 

疫学情報・病態・注意事項  
  1. 高カリウム血症とは、血清カリウム濃度が測定施設基準値上限(通常5 mEq/L)を超える場合を指す。日常血液検査で発見されることが多く、特に6.5 mEq/L以上では、重篤な不整脈を引き起こし致死的となり得る病態である。
  1. 生体の体液の2/3は細胞内に存在し、1/3が細胞外に存在する。細胞内の主たる陽イオンがカリウムなので、生体内のカリウムのほとんどは細胞内に存在する。
 
体液の組成

通常体重の約60%が水であり、体液の2/3は細胞内に、1/3は細胞外に存在する。細胞内液の主たる陽イオンがカリウムなので、体内のカリウムのほとんどは細胞内に存在する。

 
  1. 血清のカリウム濃度は、主としてカリウムの摂取と排泄で決定される。細胞内外のカリウムの移動も影響するが、長時間にわたることはない。
  1. カリウムの排泄機構が正常であれば、単にカリウム摂取が多いのみで高カリウム血症となることはまれなので、高カリウム血症をみた場合は、カリウム排泄の低下や細胞内カリウムが細胞外へと移動するような病態を考えるべきである。特に、腎からのカリウムの排泄障害が根底となることが多い。
  1. 偽性高カリウム血症が疑われる場合は、その要因を取り除いて血清カリウムが正常であることを確認する必要がある。
 
  1. K排泄調節は主に腎の皮質部集合管で行われる。
  1. まとめ:糸球体で濾過されたKは、マクラデンサまでの尿細管でその9割が再吸収された後、皮質集合管で分泌される。したがって、皮質集合管におけるK分泌により最終排泄量が決定される。影響する因子としてNa到達量・再吸収量、管腔内の尿流速、管腔内の陰イオンの存在、アルドステロンなどがある。したがって、皮質部集合管におけるK分泌機構を理解することが重要である。皮質部集合管におけるK排泄機構を図に示した。
 
皮質部集合管におけるK分泌機構

 
皮質部集合管の尿細管腔側に到達したNaは尿細管腔側に存在するNaチャネルを通じて集合管細胞内へと流入する。皮質部集合管の基底側膜に存在するNa,K-ATPaseの作用によりATPのエネルギーを利用してNaを細胞外へと汲み出し、同時に細胞内にKを蓄積する結果、集合管細胞内のNa濃度は低く、K濃度は高く維持されている。この細胞内に蓄積したKは尿細管腔側および血管側へと、膜に存在するKチャネルなどを通って尿細管腔側および血管側へと移動する。皮質部集合管においてはイオンの移動度が異なるため、尿細管腔側が血管側に比べて陰性荷電しており、また尿により絶えず流される結果、Kは血管側よりも管腔側へより多く移動することになる。皮質部集合管に到達するNa量が増加すれば、皮質部集合管へと流入するNa量が増加し、そのNaを汲み出すためにNa,K-ATPaseの作用が亢進し、その結果、より多くのKを細胞内へと汲み上げ、そのKが尿細管管腔側へと分泌される結果として、より多くのKが排泄される。一方、極端なNa摂取制限は有効循環血漿量の減少を招き、その結果、近位尿細管におけるNa、水の再吸収増加を来し、皮質部集合管に到達する尿量、Na量が減少する。その結果としてK排泄が減少する。アルドステロンは皮質部集合管管腔側からのNa再吸収を増加させることによりK排泄を増加させる。したがって、レニン‐アンジオテンシン‐アルドステロン系の作用を抑制する薬剤などはK排泄を低下させる[1][2][3]
  1. 代表事例:一般的に腎機能が低下していても尿量が保たれている場合は、比較的高K血症を来しにくいが、尿量が減少すると高K血症を発症しやすくなるのは上記機序による。また、K制限を行わないで単純にNa制限のみを行うと高K血症を来しやすい。腎保護作用を目的としてレニン‐アンジオテンシン‐アルドステロン系阻害薬が広く用いられているので、高K血症を来しやすい状況が揃っている。
  1. 結論:K排泄機構を理解し、患者の病態に合わせた高K血症予防が重要である。
問診・診察のポイント  
  1. 以下の項目を確認する。

これより先の閲覧には個人契約のトライアルまたはお申込みが必要です。

最新のエビデンスに基づいた二次文献データベース「今日の臨床サポート」。
常時アップデートされており、最新のエビデンスを各分野のエキスパートが豊富な図表や処方・検査例を交えて分かりやすく解説。日常臨床で遭遇するほぼ全ての症状・疾患から薬剤・検査情報まで瞬時に検索可能です。

まずは15日間無料トライアル
本サイトの知的財産権は全てエルゼビアまたはコンテンツのライセンサーに帰属します。私的利用及び別途規定されている場合を除き、本サイトの利用はいかなる許諾を与えるものでもありません。 本サイト、そのコンテンツ、製品およびサービスのご利用は、お客様ご自身の責任において行ってください。本サイトの利用に基づくいかなる損害についても、エルゼビアは一切の責任及び賠償義務を負いません。 また、本サイトの利用を以て、本サイト利用者は、本サイトの利用に基づき第三者に生じるいかなる損害についても、エルゼビアを免責することに合意したことになります。  本サイトを利用される医学・医療提供者は、独自の臨床的判断を行使するべきです。本サイト利用者の判断においてリスクを正当なものとして受け入れる用意がない限り、コンテンツにおいて提案されている検査または処置がなされるべきではありません。 医学の急速な進歩に鑑み、エルゼビアは、本サイト利用者が診断方法および投与量について、独自に検証を行うことを推奨いたします。
薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※同効薬・小児・妊娠および授乳中の注意事項等は、海外の情報も掲載しており、日本の医療事情に適応しない場合があります。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適応の査定において保険適応及び保険適応外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適応の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
監修:花房規男 : 未申告[2024年]

ページ上部に戻る

高カリウム血症

戻る