今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 川嶋乃里子 かわしま神経内科クリニック

監修: 高橋裕秀 昭和大学藤が丘病院 脳神経内科

著者校正済:2025/06/25
現在監修レビュー中
参考ガイドライン:
  1. Treatment of restless legs syndrome: Evidence-based review and implications for clinical practice (revised 2017). Mov Disord 2018; 33(7):1077-1091.
  1. Guidelines for the first-line treatment of restless legs syndrome/Willis-Ekbom disease, prevention and treatment of dopaminergic augmentation: a combined task force of the IRLSSG, EURLSSG, and the RLS-foundation. Sleep Med. 2016 May;21:1–11.
  1. Restless legs syndrome/Willis-Ekbom disease diagnostic criteria: updated International Restless Legs Syndrome Study Group (IRLSSG) consensus criteria--history, rationale, description, and significance. Sleep Med. 2014 Aug;15(8):860–73.
  1. Practice guideline summary: Treatment of restless legs syndrome in adults: Report of the Guideline Development, Dissemination, and Implementation Subcommittee of the American Academy of Neurology. Neurol. 2016 Dec 13;87(24):2585-2593.
  1. Silber MH, Buchfuhrer MJ, Earley CJ, Koo BB, Manconi M, Winkelman JW, et al. The Management of Restless Legs Syndrome: An Updated Algorithm. Mayo Clin Proc. 2021 Jul;96(7):1921–37.
  1. 日本神経治療学会標準的神経治療:Restless legs 症候群診療ガイドライン(2024)
  1. Winkelman JW, Berkowski JA, DelRosso LM, et al. Treatment of restless legs syndrome and periodic limb movement disorder: an American Academy of Sleep Medicine clinical practice guideline. J Clin Sleep Med. 2025 Jan 1;21(1):137-152.
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 『標準的神経治療:Restless legs 症候群診療ガイドライン(2024)』1)の出版後に、新たな国際的臨床実践ガイドライン2)が2025年初頭に発表され、主に後者に基づき以下について加筆・修正した。
  1. 脳内鉄欠乏状態が最も病態に関与していると考えられ、鉄補充が重要である。検査は午前中に行うのが理想的で、採血前24時間は、鉄を含むサプリメントや食事を避けた方がよい。血清フェリチン75 ng/mL未満またはトランスフェリン飽和度45%未満では、鉄の経口投与を行う1,3)。血清フェリチン50~100 ng/mLの患者では消化管からの鉄吸収がよくないので、鉄剤内服でRLS症状が改善しないときは鉄剤の静脈投与を考える2)。鉄の経口投与時はビタミンC内服の併用(毎日または隔日1回夕)が推奨されている。
  1. 投与開始時は3~4か月後、その後は3~6か月ごとに、血清フェリチンを測定し、100 ng/mL(日本のガイドライン1では75 ng/mL)を超えることを目標とする。RLSが悪化した場合は、血清フェリチンが300 ng/mL未満であれば、鉄剤内服を再開する2)
  1. 慢性持続性RLSには、α2δリガンドを先に使うべきであるという治療アルゴリズムが推奨されており、augmentation発症要因となるドパミン作動薬(レボドパ、ドパミンアゴニスト)は短期使用にとどめ、長期使用をできるだけ避ける2)
  1. すでにドパミン作動薬を長期に使用している場合は、α2δリガンドに徐々に置き換えることが推奨されている3
  1. 日本国内で保険適用があるα2δリガンドは、ガバペンチンエナカルビル(レグナイト)のみであり、これが無効であればドパミン作動薬に変更するのではなく、保険適用外ではあるがプレガバリン(リリカ)に変更するのが国際的な潮流である2,3)
  1. プレガバリン(リリカ)の投与は、夕食後75 mg(65歳以上では50 mg)から開始し、150~450 mgが有効量とされている3)
  1. 妊娠:妊娠第2~3期、および授乳期に、クロナゼパム0.25~0.5 mgを勧める文献があるが1,3、エビデンスレベルは低い2
  1. 小児:血清フェリチン50 ng/mL未満であれば、鉄剤の経口または静脈注射。生活習慣の改善、健康的な睡眠習慣を指導する2
  1. 末期腎疾患:保険適用外であるが、ガバペンチン(ガバペン、他の抗てんかん薬との併用が保険適用上必要)は、腎機能障害や透析中の患者では添付文書に詳細な用量調節が記載されており、海外では推奨されている3
  1. フェリチン<200 ng/mL、トランスフェリン飽和度<20%の患者において、鉄剤の静脈内投与が提案されている2

1) Restless legs 症候群診療ガイドライン作成委員会:標準的神経治療:Restless legs症候群診療ガイドライン(2024). 神経治療. 2024;41(2):129-176.
2) Winkelman JW, et al. Treatment of restless legs syndrome and periodic limb movement disorder: an American Academy of Sleep Medicine clinical practice guideline. J Clin Sleep Med. 2025 Jan 1;21(1):137-152.
3) Silber MH, et al. The Management of Restless Legs Syndrome: An Updated Algorithm. Mayo Clin Proc. 2021 Jul;96(7):1921-1937.

概要・推奨   

  1. Restless legs syndrome(RLS)は、しばしば不快な感覚を伴う、脚を動かしたいという制御不能な衝動を特徴とする神経疾患である。RLSの効果的な管理には、生活習慣の改善と薬理学的治療の併用が必要である。
  1. すべてのRLS患者で、血清フェリチントランスフェリン飽和度を測定し、低値であれば鉄補充が勧められる(推奨度1)
  1. 生活習慣の改善として、定期的な運動、睡眠衛生に留意し、アルコール、カフェン、抗ヒスタミン薬、セロトニン作動薬、抗ドパミン薬、未治療の睡眠時無呼吸症候群などの増悪因子の有無を確認する(ただちにこれらの薬剤を中止するのではなく、増悪因子を軽減する方法を考えていく)[1][2]
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  1. 薬物治療が必要な中等度以上のRLSの症状の軽減にプラミペキソールは有効である(推奨度2)が、短期使用が推奨されている[2]
  1. 薬物治療が必要な中等度以上のRLSの症状軽減にロチゴチンは有効である(推奨度2)が、短期使用が推奨されている[2]
  1. Augmentationとは、ドパミン作動薬による治療で生じる医原性のRLS症状の悪化である。ガバペンチンエナカルビル(600 mg/日)を含むα2δリガンドはaugmentationを生じにくい。レボドパやプラミペキソールなどのドパミンアゴニストでは、augmentationを生じやすいので、短期投与にとどめ、過量とならないように注意が必要である(推奨度1)[2]
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 下肢静止不能症候群(restless legs syndrome、RLS)は、1685年にWillisにより初めて症例報告され、1945年にEkbomがRLSとして疾患概念を確立し命名した[3]。別名「むずむず脚症候群」とも呼ばれ、夕方から深夜にかけて、下肢を中心として、「ムズムズする」「痛がゆい」「じっとしていると非常に不快」といった異常な感覚が出現し不眠などの状態を来す疾患である。RLSの21~57%には上肢にも症状がある。「冷感」は一般的ではない。
  1. 有病率は、欧米では約10%前後といわれてきたが、最近の欧州5カ国と米国の大規模疫学調査では、過去1年間のRLS症状は7.2%にみられ、中等度以上の患者は約2.7%、70歳代まで年齢とともに増加していく。アジア諸国では少なく、週2回以上症状がある例に限ると、欧米では1.5~3.0%、日本では約1%といわれている。女性が多く、男性の約1.5倍である。
  1. なお、下肢つりの鑑別方法については、別項下肢つりの項を参考にしてほしい。
 
  1. RLSの病態は十分解明されていない。
  1. まとめ、代表事例の説明:家族歴のあるRLS患者の連鎖解析では、RLS1からRLS5まで報告がある[4]。ゲノムワイド関連解析では、RLS発症のリスクのある19の遺伝子座が報告されている[4][5][6]。MEIS1が最も強い遺伝リスク因子であり[6]、鉄代謝に関与しており[7]、ノックアウトマウスでドパミン系と関連していることが示唆されている[4]。病理および経頭蓋超音波での黒質の鉄の減少が報告されている[8][9]。D3ノックアウトマウスでは、A11ドパミン神経(視床下部から脊髄の間質核交感神経節前線維に抑制性入力)の障害による交感神経活動亢進の関連が示唆されている[10]
  1. 結論:病態には、遺伝的素因(家族歴が患者の約50%にある)[11]、鉄代謝とドパミン受容体異常が関連しているが、十分には解明されていない。
 
RLSに関連する神経系領域

MRI、PET、超音波、病理などでは、図のような領域がRLSの病態に関与していることが示されており、これらの部位が病因、二次的現象、代償などのレベルでネットワークを形成していると考えられている。

出典

Trenkwalder C, Paulus W.
Restless legs syndrome: pathophysiology, clinical presentation and management.
Nat Rev Neurol. 2010 Jun;6(6):337-46. doi: 10.1038/nrneurol.2010.55.
Abstract/Text Restless legs syndrome (RLS) is a somatosensory network disorder that is clinically diagnosed according to four main criteria: an urge to move the legs, usually associated with unpleasant leg sensations; induction or exacerbation of symptoms by rest; symptom relief on activity; and diurnal fluctuations in symptoms with worsening in the evening and at night. Genetic variants in four chromosomal regions have been identified that increase the risk of RLS. In addition, various different lesions, ranging from peripheral neuropathies to spinal cord lesions or alterations of brain metabolism, are implicated in RLS. In most cases, sleep disorders with frequent sleep fragmentation and characteristic periodic limb movements during sleep can be identified during a polysomnographic recording. The first-line drugs for RLS are dopaminergic agents, which are effective in low to moderate doses. Alternative or additional treatments include opioids and anticonvulsants. Augmentation-paradoxical worsening of symptoms by dopaminergic treatment-is the main problem encountered in difficult-to-treat patients. Iron deficiency must be identified and treated by supplementation, both to improve RLS symptoms and to potentially lower the risk of augmentation. Here, we review the latest studies pertaining to the pathophysiology, clinical presentation and management of RLS.

PMID 20531433
 
RLSの病態モデル仮説

まとめ:①脳内鉄の欠乏の関与が重視されている。②RLS患者ではシナプス前ドパミンは過剰な状態で、シナプス後D2受容体のダウンレギュレーションが生じ、夜間にドパミン欠乏が生じるため、夜間に症状増悪が起きると考えることができる。ドパミンアゴニストは、ラットではグルタミンの放出をブロックすることが知られている。A11ドパミン神経も関与しているかも知れないが、人の剖検脳では異常が見つかっていない。動物モデルや人で、脳内鉄欠乏が線条体ドパミン機能を変化させていることが示唆されている。③脳内鉄欠乏と高グルタミン作動状態の関連がいくつかの研究で示唆されており、シナプス前グルタミン放出を抑制するα2δリガンドは症状軽減に効果がある。げっ歯類では、鉄欠乏はグルタミン系皮質線条体路終末を過敏にするかも知れない。④脳内鉄欠乏はアデノシンA1受容体のダウンレギュレーションを生じ、低アデノシン作動状態となり、高グルタミン作動状態や線条体のアデノシン-ドパミン-グルタミンのバランス障害を生じるかもしれない。

出典

Manconi M, Garcia-Borreguero D, Schormair B, Videnovic A, Berger K, Ferri R, Dauvilliers Y.
Restless legs syndrome.
Nat Rev Dis Primers. 2021 Nov 3;7(1):80. doi: 10.1038/s41572-021-00311-z. Epub 2021 Nov 3.
Abstract/Text Restless legs syndrome (RLS) is a common sensorimotor disorder characterized by an urge to move that appears during rest or is exacerbated by rest, that occurs in the evening or night and that disappears during movement or is improved by movement. Symptoms vary considerably in age at onset, frequency and severity, with severe forms affecting sleep, quality of life and mood. Patients with RLS often display periodic leg movements during sleep or resting wakefulness. RLS is considered to be a complex condition in which predisposing genetic factors, environmental factors and comorbidities contribute to the expression of the disorder. RLS occurs alone or with comorbidities, for example, iron deficiency and kidney disease, but also with cardiovascular diseases, diabetes mellitus and neurological, rheumatological and respiratory disorders. The pathophysiology is still unclear, with the involvement of brain iron deficiency, dysfunction in the dopaminergic and nociceptive systems and altered adenosine and glutamatergic pathways as hypotheses being investigated. RLS is poorly recognized by physicians and it is accordingly often incorrectly diagnosed and managed. Treatment guidelines recommend initiation of therapy with low doses of dopamine agonists or α2δ ligands in severe forms. Although dopaminergic treatment is initially highly effective, its long-term use can result in a serious worsening of symptoms known as augmentation. Other treatments include opioids and iron preparations.

© 2021. Springer Nature Limited.
PMID 34732752
 
  1. RLSの有病率は週2回以上症状がある例に限ると、欧米では1.5%から3.0%[12][13]、日本では約1%といわれている[14]
  1. まとめ、代表事例の説明:小児期から高齢者までみられる疾患で、70歳代まで、年齢とともに増加していく。女性に多く、男性の約1.5倍である[15]。特発性RLSの患者の約50%に家族歴がみられる[11]。未治療では、15,391例中に睡眠障害75.5%、日中の機能低下55.5%が認められ、疼痛88.0%、気分障害26.2%を伴い、生活の質が低下する[15]
  1. 結論:RLSはまれな疾患ではなく、放置すると生活の質が低下する場合は、治療を開始すべきである。
  1. 追記:人種による差があり、軽度の患者も含めれば欧米では約10%[15]、日本では約2~3%といわれている。

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薬剤監修について:
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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
川嶋乃里子 : 特に申告事項無し[2025年]
監修:高橋裕秀 : 特に申告事項無し[2025年]

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Restless legs syndrome(下肢静止不能症候群)

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