今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 佐藤慎哉1) 山形大学医学部総合医学教育センター 教授

著者: 嘉山孝正2) 国際医療福祉大学特任教授・学事顧問

監修: 永山正雄 国際医療福祉大学医学部・成田病院 脳神経内科、集中治療部

著者校正/監修レビュー済:2023/01/11
参考ガイドライン:
  1. 関連8学会(日本脊髄障害医学会、日本脊椎脊髄病学会、日本脊髄外科学会、日本脳神経外傷学会、日本頭痛学会、日本神経学会、日本整形外科学会、日本脳神経外科学会)合同:脳脊髄液漏出症診療指針.
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 2019年に公表された関連8学会合同「脳脊髄液漏出症診療指針」(文献5)に準拠した内容に改訂した。

概要・推奨   

  1. 脳脊髄液減少症は、概念的には「脳脊髄液の減少による起立性頭痛を主症状とする疾患」とされるが、臨床的に診断し得るのは、低髄液圧や髄液漏出である。
  1. 誘因・原因が明らかでない「特発性」の場合も多いが、頭頸部外傷や激しいスポーツ、カイロプラティック、重労働等を契機として発症する場合もある。
  1. 起立性頭痛は、病歴のどこかの時点で認める最も主要な症状である。
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  1. 本症に関連する8学会合同の「脳脊髄液漏出症診療指針」[5]が、2019年にAMEDの研究班により公表され、現在、広く用いられている。
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 脳脊髄液減少症は、主として脳脊髄液の持続的漏出により髄液が減少・髄液圧が低下するため、頭痛、めまい、視覚・聴覚障害、倦怠など多彩な症状が出現する疾患である。
  1. まれな疾患といわれていたが、診断されずに経過している可能性もあり、起立・坐位で増悪する頭痛を訴える場合、さまざまな薬物治療を行っても改善しない頭痛を訴える場合などには、脳脊髄液減少症を想起すべきである。
  1. 特に原因がなく髄液が漏出する特発性と、頭部・脊椎外傷による外傷性があるが、そのほか腰椎穿刺後や脳室‐腹腔シャント(V-Pシャント)の流出過多によるものもある。
  1. 脳脊髄液減少症は、本来は低髄液圧症候群と同一疾患として名付けられた病名である。2004年に発表された国際頭痛分類第2版では、「特発性低髄液圧性頭痛は、(略)、髄液量減少性頭痛、(略)、などの呼称が用いられてきた」「特発性低髄液圧性頭痛の本態は脳脊髄液量の減少による。脳脊髄液量減少は頭痛のみならず、多彩な症状を出現させる(低髄液圧症候群)。(略)、そこで、特発性低髄液圧性頭痛に対して、脳脊髄液減少症という病態名も提唱されている」と記載されている。
  1. 現在においても、国際的には低髄液圧症候群(intracranial hypotension)が病名として主に使用されている。しかし、日本国内において、2002年に篠永が「交通事故の鞭打ち症など軽微な外傷後に生じる難治性頭痛や多彩な症状は低髄液圧症候群が原因になっていることがある」と発表して以降、この病態は交通事故の後遺症との関連で社会問題化した。さらに「髄液圧が低くない症例も少なくない」「頭痛以外の多彩な症状を示す」との報告もなされたことから、低髄液圧症候群と脳脊髄液減少症、脳脊髄液漏出(症)の疾患概念の整理が社会的にも求められた。
 
  1. 交通事故による追突事故で本当に髄液が漏れるのかという批判があるが、実際に軽微な外傷で髄液が漏れることはあるのだろうか?
  1. 2002年に篠永は、むち打ち症後遺症のなかには髄液が持続的に漏れ、低髄液圧症候群にきわめて類似した病態があることを報告したが、その後多くの批判、反論が続いた。追突事故程度で髄液が漏れることはあり得ないとの反論である。当初、軽微な外傷後の脳脊髄液減少症に関しては、篠永を中心に、この病態の治療に取り組む医師らによる脳脊髄液減少症研究会からの報告が主であった。本研究会のメンバーである福山医療センターの守山英二らは2例の交通外傷による髄液漏出例を報告している[1]
  1. 日本脳神経外傷学会は、2006年に「外傷に伴う低髄液圧症候群作業部会」を立ち上げ、外傷と低髄液圧症候群に関する国内外の300編余の文献検討を行い、診断基準を作成(2007年3月公表)するとともに、その診断基準による前向き調査を行った。その結果、「4例の外傷に伴う低髄液圧症候群患者」が認定され、この結果により、低髄液圧症候群が外傷を契機として発症しうることを学会として正式に認めた[2]
  1. 2007年から行われた厚生労働科学研究費補助金による「脳脊髄液減少症の診断・治療法の確立に関する研究」では、2010年に起立性頭痛の明白な100症例が登録され、16例が画像所見から「脳脊髄液漏出症」と「確定」され、そのうち外傷例は5例あり交通事故の患者も2例含まれていた。そして研究班の事業報告書には「外傷による脳脊髄液の漏れは決してまれではない」と結論づけている。
 
  1. 厚生労働省の研究班(脳脊髄液減少症の診断・治療法の確立に関する研究班:研究代表者 嘉山孝正)が2011年にまとめた「脳脊髄液漏出症画像判定基準・画像診断基準」では、「現実に脳脊髄液の量を臨床的に計測できる方法はない」ことを理由に脳脊髄液減少症の基準を策定せず、客観的に診断可能な「脳脊髄液漏出症」を策定した。その報告書では、脳脊髄液減少症、脳脊髄液漏出症、低髄液圧症候群の関係を、「髄液漏出症」と「低髄液圧症(低髄液圧症候群)」をほとんど重複した2つの円で、「脳脊髄液減少症」は、その2つの円の外側を囲む楕円で表現した。
 
「髄液漏出症」と「低髄液圧症」(低髄液圧症候群)の病態

出典

平成22年度厚生労働科学研究費補助金障害者対策総合研究事業(神経・筋疾患分野)脳脊髄液減少症の診断・治療法の確立に関する研究班:脳脊髄液漏出症画像判定基準・画像診断基準
 
  1. したがって、日本国内においては、「低髄液圧症候群」は、起立性頭痛が明白で脳MRI画像で「びまん性硬膜肥厚」のある、あるいは腰椎穿刺で低髄液圧が確認された典型的な症例であり、「脳脊髄液漏出症」は、画像診断により髄液の漏出が確認できた症例である。一方、「脳脊髄液減少症」は、存在する可能性はあるが、いまだ診断方法が確立していない病態と理解されている。
  1. 2016年4月よりブラッドパッチが、上述した厚生労働省研究班の脳脊髄液漏出症診断基準を満たす症例において、保険適用となった。それ以外は、自費診療となるため、検査も含め混合診療にならないように注意が必要である。
  1. 頭痛の鑑別診断には、国際頭痛分類が用いられることが多い。最新版の国際頭痛分類第3版では、低髄液圧性頭痛が、①硬膜穿刺後頭痛、②脳脊髄液瘻性頭痛(漏出の原因となる手技や外傷後に発症)、③特発性低頭蓋内圧性頭痛(原因不明だが、強い咳き込みなど少しの頭蓋内圧上昇が原因として考えられている)――の3つに分類されている。この中でいわゆる脳脊髄液減少症(脳脊髄液漏出症・低髄液圧症候群)は、②脳脊髄液瘻性頭痛(交通事故後やスポーツ外傷後の場合)、または③特発性低頭蓋内圧性頭痛、に該当すると考えられる。国際頭痛分類は、国際的に広く用いられ、また歴史も古く、頭痛の鑑別にはきわめて有効であるが、一方、取り上げられている画像診断に関する詳しい判定基準が示されておらず、確定診断を得るのに難渋することがある。
  1. 国際頭痛分類第2版から、2013年に改訂された第3版へは、低髄液圧性頭痛において、診断基準が大幅に変更されたことに注意が必要である。特に、特発性低頭蓋内圧性頭痛に関しては、第2版では「座位または立位をとると15分以内に増悪し、臥位をとると15分以内に軽快する」という診断基準であったが、第3版では「立位をとって数分あるいは数時間後に悪化したり、仰臥位をとって数分あるいは数時間後に必ずしも消失するとはかぎらない」と、時間に関する条件が緩和された。また、ブラッドパッチ(硬膜外自家血注入療法)の効果に関しても、第2版では「治療後72時間以内に頭痛が消失する」ことが診断基準にもなっていたが、第3版ではブラッドパッチの治療効果は診断基準から外れている。
 
  1. 国際頭痛学会分類の低髄液圧性頭痛の診断基準は第2版から第3版へ、大幅な改訂がされたが、国際頭痛分類第2版の問題点はどこにあったのだろうか?(参考文献:[3][4]
  1. 国際頭痛分類第2版の基準に合致しない例が多く、医療現場の実情にそぐわないとの報告がされるようになった。特発性低髄液圧症候群では、起立性頭痛、低髄液圧、MRIでのびまん性硬膜肥厚、の3徴候すべてを呈する症例が多いが、一方で、診察時に起立性頭痛を欠く症例や正常髄液圧例の報告もなされていた。
  1. 国際頭痛分類第2版では、起立15分以内に増悪する頭痛が必須項目になっており、この15分という項目が問題になった。もともと文献検索をしても15分に言及した論文は見つからない。第3版の改訂の直前に、Schievinkは国際頭痛学会の重鎮らと共著で新しい診断基準の方向性を示す論文として、「国際頭痛学会分類第2版の診断基準が適合するのは、特発性低髄液圧症候群の3%にすぎない」という報告を行っている。
  1. 国際頭痛分類第3版での重要な改訂点は、「座位または立位をとると15分以内に増悪する」と「頭痛以外の5つの症状(項部硬直、耳鳴、聴力低下、光過敏、悪心)の少なくとも1項目を有する」という必須条件が消え、「硬膜外血液パッチ後、72時間以内に頭痛が消失する」ことも診断基準とはならなくなった。
 
  1. 日本医療研究機構(AMED)の研究班「脳脊髄液減少症の非典型例及び小児の診断・治療法開拓に関する研究(統括研究代表者:嘉山孝正)」は、前述の厚生労働省研究班が2011年に公表した画像判定基準・診断基準に加え、病態・原因・症状・診断・治療に関する文献レビューにより現時点での考え方をまとめた「脳脊髄液漏出症診療指針」を上梓した。この診療指針は、脳脊髄液減少症の中核をなすと考えられる脳脊髄液漏出症に関係する8つの学会(日本脊髄障害医学会・日本脊椎脊髄病学会・日本脊髄外科学会・日本脳神経外傷学会・日本頭痛学会・日本神経学会・日本整形外科学会・日本脳神経外科学会)が合同で策定したものであり、医療だけでなく司法の現場など本症の診療の基準として社会的に広く用いられている[5]
  1. 小児の脳脊髄液減少症(脳脊髄液漏出症・低髄液圧症候群)に関して、厚生労働省から「学校におけるスポーツ外傷等による脳脊髄液減少症への適切な対応について」として、2007年、2012年、2017年と、3回にわたり全国の学校へ事務連絡がされ、登校拒否や体調不良の生徒にこの疾患が発症している可能性について、学校関係者への注意が喚起されている。2017年の通達では「スポーツ外傷等の後に、脳脊髄液が漏れ出し減少することによって、起立性頭痛(立位によって増強する頭痛)などの頭痛、頸部痛、めまい、倦怠、不眠、記憶障害など様々な症状を呈する脳脊髄液減少症とよばれる疾患が起こりうる」「事故後の後遺症として通常の学校生活を送ることに支障が生じているにもかかわらず、まわりの人から単に怠慢である等の批判を受け、十分な理解を得られなかったことなどの事例がある」と記載されている。小児の脳脊髄液減少症(脳脊髄液漏出症・低髄液圧症候群)に関しては、前述の日本医療研究機構(AMED)の研究班「脳脊髄液減少症の非典型例及び小児の診断・治療法開拓に関する研究」が、2016年より開始されたが、小児でみられやすい起立性調節障害(体位性頻脈症候群など)との鑑別などに関して、専門家の間でもいまだ意見の一致をみていない。
 
  1. 低髄液圧症候群と慢性硬膜下血腫の合併例の治療はどうするべきか?[6]
  1. 慢性硬膜下血腫の発症には脳脊髄液減少症(脳脊髄液漏出症・低髄液圧症候群)が原因になっていることがまれにあり、その際に、最初に穿頭血腫ドレナージを施行すると、脳ヘルニアによる急激な意識障害を来す危険もあり、ブラッドパッチを先にするか、穿頭血腫ドレナージの直後にブラッドパッチを施行する態勢を整えておくことが必要である。慢性硬膜下血腫が両側にある場合や、比較的若年者の場合は、まずは造影脳MRIを施行して、びまん性硬膜肥厚がないか、あらかじめ脳脊髄液減少症(脳脊髄液漏出症・低髄液圧症候群)の診断をつけておくことが大切である。
病歴・診察のポイント  
  1. 立位、坐位で悪化し、臥位になると軽快する頭痛がある。

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
佐藤慎哉 : 特に申告事項無し[2024年]
嘉山孝正 : 特に申告事項無し[2025年]
監修:永山正雄 : 特に申告事項無し[2025年]

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脳脊髄液減少症(脳脊髄液漏出症・低髄液圧症候群)

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