今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 加藤心良 藤田医科大学岡崎医療センター 総合診療科/豊田地域医療センター 総合診療科

監修: 野口善令 豊田地域医療センター 総合診療科

著者校正/監修レビュー済:2025/03/12
参考ガイドライン:
  1. 日本肝臓学会:B型肝炎治療ガイドライン(第4版)
  1. 日本肝臓学会:C型肝炎治療ガイドライン(第8.3版)
  1. 日本消化器病学会日本肝臓学会:NAFLD/NASH診療ガイドライン2020
  1. 日本消化器病学会:NAFLD/NASH診療ガイドライン2014
 
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 『B型肝炎治療ガイドライン(第4版)』『C型肝炎治療害ガイドライン(第8.3版)』を参照し、内容を一部改訂した。
  1. また、以下について、加筆・修正を行った。
  1. ALT値の上昇が肝臓関連死亡率の上昇と関連する旨を追加した。
  1. 肝酵素上昇の程度とAlp、ビリルビン上昇の有無による初期画像検査についての記載を追加した。
  1. 典型的症例集へ「自己免疫性肝疾患」例を追加した。
  1. そのほかにも、適宜記載内容を修正した。
 

概要・推奨   

  1. 肝逸脱酵素(AST、ALT)の正常値の2倍以上を認める場合は、肝炎などの疾患を検索することが推奨される。しかし、肝逸脱酵素の慢性的な軽度上昇は必ずしも重篤な疾患の存在を意味しないため、必ずしも肝生検を行う必要はない(推奨度2)
  1. 症状のない肝機能障害患者の多くは、NASHや脂肪肝である(推奨度2)
  1. AST/ALTの上昇のレベルから疾患の推測をする(推奨度2)

病態・疫学・診察 

疫学情報・病態・注意事項  
  1. AST、ALT、Alp、ビリルビンは、肝機能ではなく肝臓障害の指標である。
  1. アルブミン、ビリルビン、プロトロンビン時間は肝外因子の影響を受ける可能性があるが、肝機能の指標である[1]
  1. AST、ALTの上昇は、測定を受けた患者の約28~36%に認められる[1]
  1. ALT値の上昇は、肝臓関連死亡率の上昇と関連すると報告されている[1]
  1. 肝機能障害単独の場合には、多くの患者は無症状である。
  1. AST、ALTの上昇に伴って全⾝倦怠感を⾃覚する場合もあるが、⾼度の肝機能障害を除いて、どこまで直接の因果関係があるかは不明である。
  1. 原因のよくわからない肝機能異常の患者に肝生検を行って確定診断をつけた研究では、その66~84%が脂肪変性や脂肪肝、脂肪性肝炎であったと報告されている[2][3]
  1. 無症状で正常値2倍程度の軽度のAST、ALT上昇は、ほとんどの場合、脂肪肝、脂肪性肝炎、アルコール性肝障害、薬剤性肝障害である。原因となるような薬剤、食事を中止し、食事指導(カロリー制限)、節酒、運動指導などの脂肪肝の治療を行い、1カ月後に再検する。改善傾向を認めない場合は、鑑別疾患を再検討する。
  1. 非肥満、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD/NASH)はアジアに多く、PNPLA3遺伝子多型がNAFLD/NASH発症および・病態進展に関与していることが明らかとなり、PNPLA3GGホモ変異は日本人の一般事項の約20%に存在することから日本人はNAFLD/NASHを発症しやすいと考えられている[4]
 
原因不明の肝機能障害を肝生検で診断した354例の結果

66%はNASH、脂肪肝

出典

Skelly MM, James PD, Ryder SD.
Findings on liver biopsy to investigate abnormal liver function tests in the absence of diagnostic serology.
J Hepatol. 2001 Aug;35(2):195-9. doi: 10.1016/s0168-8278(01)00094-0.
Abstract/Text BACKGROUND/AIMS: The significance of abnormal liver function tests in the absence of diagnostic serology is unclear. The aim of this study was to report liver biopsy findings in a large group of patients with unexplained abnormal liver biochemistry.
METHODS: Histological findings were examined in 354 patients who underwent liver biopsy to investigate abnormal liver function tests.
RESULTS: Six percent of patients had a normal liver biopsy while 26% were found to have some degree of fibrosis and 6% were cirrhotic. Thirty four and 32% of biopsies suggested non-alcoholic steatohepatits or fatty liver respectively. Other diagnoses included cryptogenic hepatitis, drug toxicity, primary and secondary biliary cirrhosis, autoimmune hepatits, alcohol-related liver disease, primary sclerosing cholangitis, haemochromatosis, amyloid and glycogen storage disease. Patient management was directly altered in 18% of patients due to liver biopsy findings and three families were entered into screening programmes for inheritable liver disease.
CONCLUSIONS: The finding of abnormal liver function tests in the absence of diagnostic serology may indicate significant liver disease. Liver biopsy yields a range of liver diseases of diverse nature and extent. Liver diseases may be uncovered for which specific treatment is indicated.

PMID 11580141
 
  1. 薬剤性肝障害は頻度の高い原因である。最近、使い始めた薬や、⼀時的使用薬などを確認する。
  1. 黄疸を伴う場合には、ウイルス性肝炎、閉塞性黄疸、悪性腫瘍、アルコール性肝障害などの除外診断を進める。
  1. 発熱を伴う場合には、ウイルス性肝炎、伝染性単核球症、急性胆管炎、などを除外する。
  1. 腹痛を伴う場合には、胆管胆石、胆管癌、膵癌などを除外する。
問診・診察のポイント  
問診:
  1. ⾃覚症状(全⾝倦怠感、易疲労感、腹痛、発熱、咽頭痛、関節痛、筋⾁痛など)の有無と持続期間を確認する。
  1. 薬物使⽤歴を確認する。
  1. 最近、使い始めた薬剤、⼀時的使用薬・漢⽅薬・サプリメントなどがあるかを確認する(薬剤性肝障害、ステロイドや免疫抑制剤使用歴がある場合はHBVやCNVの再活性化)。
  1. アルコールの摂取歴、摂取量を確認する(アルコール性肝炎・肝硬変)。

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監修:野口善令 : 特に申告事項無し[2024年]

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肝機能異常(AST、ALT上昇)

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