今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 柳清 松脇クリニック品川

監修: 森山寛1) 東京慈恵会医科大学附属病院

監修: 小島博己2) 東京慈恵会医科大学 耳鼻咽喉科

著者校正/監修レビュー済:2022/06/08
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 内視鏡下鼻内手術の術中写真を更新
  1. 外側にある上顎洞嚢胞に対してDALMA法(Direct approach to the anterior and lateral part of the maxillary sinus with an endoscope)を追加

概要・推奨   

病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 副鼻腔嚢胞とは、副鼻腔に嚢胞が生じ、骨壁を圧排し、眼球変位、複視、頬部腫脹などを来す状態である。発生の機序は粘膜の肥厚や粘液腺の拡張など粘膜の慢性炎症、手術を含む外傷などにより副鼻腔が固有鼻腔との交通路の閉塞により生ずる。
  1. 副鼻腔嚢胞は原発性と続発性に大別される。
  1. 原発性嚢胞は原因となる明らかな既往症を持たないものである。
  1. 続発性嚢胞は誘因となる手術や外傷の既往があり、それに続発したと思われるものを指す。
  1. 嚢胞は貯留液の性状により、細菌感染を伴わない粘液嚢胞(mucocele)と細菌感染を伴う膿嚢胞(pyocele)に分けられる。
  1. 前頭洞、篩骨洞、上顎洞、蝶形骨洞の各副鼻腔に発生する。さらに各副鼻腔の境界部に発生する複合タイプや同時に複数の副鼻腔に発生するタイプ、そして両側性に発生するものもある。
  1. 発生頻度は欧米では前頭洞に最も多く(60~65%)、篩骨洞(20~25%)、上顎洞(10%)、蝶形骨洞(1~2%)の順になる。
  1. 日本では術後性上顎洞嚢胞の発生頻度が高いため、上顎洞が最も多く(78%)、次に前頭洞(10%)、篩骨洞(7%)、蝶形骨洞(5%)の順になる[1]
  1. 後部副鼻腔(後篩骨洞や蝶形骨洞)に発生すると視力障害を来すので、その場合、緊急手術が必要になる。
  1. いわゆる副鼻腔嚢胞とは別に副鼻腔の粘膜下に粘液が貯留する粘膜嚢胞がある。
 
  1. 副鼻腔嚢胞と洞内粘膜嚢胞とは病態が異なる(推奨度1)(参考文献:[2][3][4]
  1. 洞内粘膜嚢胞(mucosal retention cyst)は通常上顎洞の底にみられる。
  1. 上顎洞の粘液腺の腺管が閉塞して生じた貯留嚢胞と考えられている。
  1. 症状がなければ治療の必要はないが、大きくなると頬部痛や眼痛、蝶形骨洞に発生すれば頭痛などの症状が出ることがあるので、その場合は手術の対象となる。
  1. 内視鏡と手術器具の改良で低侵襲手術が可能になった。
  1. 追記:この疾患は脳ドックなどの健診で偶然発見されることも多く、脳外科や他科からの紹介で受診する例がときどきある。
 
副鼻腔嚢胞と洞内粘膜嚢胞とは病態が異なる。

a:前額断CTで左上顎洞内に粘膜嚢胞を認める。
b:粘膜嚢胞の上顎洞内視鏡所見
c:蝶形骨洞のMRI前額断所見。右蝶形骨洞内に水分濃度の嚢胞陰影を認める。
d:蝶形骨洞のMRI水平断所見。右蝶形骨洞内に水分濃度の嚢胞陰影を認める。

出典

著者提供
問診・診察のポイント  
問診:
  1. 鼻閉、鼻汁、嗅覚障害の有無

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
柳清 : 未申告[2024年]
監修:森山寛 : 未申告[2024年]
監修:小島博己 : 特に申告事項無し[2024年]

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副鼻腔嚢胞

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