今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 古山将康 医療法人藤井会 石切生喜病院

監修: 小林裕明 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科生殖病態生理学

著者校正/監修レビュー済:2025/01/15
参考ガイドライン:
  1. 日本産科婦人科学会日本産婦人科医会編:産婦人科診療ガイドライン-婦人科外来編2023
  1. 日本産科婦人科学会日本産婦人科医会編:産婦人科診療ガイドライン-産科編2023
  1. 日本女性骨盤底医学会
  1. 日本骨盤臓器脱手術学会
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 『産婦人科診療ガイドライン-婦人科外来編2023』および『同-産科編2023』の発行に伴いレビューを行い、以下の2点の変更・追記の他に適宜修正を行った。
  1. 「性器脱」という表現を「骨盤臓器脱」に変更した。
  1. Tension free vaginal mesh(TVM)手術について追記した。
  1. 2007年から米国FDAからの度重なる勧告があり、欧米では禁止されている国が殆である(Skoczylas LC, et al. Int Urogynecol J. 2014 Apr;25(4):471-7)。
  1. 本邦では欧米で用いられたTVMキット製品を用いないハンドメイド手術として発展し、ポリプロピレン製からテフロン製のメッシュ(ORIHIME)へ切り替え、日本女性骨盤底医学会への登録制度によって安全に続けられている(Kawaguchi S, et al. Int J Urol. 2021 Mar;28(3):268-272)。
 

概要・推奨   

  1. 保存的治療から開始し、手術療法では人工物を用いない手術から選択する。
  1. 難治例や再発例ではメッシュを用いる手術を考慮する。
  1. 経腟メッシュ手術は有効であるが、術後の合併症のため欧米では施行されない。
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 骨盤臓器脱(pelvic organ prolapse: POP)は骨盤底臓器が腟壁を押す形で骨盤底から脱出する状態を指し、肛門から直腸壁が重積のような形で脱出する直腸脱を含む。
  1. 骨盤臓器脱の進展は骨盤底臓器の支持機構の破綻による。発症には素因(人種や遺伝的要素)、誘発因子(妊娠・分娩、手術既往)、助長因子(肥満、便秘、慢性の咳、職業など)、非代償性因子(加齢、エストロゲン低下、組織の萎縮)が関わる。
  1. 骨盤臓器脱は無症状の患者が多く医療機関の受診率が一定でないため正確な有病率は不明であるが、20~80歳の女性で有症状の骨盤臓器脱の頻度は約3%とされる[1]
  1. 米国の20~80歳までに骨盤臓器脱もしくは尿失禁で手術を受ける生涯リスクは11.1%であった。手術後の再手術は29.2%に施行されていた[2]
  1. Women’s Health Initiative Study(WHI研究)によると一般女性の診察結果では子宮脱が14%、膀胱瘤は34%、直腸瘤が19%の有病率であった。人種間の差としては黒人は骨盤臓器脱の発症頻度は少なく、ヒスパニックは子宮脱、アジア系は膀胱瘤の発症が高い[3]
  1. 20~59歳までの女性の約30%、50歳代の女性の約55%、出産経験者の女性の44%が何らかの骨盤臓器脱症状を有する[4]
  1. 子宮脱矯正リングペッサリーが保存的治療で用いられる。わが国のペッサリーのメーカーでは月約6,000個の受注があり、骨盤臓器脱患者の約50%にリングが使用されていると仮定すると、骨盤臓器脱のために受診する新規患者は毎年14万人程度いると推定される。
  1. 分娩は大きな誘発因子であるが、この調査では分娩回数とは相関していなかった。他の研究では1回の分娩で4倍、2回の分娩で8倍、3回では9倍、4回では10倍のリスクがあるとの報告もある[5]
問診・診察のポイント  
問診:
  1. 外陰部の下垂感を自覚した状況(場所、時間、視認か触知か、腹圧の有無)

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
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(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
古山将康 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:小林裕明 : 講演料(MSD(株),中外製薬(株),アストラゼネカ(株),(株)メディカロイド),研究費・助成金など(シスメックス(株),(株)メディカロイド),奨学(奨励)寄付など(中外製薬(株))[2024年]

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骨盤臓器脱

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