今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 綿貫聡 東京都立多摩総合医療センター 救急・総合診療科

監修: 野口善令 豊田地域医療センター 総合診療科

著者校正/監修レビュー済:2024/03/21
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 関節痛に関連する検査の推奨について細かな訂正を行った。

概要・推奨   

  1. 関節痛を認める場合、問診と身体所見で関節痛と関節炎の鑑別を行う。関節周辺に腫脹、圧痛、熱感、発赤などの局所の炎症所見があれば関節炎、炎症所見がなく痛みのみの場合は関節痛であることが多い。 
  1. 急性経過の単関節炎では化膿性関節炎の除外が必要かをまず考慮し、関節液の細胞数・性状の評価、培養提出を検討する。疑わしい場合には、血液培養の提出とともに抗菌薬投与、関節洗浄を考慮する。結晶性関節炎の診断においては、偏光顕微鏡での関節液評価が有用である。
  1. 慢性経過の多関節炎では関節リウマチを中心として評価を行うが、類似した症状を呈する疾患群が存在し、鑑別に注意を要する。

病態・疫学・診察 

疫学情報・病態・注意事項  
  1. 原因疾患:疾患頻度として多いのは変形性関節症である。
  1. 関節リウマチ(RA)と類似した疾患群が多く、鑑別に注意を要する。2010年に改定された米国リウマチ学会(ACR)/欧州リウマチ学会(EULAR)の関節リウマチ診断基準で基準を満たしたとしても、他疾患の除外が行われていることが前提になる。特に若年女性でのパルボウイルス感染症、炎症性腸疾患(IBD)関連関節炎。
 
改訂リウマチ診断基準(米国リウマチ学会、欧州リウマチ学会2010)

合計点数が6点以上で関節リウマチと診断する。(ただし、分類基準を満たしても除外基準を満たさなければ関節リウマチと診断できない。1つ以上の関節腫脹があり、他の疾患で説明がつかない場合に以下の基準を満たせば関節リウマチと判断する)
 
参考文献:
  1. Aletaha D, Neogi T, Silman AJ, Funovits J, et al.2010 Rheumatoid arthritis classification criteria: an American College of Rheumatology/European League Against Rheumatism collaborative initiative.Arthritis Rheum. 2010 Sep;62(9):2569-81.PMID: 20872595
  1. 日本リウマチ学会(ACR/EULAR予備診断基準

出典

著者提供
 
新基準使用時のRA鑑別疾患難易度別リスト

  1. 新基準は除外診断を前提としているため、まず他疾患を除外する必要がある。疾患の頻度と新基準の満たしやすさを群分けしたものが“新基準使用時のRA鑑別疾患難易度別リスト”である。
  1. ウイルス性疾患に伴う関節炎は主に急性の多発関節炎の場合に最も重要な鑑別である。パルボウイルスB19、風疹ウイルスの他にB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、HIVウイルスなどが鑑別に挙がる。
  1. 全身性結合織病(膠原病)の部分症状としての関節炎は高頻度である。関節腫脹は乏しい、X線で骨びらんを認めない、抗核抗体陽性などが鑑別の参考になるが、時に合併するJaccoud関節症では著しい変形を起こすものもある。
  1. リウマチ性多発筋痛症は時に末梢関節炎を合併することがあり、高齢者でRF/抗CCP抗体陰性の場合は鑑別が困難である。薬物治療の反応性と経過から判断する。
  1. 乾癬性関節炎は多発関節炎型の場合には関節症状はリウマチと区別できないこともある。皮疹は好発部位(臀部、膝蓋、肘頭、髪際部)を念入りに探してはじめて見つかる場合がある。

出典

日本リウマチ学会([https://www.ryumachi-jp.com/info/161114_table1.pdf 新基準使用時のRA鑑別疾患難易度別リスト])
 
1987ACR診断基準 リウマチの診断基準(米国リウマチ学会1987)

分類上、7項目のうち少なくとも4項目について該当している場合、関節リウマチ(RA)とみなす。
リウマトイド因子は抗CCP抗体でもよい。

出典

F C Arnett, S M Edworthy, D A Bloch, D J McShane, J F Fries, N S Cooper, L A Healey, S R Kaplan, M H Liang, H S Luthra
The American Rheumatism Association 1987 revised criteria for the classification of rheumatoid arthritis.
Arthritis Rheum. 1988 Mar;31(3):315-24.
Abstract/Text The revised criteria for the classification of rheumatoid arthritis (RA) were formulated from a computerized analysis of 262 contemporary, consecutively studied patients with RA and 262 control subjects with rheumatic diseases other than RA (non-RA). The new criteria are as follows: 1) morning stiffness in and around joints lasting at least 1 hour before maximal improvement; 2) soft tissue swelling (arthritis) of 3 or more joint areas observed by a physician; 3) swelling (arthritis) of the proximal interphalangeal, metacarpophalangeal, or wrist joints; 4) symmetric swelling (arthritis); 5) rheumatoid nodules; 6) the presence of rheumatoid factor; and 7) radiographic erosions and/or periarticular osteopenia in hand and/or wrist joints. Criteria 1 through 4 must have been present for at least 6 weeks. Rheumatoid arthritis is defined by the presence of 4 or more criteria, and no further qualifications (classic, definite, or probable) or list of exclusions are required. In addition, a "classification tree" schema is presented which performs equally as well as the traditional (4 of 7) format. The new criteria demonstrated 91-94% sensitivity and 89% specificity for RA when compared with non-RA rheumatic disease control subjects.

PMID 3358796
 
  1. 初診時では分類不能と判断される内容も多い。未分類関節炎(undifferentiated arthritis)と評価された場合、定期的な再評価が必要である。
問診・診察のポイント  
  1. 罹患期間、先行感染(溶連菌、性感染症、海外渡航歴)、小児との接触歴、性感染症の先行、家族歴(リウマチ、膠原病)、ドライアイ、ドライマウス、日光過敏症、レイノー症状、排便間隔、便性状(下痢、血便、黒色便の有無)、体重変化、薬剤投与歴、皮疹の評価、血液曝露。関節周辺に腫脹、圧痛、熱感、発赤などの局所の炎症所見があれば関節炎、炎症所見がなく痛みのみの場合は関節痛である。

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
綿貫聡 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:野口善令 : 特に申告事項無し[2024年]

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