今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 武田卓 近畿大学 東洋医学研究所

監修: 小林裕明 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科生殖病態生理学

著者校正/監修レビュー済:2025/01/29
参考ガイドライン:
  1. 日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会:産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編2023
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 「産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編 2023」の発行に伴いレビューを行った。
  1. 更年期障害に対する加味逍遥散を用いたプラセボ対照二重盲検比較試験(Takamatsu K, et al. Evid Based Complement Alternat Med. 2021 Feb 26;2021:8856149)が解説に追加されたので、その結果を追加した。

概要・推奨   

  1. 加味逍遥散はHRT無効症例のうち、特に精神症状を改善する(推奨度2)
  1. 加味逍遙散は更年期障害の興奮・イライラ症状をプラセボと比較して有意に改善した(推奨度2)
  1. 当帰芍薬散、加味逍遥散、桂枝茯苓丸は更年期の睡眠障害を改善し、特に加味逍遥散が改善効果に優れる(推奨度2)
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まとめ 

まとめ  
ポイント:
  1. 産婦人科領域では、漢方療法はさまざまな疾患に対して用いられてきた。
  1. 婦人にみられる特有の生理現象に関連して起こる精神神経症状を基調とするさまざまな症状を、漢方の領域では「血の道症」と呼ぶ。
  1. 漢方治療は、本来は診断の結果でその患者のいわゆる「証」を決定し投薬を行う必要があるが、更年期障害に対しては女性 3 大漢方と呼ばれる「当帰芍薬散」「加味逍遥散」「桂枝茯苓丸」の3剤を中心に処方することにより、更年期症状治療のかなりの部分をカバーできると考えられている。また、女性のいわゆる不定愁訴とされる更年期障害・月経前症候群(PMS)、および月経困難症に対してもこれらの薬剤はよく用いられている。
  1. 西洋医学的な診断後に漢方治療の適否を判断する。
  1. なお、加味逍遥散が最も精神安定作用に優れ、当帰芍薬散は浮腫改善効果、桂枝茯苓丸は血流改善効果に優れる。
  1. 漢方製剤ならではの薬物有害事象(甘草による偽アルドステロン症等)に注意を払う。
 
当帰芍薬散・加味逍遥散・桂枝茯苓丸の使い分け:
  1. 更年期障害、月経前症候群、月経困難症は漢方治療における伝統医学的病態としては、「お血」(末梢循環不全)が原因として考えられており、「お血」改善薬のこれら3剤が経験的に臨床現場で汎用されている[1]
  1. 本来の漢方治療は伝統医学的診断に基づいて「証」を決定し投薬を行うことになるが、これらの疾患に対しては病名投与により、かなりの症状をカバーできると考えられている。
  1. 当帰芍薬散は利水作用にすぐれており、冷え症・貧血傾向・浮腫を目安に投薬する。
  1. 加味逍遥散は精神安定作用にすぐれており、疲労しやすい、不眠、イライラ感を目安に投薬する[2]
  1. 桂枝茯苓丸は「お血」改善作用にすぐれており、のぼせて赤ら顔で下腹部の抵抗や圧痛を目安に投薬する。
 
  1. 加味逍遥散はHRT無効症例のうち、特に精神症状を改善する。(推奨度2、O)
  1. 更年期障害のHRT無効例に対する加味逍遥散の有効性を後方視的に検討した。4週間の投与での検討では、73.3%が有効であった。加味逍遥散有効例の投与前の更年期症状を無効例と比較すると、不眠・うつ症状・めまいの各症状が有意に高かった[2]
  1. 後方視的検討であるが、漢方治療(特に加味逍遥散)の精神症状改善効果を示唆するデータである。
  1. 加味逍遥散は更年期障害の興奮とイライラ症状をプラセボと比較して有意に改善した。(推奨度2、R)
  1. 更年期障害に対する加味逍遥散の有効性をプラセボ対照二重盲検比較試験で検討した。12週間の投与での検討では、主要評価項目である興奮・イライラ症状において投与前後で有意な改善効果を認めたが、プラセボとの有意な差を認めなかった。ポストホック解析で、興奮・イライラ症状の改善度を「改善」「やや改善」「不変」の3群に分けてプラセボと比較したところ、加味逍遙散投与群で有意な改善効果を認めた。
  1. ポストホック解析となるが、加味逍遙散の精神症状(興奮・イライラ症状)改善効果を示唆するデータである[3]

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
武田卓 : 講演料((株)ツムラ)[2025年]
監修:小林裕明 : 講演料(MSD(株),アストラゼネカ(株),サノフィ(株)),研究費・助成金など(日本ベクトン・ディッキンソン(株)),奨学(奨励)寄付など(中外製薬(株),(株)新日本科学)[2025年]

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女性の不定愁訴に対する漢方療法

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