今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 神谷秀喜 中部国際医療センター皮膚科/皮膚がんセンター

監修: 戸倉新樹 掛川市・袋井市病院企業団立 中東遠総合医療センター 参与/浜松医科大学 名誉教授

著者校正/監修レビュー済:2022/07/20
参考ガイドライン:
  1. 日本皮膚科学会/日本皮膚悪性腫瘍学会:科学的根拠に基づく皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第3版
患者向け説明資料

改訂のポイント
  1. 有棘細胞癌ガイドライン2020第3版に準拠した修正を行った。

概要・推奨   

  1. 原則として有棘細胞癌(扁平上皮癌、SCCを想起した場合、手術を含めた集学的治療が行うことができるがん拠点病院へ紹介することが推奨される
  1. 治療はまず外科的切除が推奨される低リスク群であることが確実な症例は4~6mm、それ以外の高リスク群と捉えうる症例は6~10mm離して切除することを推奨している(推奨度2
  1. 手術適応がなければ根治的放射線療法を行い、再発の危険が高い場合には、術後放射線療法を追加することも推奨される(推奨度2
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 皮膚科領域では、扁平上皮癌と有棘細胞癌(squamous cell carcinoma SCC)は同義語として扱う。
  1. 表皮角化細胞(ケラチノサイト)への分化を示す皮膚悪性腫瘍の代表である。
  1. 先行する局所準備状態(主に瘢痕病変)としては熱傷瘢痕(図<図表>,図<図表>)、外傷性瘢痕、慢性放射線皮膚炎を代表とし、そのほかにも円板状エリテマトーデス(DLE)、難治性潰瘍、硬化性萎縮性苔癬、褥瘡(図<図表>)、化膿性汗腺炎などが認められる。発生母地を正確に把握することは、その後の診断や治療方針にも関わるため重要である。
 
熱傷瘢痕より生じたSCC

幼少時に熱湯により右下肢を受傷。その瘢痕の一部が治りにくくなったという場合は要注意である。SCC発生までには数十年を要することが多い。

出典

著者提供
 
放射線皮膚潰瘍から生じたSCC

ケースの説明
病 歴:35歳女性。幼少時に左手背の血管腫に対して放射線治療(限界線照射)を行った。30歳を過ぎた頃より、同部にびらん・潰瘍が生じ、外用薬で治療を行ったが徐々に悪化した。
診 断:潰瘍辺縁から生検を行い、慢性放射線皮膚炎から生じた高分化型SCCと診断した。
治 療:放射線治療により色素沈着となった瘢痕部も含めて、手背腱膜直上で切除した。欠損部に対しては、大腿部からの分層植皮で再建している。
転 帰:術後の後療法は行わず、5年間再発転移は認めていない。
コメント:昭和30年頃まではあざや白癬にも放射線照射が行われていた。
写真
a:初診時臨床
b:病理組織像
c:術後1年目

出典

著者提供
 
  1. 癌前駆症として、日光角化症(図<図表>)、白板症(図<図表>)、Bowen病(図<図表>)、汗孔角化症、陰部ボーエン様丘疹症が挙げられる。これらの病変よりSCCへ進展する。
  1. SCCを生じやすい身体的状態として、色素性乾皮症、疣贅状表皮発育異常症、Werner症候群、AIDSなどがある。
  1. 疣状癌(verrucous carcinoma)は臨床的に疣状ないしカリフラワー状を呈する高分化低悪性度SCCの一型である。局所で増殖し進行すると深部に進展するが、浸潤性であっても転移することはまれである。
  1. 先行病変に応じて臨床像も多彩であるが、単発する悪臭を伴う結節・潰瘍を形成して急速に拡大する。また難治性潰瘍の中にもSCCが含まれるので注意を要する。(図<図表>
  1. 組織学的には表皮と連続した異型有棘細胞の浸潤性増殖を認める。角化傾向を示し、特徴的な癌真珠を形成する。
  1. 手術治療が主体であるが、放射線療法や化学療法が有効な症例もある。
  1. 進行例では治療に難渋し、不幸な転帰をたどるケースもある。
問診・診察のポイント  
  1. 表皮構成成分の主体である有棘細胞の癌であり、頻度の高い皮膚癌の一つである。

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(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
神谷秀喜 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:戸倉新樹 : 講演料(サノフィ(株),日本イーライリリー(株),アッヴィ合同会社,協和キリン(株))[2024年]

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有棘細胞癌(扁平上皮癌)

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