今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 宇原 久 札幌医科大学医学部皮膚科学講座

監修: 戸倉新樹 掛川市・袋井市病院企業団立 中東遠総合医療センター 参与/浜松医科大学 名誉教授

著者校正/監修レビュー済:2022/08/17
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 各症例の特徴をさらに分かりやすくするために解説を加えた。

概要・推奨   

  1. 成人後に気づいた褐色から黒色の病変で7㎜を超える場合は皮膚科で診察を受けることが推奨される。
  1. 成人以後に気づいた爪の黒い線で先細り型や爪周囲皮膚への染み出しがあれば皮膚科で診察を受けることが推奨される。
  1. 皮膚科受診までに時間が空く場合は、定期的に自分で写真を撮っておくことが望ましい。

病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 色素細胞母斑は「ほくろ」と呼ばれており、出現時期(先天性、後天性)、臨床像、病理組織学的所見ごとに分類がある。臨床的には、通常のタイプのほかに、頸部や体幹に好発し、表面が平坦あるいは乳頭状で軟らかいウンナ母斑(図<図表>)、顔面に好発し、ドーム状に隆起し、中央に硬毛を伴うことの多いミーシャ母斑(図<図表>)、体幹などに好発し、外側が薄い色で内側が濃い色を呈するクラーク母斑(図<図表>)、小児や若い女性に好発し、組織学的に悪性黒色腫との鑑別が問題になることがあるスピッツ母斑(図<図表>)、真皮内の腫瘍細胞すべてがメラニン色素を持つために青色を呈する青色母斑(図<図表>)、爪に黒い線として認められる爪甲色素線条(図<図表>)などがある。
 
体幹の色素細胞母斑(ウンナ母斑)

子供の頃からあったほくろが盛り上がってきたというような病歴を持つことが多い。表面は平坦あるいは桑の実状の柔らかい、淡赤色から黒褐色の結節として認められる。

出典

著者提供
 
顔面の色素細胞母斑(ミーシャ母斑)

顔面に好発し、ドーム状に隆起する。中央に1-2本の硬毛を伴うことが多い。

出典

著者提供
 
体幹の色素細胞母斑(クラーク母斑)

体幹に、外側が淡く中心が濃い、比較的大型の斑として認められる。悪性黒色腫との鑑別が重要となるタイプである。

出典

著者提供
 
小児の腕の色素細胞母斑(スピッツ母斑)

小児の顔や若い女性の下肢に好発し、赤から黒い結節として認められる。病理組織検査で悪性黒色腫との鑑別が難しい症例がある。

出典

著者提供
 
青色母斑

真皮内にメラニンを持った細胞が集まっているため刺青のように青くみえる。硬く触れる。

出典

著者提供
 
爪甲色素線条

病歴:13歳男性。幼児期より爪に黒い線が入っていた。
診察:幅10mmの色素線条。
診断のためのテストとその結果:ダーモスコピーで線条内部の色調に一部不整なところがあるが、爪周囲皮膚への色素のしみ出し(Hutchinsonサイン:成人に認められれば悪性黒色腫の可能性が高くなる)はない。年齢も考慮して良性の病変と診断した。
治療:慎重に経過観察。
転帰:8歳より5年間経過を追っているが大きな変化はない。
コメント:小児の爪甲色素線条は幅広で色調も不整で、爪の変形や爪周囲への色素のしみ出しを認めることが少なくない。overdiagnosisに注意する。

出典

著者提供
 
  1. 生下時あるいは幼児期までに気づかれた病変は大型で形や色も多彩なことがある。
  1. 生下時より存在する場合は、成人換算で最大径20cm以上(新生児では頭部で9cm以上、体幹で6cm以上)あれば大型と診断する。先天性の大型の色素細胞母斑は中枢神経にも病変を伴っていたり、病変から悪性黒色腫が発生することがある。
 
先天性色素細胞母斑

病歴:1カ月女児。生下時より左大腿に黒色斑があった。
診察:10cm大の黒色斑を認める。
診断のためのテストとその結果: サイズが四肢で6cmを超えるため、成人換算で25cm超と予測される。大型色素細胞母斑と診断する。
治療:経過観察、あるいは時期をみて切除。
転帰:成長に比例して増大。

出典

著者提供
 
  1. 美容的な問題を除けば、診療上最も重要な点は悪性黒色腫との鑑別である。鑑別上最も有用なポイントは出現時期(生下時から幼児期まで、思春期まで、成人以後)と水平方向のサイズである。成人以後に発症した病変で、サイズが7mmを超えるようであれば皮膚科専門医を受診させる。(図<図表>
  1. ダーモスコピーによる検査は悪性黒色腫との鑑別に有用である。
  1. 爪に縦方向に走る黒い線は爪甲色素線条といい、爪の色素細胞母斑である。単指(趾)に色素線条を認め、徐々に幅が広がって基部が太く、先端が細い逆三角形型を呈する場合や爪周囲の皮膚にも色のしみ出しがあれば皮膚科専門医を受診させる。
  1. 参考文献[1][2][3]
問診・診察のポイント  
  1. まず、初めて気づいた年齢を聞く。

これより先の閲覧には個人契約のトライアルまたはお申込みが必要です。

最新のエビデンスに基づいた二次文献データベース「今日の臨床サポート」。
常時アップデートされており、最新のエビデンスを各分野のエキスパートが豊富な図表や処方・検査例を交えて分かりやすく解説。日常臨床で遭遇するほぼ全ての症状・疾患から薬剤・検査情報まで瞬時に検索可能です。

まずは15日間無料トライアル
本サイトの知的財産権は全てエルゼビアまたはコンテンツのライセンサーに帰属します。私的利用及び別途規定されている場合を除き、本サイトの利用はいかなる許諾を与えるものでもありません。 本サイト、そのコンテンツ、製品およびサービスのご利用は、お客様ご自身の責任において行ってください。本サイトの利用に基づくいかなる損害についても、エルゼビアは一切の責任及び賠償義務を負いません。 また、本サイトの利用を以て、本サイト利用者は、本サイトの利用に基づき第三者に生じるいかなる損害についても、エルゼビアを免責することに合意したことになります。  本サイトを利用される医学・医療提供者は、独自の臨床的判断を行使するべきです。本サイト利用者の判断においてリスクを正当なものとして受け入れる用意がない限り、コンテンツにおいて提案されている検査または処置がなされるべきではありません。 医学の急速な進歩に鑑み、エルゼビアは、本サイト利用者が診断方法および投与量について、独自に検証を行うことを推奨いたします。
薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※同効薬・小児・妊娠および授乳中の注意事項等は、海外の情報も掲載しており、日本の医療事情に適応しない場合があります。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適応の査定において保険適応及び保険適応外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適応の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
宇原 久 : 特に申告事項無し[2025年]
監修:戸倉新樹 : 講演料(サノフィ(株),日本イーライリリー(株),アッヴィ合同会社,マルホ(株))[2025年]

ページ上部に戻る

色素細胞母斑

戻る