今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 菅秀 独立行政法人国立病院機構 三重病院

監修: 渡辺博 帝京大学老人保健センター

著者校正/監修レビュー済:2023/02/22
参考ガイドライン:
  1. 日本神経学会日本神経治療学会日本神経感染症学会監修:細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014
  1. 日本感染症学会日本化学療法学会、JAID/JSC感染症治療ガイド・ガイドライン作成委員会:JAID/JSC 感染症治療ガイド2019
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. メンクアッドフィの薬価収載にともない、髄膜炎ワクチン(メナクトラ)に併記した。

概要・推奨   

  1. 新生児を除く小児では、抗菌薬の静脈内への投与に先立つ、或いはほぼ同時のステロイドの投与が推奨される推奨度2)。
  1. 新生児へのステロイド投与は勧められていない。また、無菌性髄膜炎への投与も勧められていない(推奨度3)
  1. 髄膜炎菌およびHibによる髄膜炎患者との接触者は抗菌薬の予防投与を受けることが勧められている(推奨度2)

病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
ポイント:
  1. 髄膜炎とは、クモ膜下腔の髄液内に細菌やウイルスなどが侵入して炎症を引き起こす疾患である。
  1. 細菌性、結核性、無菌性(ウイルス性、真菌性、寄生虫性)髄膜炎がある。
 
細菌性髄膜炎:
  1. 細菌性髄膜炎は上気道に定着した細菌が血行性に中枢神経系に到達する経路と、近接臓器から直接進入する経路とがある。
  1. 発熱、項部硬直、意識障害の3つの症状が知られているが、この3つが揃うことは少ない。低年齢になるほど特異的な症状に乏しくなる。基本的に1カ月未満の発熱には髄液検査は欠かせない。
  1. 3つのタイプが知られており、緩徐に進行し診断までに2~5日要するタイプ、1~2日とより急速に進行するタイプ、電撃的に進行し早期にショックを起こすタイプがある。
  1. 緊急性がきわめて高いので、診断後は可及的速やかに抗菌薬の投与を行う。
  1. 抗菌薬の投与前にステロイドの静脈内投与を行うことにより予後の改善が期待できる。
  1. 年齢により予想される起炎菌の種類が異なるため、年齢に応じた抗菌薬の選択が必要になる。
  1. 細菌性か無菌性かの鑑別は容易ではないこともあり、疑わしい場合は細菌性髄膜炎として治療を開始する。
  1. 菌血症を起こしていることが多く、血液培養の採取は必須である。
  1. 治療がうまくいっていても発熱が4~6日間持続することがある。
  1. 治癒後は感音性難聴などの後遺症に注意し、長期に発達の経過観察をする必要がある。
  1. 近年、肺炎球菌とインフルエンザ菌に対するワクチン接種が開始された結果、これらによる小児の髄膜炎および侵襲性感染症の罹患率の低下が認められている[1][2][3]
 
無菌性髄膜炎:
  1. ウイルス性髄膜炎は通常特異的な治療はなく予後も比較的良好だが、単純ヘルペスウイルス感染症では抗ウイルス薬による治療が必要である。
  1. ムンプスウイルスによる髄膜炎は難聴の後遺症に注意する。
  1. 結核性髄膜炎では進行が緩徐であり、結核の接触歴や、胸部所見の有無に注意する。
  1. 免疫不全状態では真菌性髄膜炎も考慮する。真菌性髄膜炎では髄膜刺激症状よりも中枢神経症状を呈しやすい。
問診・診察のポイント  
  1. 発熱、項部硬直、意識障害が3主徴である。

これより先の閲覧には個人契約のトライアルまたはお申込みが必要です。

最新のエビデンスに基づいた二次文献データベース「今日の臨床サポート」。
常時アップデートされており、最新のエビデンスを各分野のエキスパートが豊富な図表や処方・検査例を交えて分かりやすく解説。日常臨床で遭遇するほぼ全ての症状・疾患から薬剤・検査情報まで瞬時に検索可能です。

まずは15日間無料トライアル
本サイトの知的財産権は全てエルゼビアまたはコンテンツのライセンサーに帰属します。私的利用及び別途規定されている場合を除き、本サイトの利用はいかなる許諾を与えるものでもありません。 本サイト、そのコンテンツ、製品およびサービスのご利用は、お客様ご自身の責任において行ってください。本サイトの利用に基づくいかなる損害についても、エルゼビアは一切の責任及び賠償義務を負いません。 また、本サイトの利用を以て、本サイト利用者は、本サイトの利用に基づき第三者に生じるいかなる損害についても、エルゼビアを免責することに合意したことになります。  本サイトを利用される医学・医療提供者は、独自の臨床的判断を行使するべきです。本サイト利用者の判断においてリスクを正当なものとして受け入れる用意がない限り、コンテンツにおいて提案されている検査または処置がなされるべきではありません。 医学の急速な進歩に鑑み、エルゼビアは、本サイト利用者が診断方法および投与量について、独自に検証を行うことを推奨いたします。
薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※同効薬・小児・妊娠および授乳中の注意事項等は、海外の情報も掲載しており、日本の医療事情に適応しない場合があります。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適応の査定において保険適応及び保険適応外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適応の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
菅秀 : 特に申告事項無し[2025年]
監修:渡辺博 : 特に申告事項無し[2025年]

ページ上部に戻る

髄膜炎(小児科)

戻る