今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 山崎宏 社会医療法人財団 慈泉会 相澤病院 整形外科センター

監修: 竹下克志 自治医科大学整形外科

著者校正/監修レビュー済:2022/03/16
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、加筆修正を行った。

概要・推奨   

病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
病態:
  1. 骨間靭帯・関節包・腱鞘から発生する嚢腫様腫瘤である。
  1. 内部には無色透明のゼリー状の液体を含んでいる。
  1. 病因は不明であるが、関節包や靭帯の反復する伸張や軽微な損傷に反応して、滑膜細胞または間葉系細胞から発生するといわれている。線維芽細胞からはヒアルロン酸が産生され、その結果ゼリー状のムチンが貯留するといわれている[1]
  1. 発生機序として、ガングリオン茎部に関節腔からガングリオン内部へ交通があり、一方向弁が存在するため関節液が内部に流入することが原因とされている[2][3]
 
頻度:
  1. 手の腫瘤としては、最も頻度が高い(65%)[4][5]
  1. 20〜40歳台に発症することが多い[6]
  1. 女性に多い(73%)[6]
 
症状:
  1. 患者の主訴は「整容が気になる:38%」「悪性腫瘍が心配:28%」「痛み: 26%」「しびれ・機能障害:8%」[7] であり、機能障害よりも整容の改善面や悪性疾患への心配のため受診することが多い。
  1. ガングリオンによって末梢神経が絞扼されると、しびれや運動障害などの神経症状をひき起こす。肘では肘部管症候群[8]や後骨間神経麻痺[9]、手部のGuyon管(尺骨神経管)では尺骨神経麻痺[10]を生じる。<図表> <図表>
 
好発部位:
  1. 手関節の背側中央に発生するものがほとんどで(約70%)(<図表><図表>)、次いで手関節の掌橈側(約20%)(<図表> )である。その他には指屈筋腱腱鞘、Guyon 管(尺骨神経管)部や手掌内に散見される(<図表> <図表>)。
  1. 指屈筋腱腱鞘近位部のガングリオン(Sesamoid ganglion)は基節骨掌側(A 1 輪状靱帯)に発生し、米粒大、小豆大で圧痛を伴うことが多い。
  1. DIP 関節の背側にできるガングリオンは粘液嚢腫(Mucous cyst)と呼ばれ、しばしばDIP関節の変形性関節症変化を伴う。DIP 関節橈側又は尺側に偏位することが多い。爪母を圧迫し爪の変形を引き起こすことがある。ガングリオンが破裂して化膿性関節炎を生じることがある。<図表>
  1. 手根骨背側の小さなガングリオンはオカルトガングリオン(occult ganglion)と呼ばれ、持続する手関節痛の原因となることがある。
  1. ガングリオンは手の他にも足背、足底、膝[11] 、肩、脊椎、に発生し神経症状をきたすことがある。
 
手関節背側のガングリオン

a:手関節背側に腫瘤を認める。
b:MRI:T2 強調画像、矢状断。高信号を示す多房性の嚢胞を認める。
 
(参考文献 藤哲:最新整形外科学体系 15-B 、手関節・手指II 15-B. 三浪明男,越智隆弘編. 中山書店,2007;201-205)

出典

藤哲先生ご提供
 
手関節部掌側のガングリオン

a、b:橈骨動脈に接していることが多い。
 
(参考文献 藤哲:最新整形外科学体系 15-B 、手関節・手指II 15-B. 三浪明男,越智隆弘編. 中山書店,2007;201-205)

出典

藤哲先生ご提供
 
尺骨神経深枝麻痺を呈した手掌内ガングリオン

a:母指球皮線に沿った皮切。
b,c:腫瘤は尺骨神経深枝を圧迫していた。
d:摘出したガングリオン。
 
(参考文献 藤哲, 成田 俊介:手・指ガングリオン, 整形外科の小手術, OS NOW , 1995; 19, 141-147,)

出典

藤哲先生ご提供
 
Guyon管に発生し尺骨神経麻痺を呈した例

a:尺骨神経深枝(運動支配神経)を圧迫していた。
b:同図。
c:摘出したガングリオン。
 
(参考文献 a,c: 藤 哲:最新整形外科学体系 15-B 手関節・手指II 15-B: 三浪明男、越智隆弘編.中山書店, 2007; 201-205)

出典

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基節骨掌側のガングリオン

a:近位指皮線部のzig-zag 皮切にて展開し、橈側・尺側の神経血管束を損傷しないように注意する。
b:腫瘤に屈筋腱A1靱帯性腱鞘の一部を含めて摘出する。

出典

藤哲先生ご提供
 
粘液嚢腫

a:外観および手術所見
b:腫瘤の茎部をDIP 関節包を含めて摘出する。骨棘が存在する場合は切除する。
c:摘出標本。
 
(参考文献 a,c:藤 哲, 成田 俊介:手・指ガングリオン, 整形外科の小手術, OS NOW , 1995; 19, 141-147)

出典

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問診・診察のポイント  
問診:
  1. 腫瘤の消失・増大を繰り返しているか[12]
  1. 発症時期。

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
山崎宏 : 特に申告事項無し[2025年]
監修:竹下克志 : 講演料(第一三共(株))[2025年]

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手の腫瘤、ガングリオン

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