今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 竹島茂人 沖縄県立八重山病院 救急科

監修: 林寛之 福井大学医学部附属病院

著者校正/監修レビュー済:2022/03/16
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、新しい知見を追記したが、ベースとなる情報には大きな変化はない。

概要・推奨   

患者対応時の注意点
  1. 現場での対応
  1. 現場に居合わせた際は、いち早く現場から離れる。屋外であれば風上で高い場所に逃れるように配慮する(剤は、空気よりも重いため)。
  1. 病院前で刺激性のある無力化剤に汚染された可能性のある患者へ対応する場合は、患者接触前に標準的予防策を講じて医療従事者が汚染しないように注意する。
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  1. 事前情報から刺激性のある無力化剤が使用された恐れがあるときは、標準的予防策を講じる。特に、ゴーグルとマスク、手袋は必須とし医療従事者がコンタミネーションしない様に注意する[1]
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 「刺激性のある無力化剤」は、催涙剤、催涙ガス、嘔吐剤、刺激剤などと呼ばれ、元来 暴徒鎮圧もしくは軍事利用目的で開発されたものであり、基本的に効果は一時的であり致死的になることはない[2]
  1. 剤の曝露から数秒以内に、粘膜や皮膚が強く刺激されて流涙、流涎や鼻汁流出するほか、咳嗽、呼吸苦そして皮膚の灼熱感や嘔気などが出現し、行動不能状態に人を陥らせる。
 
  1. OC(トウガラシスプレー)使用により、重篤な呼吸器症状を呈する場合があり注意が必要である(推奨度 2)。(参考文献:[3][4]
  1. OCスプレーにより剤に曝露された患者が気道狭窄により呼吸不全に陥り、最終的には喉頭浮腫による窒息が原因で死亡した。
  1. OC曝露により小児が肺水腫となったが、ECMOにより救命された。
 
  1. 化学刺激剤CSに曝露して数時間~数日後に呼吸器症状が出現することがあり、注意を要する(推奨度 2)。(参考文献:[5][6]
  1. 米軍で防護マスクの装着訓練時にCSを使用。36~84時間後に激しいトレーニングを施行した際に呼吸器症状が出現。5名に血痰が出現し、4名は低酸素血症で集中治療が必要となった。
  1. CS曝露して数時間後に全身麻酔下に手術を施行し、術後に気管チューブを抜去すると同時に激しい喉頭けいれんが出現した。
 
  1. トウガラシスプレー(OC)による曝露では、入院治療が必要となることは通常はない(推奨度 1)。(参考文献:[7]
  1. 警官が暴徒集団にOCスプレーを使用。曝露した暴徒のうち約10%(81名)が医療機関を訪れた。角膜損傷患者7名、呼吸器症状を呈する患者6名を認めたが、入院治療を要した患者はいなかった。
 
  1. スプレーなどの発射力による外傷にも留意が必要である(推奨度 2)。(参考文献:[8][9]
  1. 警官が催涙ガス缶を落として拾おうとした際に暴発して外傷性白内障を受傷した。
  1. 催涙ガス発射装置の発射口の至近距離に頭部があり、発射力により頭部に致死的損傷を負った。
 
  1. これらは、有効量と致死量の間に広い安全域がある。剤の曝露により、眼、呼吸器、皮膚、消化器などに数秒以内に症状が出現し、曝露中止により数分~数時間以内に症状が消失する[2][10][11][12]
  1. 刺激性のある無力化剤は、通常、国や地域の治安維持を任務とする公的機関(自衛隊、警察など)が暴徒などに対して使用する。が、過激なデモや暴徒が発生することが少ないわが国では、犯罪者の立て籠もりに対して使用するケースが多い。刺激性のある無力化剤による症状か否かは、このような状況があったかどうかで概ね見当はつく。しかし、近年は電車内や室内といった閉鎖空間で、護身用に販売されている刺激性のある無力化剤を用いた強盗事件、傷害事件が散見されており、注意が必要である[13][14][15]
  1. 種類によっては、護身目的で販売されているものもある。
  1. 閉鎖空間で大量に使用されるなど、特殊環境下では眼に障害を残したり死亡した症例も報告されている[16][3]
  1. サリンなどの神経剤除染で使用される次亜塩素酸ソーダは、「刺激性のある無力化剤」の除染には使用禁忌である[2][12]
  1. 「刺激性のある無力化剤」の特徴は、以下の通りである。
 
  1. 「刺激性のある無力化剤」の特徴
  1. 「刺激性のある無力化剤」の特徴は、以下の通りである。
  1. 曝露後、ただちに眼、鼻、口腔、呼吸器、そして皮膚に刺激性の症状が出現する。
  1. 曝露環境から離脱し、刺激剤が衣類などから取り払われたら、通常は数分~30分で症状は消失する。
  1. 効果出現量と致死量の幅が大きく、使用安全域が広い。
  1. 主な「刺激性のある無力化剤」は、CN、CS、DM、CR、CA、OCの6種類である。なかでも催涙ガスとしてCNとCSが有名であり、最もよく使用されていた。DMは、他の刺激剤と異なり催吐剤と呼ばれている。CRとCAは、CN、CSと同様の刺激剤である。CAが最も強い作用を持ち、鉄やスチールも腐食してしまうが、熱に弱く保管が難しいため、ほとんど使用されない。CRは、1962年に開発された最も新しい刺激剤である。CN、CSの後継とされており、最も安全域が広く安定しているが、使用情報があまりない。OCは、トウガラシスプレーとして近年最もよく使用されており、日本国内でも護身用として市販されている。電車内や飲食店内での異臭騒ぎの原因は、護身用のスプレーによるものと思われる。
  1. 以上から、CN、CSとDMそしてOCについて具体的に説明する(<図表>)。CNは、1871年にGraebeにより精製され第一次世界大戦で使用され、1950年代後半までは、標準的な催涙ガスとして軍隊や治安維持機関により使用されていた。CSは、1928年にCorsonとStoughtonにより精製され、1959年に米国をはじめとする多くの国々でCNの後継催涙ガスとして採用された。これは、CSのほうがCNよりも強い効力を持つが毒性が低く、また胎児毒性や催奇形性がないという特徴による。
 
  1. CS(0-chlorobenzylidene malononitrile)
  1. CN(1-chloroacetophenone)
  1. CSもCNも臭いを除きほぼ同じ性状を持ち、曝露による症状も同じである。(<図表><図表>) しかし、CSのほうがより安全域は広い。
  1. 剤の曝露から数秒以内に症状(<図表>)が出現し、剤の除去により数分~30分以内にほとんどの症状は消失する。曝露された皮膚の紅斑のみが1~2時間持続する。曝露時間が長くなれば、激しい咳やむかつき、そして嘔吐が出現する。
  1. ほとんどのケースで医療を要することはないが、高濃度の剤に曝露された場合は角膜損傷も起こり得るため、眼科医の診察が必要となることもある。また、慢性気管支炎や肺気腫の既往がある被曝露者には、一時的に酸素投与や陽圧換気が必要となることもある。さらに、皮膚症状が遷延し皮膚症状が出現した際には、熱傷に準じた処置が必要となる。一般的に高温・高湿度下に皮膚症状は増悪する。
  1. 皮膚の除染は、石鹸と水で洗うが、サリンなどの除染で用いる次亜塩素酸ソーダは除染に用いてはならない。化学反応により皮膚症状が悪化することが知られているからである。
  1. また、CS、CNの作用機序はよく解明されていない。SH基を有する酵素系の不活性化が組織障害に関与していると考えられているが、疼痛自体は組織障害とは関係なくブラジキニンが関与しているとされている。
  1. 粉末として散布されたり、有機溶媒に溶解されてスプレー散布もしくは花火のように打ち上げられて煙として散布される。
  1. 閉鎖空間で使用されて高濃度の剤に曝露されると、致死的になることがある。CNによる死亡例も報告されている。
  1. また動物実験では、CSにより胎児が死亡することや、催奇形性はないと報告されている。
 
  1. DM(diphenylaminearsine)
  1. この刺激性無力化剤は、催吐剤として有名である。別名アダムサイトともいう。他にDA(diphenylchlorarsine)やDC(diphenylcyanoarsine)という制吐剤もある。
  1. 無臭で黄緑色の結晶、そして揮発性はほとんどない。水にはほとんど溶けないが、アセトンには一定程度溶解する。
  1. まず、上気道と鼻が刺激され、鼻粘膜と咽頭の灼熱感、抑えきれない咳とくしゃみ、そして胸部の灼熱感が出現する。眼にも灼熱感、流涙、結膜充血そして眼瞼けいれんが出現する。
  1. DMが他の刺激剤と異なる点が2つある。
  1. 剤に曝露されてから症状出現までに数分を要する。つまり、症状が出現したときにはすでに大量の剤を吸入しており、防護マスクを使用したり曝露環境から離脱しても、高濃度の曝露による症状が出現し継続する。
  1. 頭痛やうつ症状、悪寒、嘔気、嘔吐、腹部のけいれん、下痢といった全身症状が数時間は継続し、他の刺激剤よりも行動不能時間が長い。
  1. 高濃度のDM曝露による死亡報告がある。
 
  1. OC(Oleoresin Capsicum)
  1. いわゆるトウガラシスプレーである。天然トウガラシを原料に作製されているが、日本国内で市販されている護身用のスプレーには、CNを混合させているものがあるので注意が必要である。天然植物が原料であることから安全性が高いと考えられているが、一方で高濃度使用による喉頭浮腫が原因での死亡報告もある。
  1. 症状は、CNやCSと同様である。
 
刺激性無力化剤の物性と毒性等

代表的な3剤の物性・特性である。いずれも使用安全域が広いことがわかる。が、CNの持続性が短いのに対し、DMは持続性があり、CSは曝露された人体以外の環境(壁、床など)に遺残することもあり、注意が必要である。

出典

Shirley D. Tuorinsky: Medical Aspects of Chemical Warfare (Textbooks of Military Medicine): Bernan Assoc, Blue Ridge Summit, 2009: 309.
 
刺激性無力化剤による症状

刺激性無力化剤は、スプレーやエアロゾルとして噴露されたり、煙発生装置の中に組み込まれ、煙とともに拡散して人体は曝露される。使用される剤の種類などにより、各々の器官の症状は異なるが、人間を行動不能に陥らせるような激しい症状が出現するのが特徴である。

出典

著者提供
 
問診・診察のポイント  
  1. 症状出現時の状況が診断するうえで最も重要である。「刺激性のある無力化剤」が使用される可能性のある集会などに参加していたか否か、そのうえで治安維持部隊などから発煙を伴う武器を使用されたか否かなど。

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
竹島茂人 : 特に申告事項無し[2025年]
監修:林寛之 : 原稿料((株)羊土社)[2025年]

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刺激性のある無力化剤への曝露

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