今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 豊田宏光 大阪公立大学 整形外科学

著者: 中村博亮 大阪公立大学 整形外科学

監修: 酒井昭典 産業医科大学 整形外科学教室

著者校正済:2025/06/10
現在監修レビュー中
参考ガイドライン:
  1. 日本整形外科学会:骨粗鬆症性椎体骨折診療マニュアル
  1. 北米脊椎外科学会(NASS):Diagnosis and Treatment of Adults with Osteoporotic Vertebral Compression Fractures
  1. 7学会合同 椎体骨折評価委員会(日本骨形態計測学会日本骨代謝学会日本骨粗鬆症学会日本医学放射線学会日本整形外科学会日本脊椎脊髄病学会日本骨折治療学会):椎体骨折診療ガイド
  1. 米国整形外科学会(AAOS):Treatment of Symptomatic Osteoporotic Spinal Compression Fractures
  1. 英国骨粗鬆症ガイドライングループ(NOGG):UK clinical guideline for the prevention and treatment of osteoporosis
  1. 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会(日本骨粗鬆症学会日本骨代謝学会骨粗鬆症財団):骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2015年版
  1. ドイツ整形災害外科学会:Nonsurgical and Surgical Management of Osteoporotic Vertebral Body Fractures: Recommendations of the Spine Section of the German Society for Orthopaedics and Trauma (DGOU)
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、以下について加筆・修正した。
  1. 海外からいくつかのガイドラインが作成されたため、わが国の医療事情も考慮して推奨度を変更し、加筆、修正を行った。
  1. わが国における最新の疫学情報、自然経過に関する情報、ガイドラインやシステマティックレビューから得られた薬物療法や椎体形成術に関する情報を追記した。
  1. 新鮮椎体骨折と陳旧性椎体骨折のMRI画像の違いについて画像例を用いて記載した。

概要・推奨   

  1. 高齢者の腰背部痛、特に体動に伴う疼痛を診た場合、骨粗鬆症性椎体骨折の可能性を考慮することが推奨される(推奨度1)
  1. 骨粗鬆症性椎体骨折が疑われた場合、体位を変えた2種類の単純X線側面像を撮影し比較して骨折椎体に異常可動性が存在するかを確認することが推奨される(推奨度1)
  1. 治療方針(特に手術適応)の決定、新規椎体骨折か陳旧性椎体骨折かの鑑別、病的骨折との鑑別に、MRI検査を用いることが推奨される(推奨度1)
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 骨粗鬆症とは、骨強度が低下することにより骨折リスクが高くなる骨格の疾患と定義されている。立っている高さからの転倒か、それ以下の軽微な外力で生じた骨折を脆弱性骨折と呼ぶ。
  1. 骨粗鬆症でみられる脆弱性骨折は、椎体、大腿骨近位部、前腕骨遠位端、上腕骨近位部、肋骨、骨盤に好発する。椎体骨折が最も頻度が高い。
  1. 骨粗鬆症性椎体骨折は既存骨折と新規骨折とに大きく分類される。既存骨折はある時点のX線撮影時にすでに発生していた骨折を示す。一方、新規骨折はある時点の観察では正常であった椎体が、次の時点で新たに骨折と判定されたものや、ある時点と比較し次の時点において椎体変形が進行した椎体骨折を示す。
  1. 椎体骨折では通常、疼痛を伴うが、疼痛を伴わずX線撮影で確認される例もある。このため、疼痛を伴う場合を臨床骨折、疼痛を伴わない場合を形態骨折と区別している。臨床骨折は全椎体骨折の1/3にすぎないとの報告がある[1]
  1. 骨折後3~6カ月でおおむね骨癒合が得られるとされているが、骨癒合が遅れたり、骨癒合が得られない場合も存在する。受傷後1年経過しても骨癒合が得られなかった場合を偽関節と呼び、平均速度で骨癒合が進んでいない状態を遷延治癒、骨癒合不全と呼ぶ[2]
 
椎体骨折治癒過程における呼称

出典

日本整形外科学会骨粗鬆症委員会 骨粗鬆症性椎体骨折診療マニュアルワーキンググループ:骨粗鬆症性椎体骨折診療マニュアル.日本整形外科学会雑誌 2020:94(10):882-906
 
  1. わが国における骨粗鬆症性椎体骨折(形態骨折)の有病率は地域住民コホート研究によると21.8%、椎体高の低下が25%以下の軽度の骨折が13.9%、40%以上低下した高度の骨折が7.9%と報告されている[3]。また、引き続き行われた縦断研究の結果をもとに算出された椎体骨折(形態骨折)の発生率は5.9%/年と報告されている[4]。一方で、実際に医療機関を受診した椎体骨折(臨床骨折)の発生率は、10万人あたり60~69歳男性で200人、女性で300人、70~74歳男性で500人、女性で1,100人、75~79歳男性で800人、女性で2,200人、80~84歳男性で1,200人、女性で3,200人と報告されている[5]
  1. 海外のデータであるが、腰痛を主訴に外来受診した患者における椎体骨折の割合は約4%(悪性腫瘍0.7%、感染0.01%)と報告されている[6]
  1. 骨折発症から数カ月にあたる急性期の症状は、起居動作で増悪する腰背部の激痛であり、臥床にて消失する特徴がある。この症状は骨折椎体が骨癒合しておらず動くために生じる。骨折椎体の可動性は疼痛と関連する[7]
  1. 脊椎の内部には脊柱管と呼ばれる脊髄や馬尾(神経)の通り道があり、椎体後壁損傷や異常可動性により内部の神経に刺激が加わると、腰背部痛のみならず、臀部・下肢の疼痛やしびれ、筋力低下、膀胱直腸障害が生じる。
  1. 骨癒合が得られ既存骨折となっても慢性的な腰背部痛などの症状を訴える場合がある。特に、椎体骨折後に後弯変形が惹起されると、慢性的な腰痛以外(疲労性腰痛)姿勢異常以外に、歩行機能障害[8]、易転倒性[9]、胃食道逆流症や食道裂孔ヘルニア[10]などが引き起こされることがある。
問診・診察のポイント  
問診:
  1. 発症時期、発症の契機となった誘因を確認する[11](推奨度1)
  1. 起居動作や体動時に増悪する腰背部痛の激痛であり、臥床により軽減するかどうかを確認する[11](推奨度1)
  1. 既往歴を確認する。(推奨度1)
  1. 月経歴、骨折歴、続発性骨粗鬆症の原因となる疾患の有無を聴取する。続発性骨粗鬆症の原因としては、内分泌性(副甲状腺機能亢進症、クッシング症候群、甲状腺機能亢進症など)、栄養性(胃切除後、神経性食思不振症、吸収不良症候群など)、薬物性(ステロイド、抗けいれん薬、ワーファリン、メトトレキサート、ヘパリンなど)、その他(糖尿病、関節リウマチ、アルコール多飲、慢性腎臓病、肺疾患など)。

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
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(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
豊田宏光 : 講演料(第一三共(株))[2025年]
中村博亮 : 奨学(奨励)寄付など(東住吉森本病院,西宮渡辺病院,白庭病院,東生駒病院,高遼会病院,石切生喜病院)[2025年]
監修:酒井昭典 : 講演料(旭化成ファーマ(株),帝人ヘルスケア(株))[2025年]

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骨粗鬆症性脊椎椎体骨折

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