今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 成澤弘子 新潟手の外科研究所

監修: 竹下克志 自治医科大学整形外科

著者校正/監修レビュー済:2022/09/28
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い加筆修正を行った

概要・推奨   

  1. 損傷部位により推奨される診断方法、治療方法がある。
  1. 新鮮開放性損傷による鋭的伸筋腱断裂は感染のリスクがなければ原則として一次的に縫合する。
  1. 陳旧例は縫合困難なことが多いので再建が必要になる。
アカウントをお持ちの方はログイン
  1. 閲覧にはご契約が必要となります。閲覧にはご契約が

病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 伸筋腱は保護する軟部組織が少なく開放損傷を受けやすいため、屈筋腱損傷より頻度が高い損傷である。
 
伸筋腱開放損傷

犬咬傷による伸筋腱の引き抜き損傷

出典

著者提供
 
  1. 閉鎖損傷としては突き指によるDIP関節部のつち指、PIP関節部の中央索損傷、MP関節上で総指伸筋腱が脱臼するboxer’s knuckleなど関節部の損傷が多い。
 
突き指によるつち指変形:伸筋腱閉鎖損傷

小指DIPの自動伸展ができない。PIPは軽度過伸展となっている。

出典

著者提供
 
ボタン穴変形:中央索損傷

中央索がPIPのやや近位で断裂している。

出典

著者提供
 
MP関節上で総指伸筋腱が脱臼するboxer’s knuckle:伸筋腱脱臼

MP関節上で総指伸筋腱が脱臼(中指)

出典

著者提供
 
  1. 続発症としての伸筋腱断裂の原因には転位の少ない橈骨遠位端骨折による長母指伸筋腱(EPL)断裂、関節リウマチによる手関節変形、進行したKienbӧck病、変形性手関節症による遠位橈尺関節(DRUJ)変形などによる総指伸筋腱断裂がある。
 
長母指伸筋腱(EPL)断裂:伸筋腱閉鎖損傷

転位の少ない橈骨遠位端骨折によるEPL断裂。母指IPが伸展できない。

出典

著者提供
 
伸筋腱閉鎖損傷

関節リウマチによるEDC断裂
 a. 小指MP関節伸展ができない。
 b. 中指、環指、小指MP関節が伸展できない。

出典

著者提供
 
進行したKienbӧck病:伸筋腱閉鎖損傷

Kienbӧck病によるEDC断裂、中指MP関節が伸展できない。

出典

著者提供
 
  1. 陳旧例では損傷部位により特徴的な手指伸展障害を呈する.終末腱損傷ではスワンネック変形、中央索損傷ではボタン穴変形となる。
 
mallet fingerによるスワンネック変形の発生機序

スワンネック変形:終末腱が断裂すると、側索が背側に移動してPIP関節が過伸展変形になる。
①終止伸筋の断裂により側索が近位へ退縮。②中央索のPIP関節への伸展力が増加する。③PIP関節掌側板の弛緩とともにPIP関節が過伸展する。

出典

編集部にて作図
 
中央索断裂

ボタン穴変形
a:X線写真
b:典型的なボタン穴変形

出典

MDConsultの図
 
断裂部位による指変形

終末腱断裂ではマレット指、中央索損傷ではボタン穴変形、MP関節上EDC損傷では下垂指となる。

出典

Courtney M. Townsend, Jr., JR,MD: Sabiston Textbook of Surgery: Elsevier,2021:Fig. 70.28
 
  1. 伸筋腱損傷の診断・治療に必要な解剖と損傷部位のZone分類を理解しておく必要がある。
  1. 伸筋腱の解剖:
  1. 手関節部より遠位では線維性腱鞘がない.このため腱と腱鞘の癒着は生じにくい。
  1. 手関節部には伸筋支帯がある.癒着防止のため腱縫合部が伸筋支帯にかからないようにする必要がある。
  1. 伸筋腱はMP関節より遠位の指背腱膜部と近位の固有腱部に区分される。
  1. 指背腱膜部は薄く、指の背側と側面を包む立体的な構造となっている。
 
伸筋腱の解剖

指伸展機構

出典

日本手外科学会編:手外科用語集改定第4版、p236、2012
 
伸筋腱の解剖

遠位の指背腱膜部とMPより近位の固有腱部に大別される。

出典

編集部にて作図
 
  1. Zone分類:
  1. 関節上が奇数となっている.母指は別にT-を付けて分類している。
 
Zone分類

伸筋腱断裂の国際区分。関節上が奇数となっている。

出典

編集部にて作図
問診・診察のポイント  
問診:
  1. 外傷性の損傷では受傷時期、受傷原因を確認する(MP関節部の開放創は人を殴って受傷することが多いが受傷原因を隠していることがある)。

これより先の閲覧には個人契約のトライアルまたはお申込みが必要です。

最新のエビデンスに基づいた二次文献データベース「今日の臨床サポート」。
常時アップデートされており、最新のエビデンスを各分野のエキスパートが豊富な図表や処方・検査例を交えて分かりやすく解説。日常臨床で遭遇するほぼ全ての症状・疾患から薬剤・検査情報まで瞬時に検索可能です。

まずは15日間無料トライアル
本サイトの知的財産権は全てエルゼビアまたはコンテンツのライセンサーに帰属します。私的利用及び別途規定されている場合を除き、本サイトの利用はいかなる許諾を与えるものでもありません。 本サイト、そのコンテンツ、製品およびサービスのご利用は、お客様ご自身の責任において行ってください。本サイトの利用に基づくいかなる損害についても、エルゼビアは一切の責任及び賠償義務を負いません。 また、本サイトの利用を以て、本サイト利用者は、本サイトの利用に基づき第三者に生じるいかなる損害についても、エルゼビアを免責することに合意したことになります。  本サイトを利用される医学・医療提供者は、独自の臨床的判断を行使するべきです。本サイト利用者の判断においてリスクを正当なものとして受け入れる用意がない限り、コンテンツにおいて提案されている検査または処置がなされるべきではありません。 医学の急速な進歩に鑑み、エルゼビアは、本サイト利用者が診断方法および投与量について、独自に検証を行うことを推奨いたします。

文献 

S F Garberman, E Diao, C A Peimer
Mallet finger: results of early versus delayed closed treatment.
J Hand Surg Am. 1994 Sep;19(5):850-2. doi: 10.1016/0363-5023(94)90200-3.
Abstract/Text The efficacy of continuous splinting was retrospectively compared in two populations of 40 patients with soft tissue and bony mallet finger whose treatment was initiated within 2 weeks after injury (early) or more than 4 weeks after trauma (delayed). Splint treatment was successful in restoring active extension (with no more than 10 degrees extensor lag) in 17 of 21 patients in the early group and 15 of 19 patients in the delayed group. Neither the presence or absence of dorsal lip fracture less than one third of the articular surface of the distal phalanx nor the type of splint used affected the final outcome. Splinting was as effective in the delayed treatment population as it was in the early treatment population.

PMID 7806817
森谷浩治,吉津孝衛,牧 裕,坪川直人,成澤弘子:長母指伸筋腱皮下断裂に対し局所麻酔下に施行した固有示指伸筋腱移行から得た新知見.日手会誌 2010;26:275-278..
Merritt WH: Relative motion splint: active motion after extensor tendon injury and repair. J Hand Surg Am. 2014 ; 39:1187-94.
薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※同効薬・小児・妊娠および授乳中の注意事項等は、海外の情報も掲載しており、日本の医療事情に適応しない場合があります。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適応の査定において保険適応及び保険適応外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適応の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
成澤弘子 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:竹下克志 : 講演料(第一三共(株))[2025年]

ページ上部に戻る

伸筋腱損傷

戻る