今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 吉原俊雄 東京工科大学 医療保健学部 / 東京医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科

監修: 森山寛1) 東京慈恵会医科大学附属病院

監修: 小島博己2) 東京慈恵会医科大学 耳鼻咽喉科

著者校正/監修レビュー済:2022/10/12
参考ガイドライン:
  1. 日本頭頸部癌学会:頭頸部癌診療ガイドライン 第4版
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 唾液腺癌の診断に際して分子病理診断と再発・転移唾液腺癌への薬物療法の意義と課題について付記した。

概要・推奨   

  1. 術前の細胞診、組織診、術中迅速病理診断は有用であるが、適応は慎重に判断する必要がある(推奨度2 RJ)
  1. 耳下腺癌で術前に顔面神経麻痺がない場合、術中所見により必ずしも神経合併切除を施行する必要はない(推奨度2 RJ)

病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 唾液腺腫瘍は大唾液腺、小唾液腺のいずれにも発生し、腫瘍の病理分類は多彩である。以下その特徴を記す。
  1. 発生部位は耳下腺、顎下腺、舌下腺の順に多く、口腔内の小唾液腺にも生じる。
  1. 上皮性腫瘍と非上皮性腫瘍が存在する。
  1. 急速なサイズの増大、疼痛や顔面神経麻痺を伴う場合、悪性腫瘍を疑う(推奨度2)
 
耳下腺

左側耳下腺部に外側へ突出する腫脹を認める。顔面神経麻痺は認めない。

出典

著者提供
 
顎下腺

右顎下腺癌症例で、顎下部に硬い腫瘤として触知される。

出典

著者提供
 
  1. 頬部腫瘤を主訴とすることが多く、皮膚・皮下腫瘍やアテロームと誤診されやすい。
  1. 良性と悪性が存在するが耳下腺、顎下腺、舌下腺の順に悪性腫瘍の発生頻度が高くなり、耳下腺腫瘍は良性腫瘍が多いが顎下腺腫瘍は30~40%ほどが悪性で、舌下腺の多くは腺様嚢胞癌である。
  1. 2005年のWHO病理分類では良性10種類、悪性24種類に分類されていたが、2017年に第4版が発刊され、特に癌の組織型によって生物学的態度が規程された[1]。唾液腺腫瘍は良性腫瘍と悪性腫瘍、良性腫瘍の悪性転化があり、鑑別として非腫瘍性唾液腺腫瘤が存在する。
  1. 多彩な病理組織像を呈するのが特徴で、篩状、管状、乳頭状、充実性、索状、嚢胞状、濾胞状、束状、棚状などの構造を示し、病理診断への足掛かりとなる。
  1. 唾液腺悪性腫瘍は低悪性、中悪性、高悪性の腫瘍が存在し、その進展、転移様式、予後は各々異なる。
  1. 良性腫瘍は多形腺腫が最も多く、女性に多くみられ易再発性である。長期経過の後に5~10%は癌化(多形腺腫由来癌)するとの報告がある[2]。耳下腺では多形腺腫が70%前後で最も多く、次いでワルチン腫瘍が高い頻度で発生する[3]
問診・診察のポイント  
問診:
  1. 腫脹、腫大の出現時期、その経緯

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オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
吉原俊雄 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:森山寛 : 未申告[2024年]
監修:小島博己 : 特に申告事項無し[2024年]

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