今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 渡辺員支 愛知医科大学 産婦人科学講座

監修: 金山尚裕 静岡医療科学専門大学校

著者校正/監修レビュー済:2024/06/26
参考ガイドライン:
  1. 日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会編:産婦人科診療ガイドライン-産科編2023
  1. 日本妊娠高血圧学会:妊娠高血圧症候群の診療指針2021 Best Practice Guide
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 産婦人科診療ガイドライン-産科編2023の発行に伴いレビューを行った。
  1. 低用量アスピリン療法における処方前に患者に十分説明し同意を得る必要がある内容として、「ただし、低用量アスピリンの胎児毒性についての明らかなエビデンスはなく、再発予防効果を認めることから、」から「したがって、低用量アスピリン使用に際しては、適応外使用であること等を」に変更した(日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会編. 産婦人科診療ガイドライン-産科編2023, p.181-184, 2023)。
  1. 降圧療法に関するわが国のガイドラインの記載について、「高血圧軽症域(140〜159mmHg/90〜109mmHg)を目標値としている」から「発症の時期や降圧開始時の血圧値に応じて個別に対応する必要があるとしている」に変更した(日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会編. 産婦人科診療ガイドライン-産科編2023, p.264-266, 2023)。

概要・推奨   

  1. 子癇発症例では、硫酸マグネシウムによる再発防止と画像による頭蓋内病変の評価が必要である(推奨度2)
  1. 分娩開始から分娩後24時間の間、妊娠高血圧症候群患者の子癇発症予防には硫酸マグネシウム投与が有効である(推奨度1)
  1. 経腟分娩時の高血圧に対しては、重症高血圧(≧160mmHg/110mmHg)が反復して認められた際には降圧療法を開始し、高血圧軽症域(140~159mmHg/90~109mmHg)まで降圧する。その際には急激で過度な降圧は避ける[1][2](推奨度2)
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 妊娠高血圧症候群は、かつて妊娠中毒症と称した高血圧・蛋白尿・浮腫を三主徴として診断された疾患から高血圧を呈さない病態を除外して2005年に妊娠高血圧症候群(Pregnancy induced hypertension: PIH)として再定義された。この分類では、妊娠前より存在する高血圧や妊娠20週以前に初めて認める高血圧は本症候群に含めていなかったが、2018年の定義改定により、高血圧発症が妊娠前後にかかわらず、「妊娠時に高血圧を認める場合、妊娠高血圧症候群とする」と変更され、疾患英文名称も2017年に“Hypertensive disorders of pregnancy: HDP”と変更になった[1][3]
  1. ①妊娠初期における胎盤形成過程の障害、②胎盤局所の循環不全による胎盤の生理活性物質産生機能の変調、③母体の血管内皮細胞機能障害、が順に生じる結果、全身の病態がもたらされる。
  1. 上記の基本病態と協働し、母体の肥満やインスリン抵抗性、あるいは高血圧症や腎疾患、自己免疫疾患、GDM、胞状奇胎などの絨毛が増殖する疾患などにみられる血管障害や液性因子の変化が発症に関与する。
  1. ①病型分類、②高血圧の程度、臓器障害、および子宮胎盤機能不全による重症度分類、③発症時期による亜分類が定められている[1][3]
  1. 子癇、HELLP症候群など様々な関連疾患が存在し、母体に重大な健康障害を残す可能性がある。
  1. 本症候群の英文名称は2017年にPregnancy induced hypertension(PIH)から Hypertensive disorders of pregnancy(HDP)に変更されている。
  1. 2018年より妊娠高血圧症候群は、①妊娠高血圧腎症: preeclampsia(PE)、②妊娠高血圧: gestational hypertension(GH)、③加重型妊娠高血圧腎症: superimposed preeclampsia(SPE)、④高血圧合併妊娠: chronic hypertension(CH)の4つに分類されることになった。
  1. 妊娠高血圧症候群の新定義・分類の主な変更点は以下の通りである。①旧分類では子癇が大項目の1項目となっていたが、母体の全身臓器障害の中の1病状(中枢神経障害)ととらえて、PE の中に含め単独項目から削除し、新たに高血圧合併妊娠を加えた4分類となった。②高血圧に蛋白尿を伴うものを妊娠高血圧腎症としていたが、蛋白尿を認めなくても高血圧に母体臓器障害、または、子宮胎盤機能不全を伴う場合もPEと診断することになった。③重症度分類は、蛋白尿の程度による重症度分類は行わず、高血圧が重度の場合、あるいは母体の臓器障害(肝機能障害、血小板減少、腎機能障害など)、子宮胎盤機能不全を認める場合に重症とし、軽症という用語はハイリスクでないと誤解される可能性があることから削除された。④発症時期による病型分類は、早発型と遅発型の境界を32週から34週に変更した。
  1. 児については、胎内死亡、胎児発育不全、胎児機能不全、新生児仮死、早産に伴う未熟、などのリスクがある。
  1. 妊娠高血圧に比べ妊娠高血圧腎症は急激な病状の悪化を認めることが多く、早発型は母児合併症頻度が高い。
 
妊娠高血圧症候群の名称・定義・分類(2018年改訂)

2017年日本産科婦人科学会は英文表記をhypertensive disorders in pregnancy: HDPと改めた。
 
参考文献:
第70回日本産婦人科学会学術講演会:妊娠高血圧症候群新定義・臨床分類(http://www.jsshp.jp/journal/pdf/20180625_teigi_kaiteian.pdf)

出典

山崎峰夫先生ご提供
 
妊娠高血圧症候群の母体に生じる可能性のある続発症・合併症

妊娠高血圧症候群患者の管理上、母体に発生しやすい続発症・合併症を十分に認識しておくことはきわめて重要である。

出典

山崎峰夫先生ご提供
 
問診・診察のポイント  
問診:
  1. 妊娠初期の段階ですべての妊婦について、妊娠高血圧症候群発症のリスク因子として知られている項目の有無をチェックする。

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※同効薬・小児・妊娠および授乳中の注意事項等は、海外の情報も掲載しており、日本の医療事情に適応しない場合があります。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適応の査定において保険適応及び保険適応外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適応の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
渡辺員支 : 未申告[2024年]
監修:金山尚裕 : 特に申告事項無し[2024年]

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