今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 小野沢滋 みその生活支援クリニック

監修: 和田忠志 ひだまりホームクリニック

著者校正/監修レビュー済:2023/06/22
参考ガイドライン:
  1. アメリカ静脈経腸栄養学会(American Society for Parenteral and Enteral Nutrition:ASPEN):Guidelines for the Use of Parenteral and Enteral Nutrition in Adult and Pediatric Patients, JPEN vol 26(1) supplement 2002
  1. ヨーロッパ臨床栄養代謝学会(The European Society for Clinical. Nutrition and Metabolism:ESPEN):ESPEN practical guideline: Clinical nutrition and hydration in geriatrics 2022
  1. 厚生労働省「日本人の食事摂取基準」(2015年版)
  1. 厚生労働省「日本人の食事摂取基準」(2020年版)策定検討会報告書
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 日本人の食事摂取基準2020年版に基づき、修正・加筆を行った。
  1. 在宅高齢者の老老介護、息子と両親世帯などの低栄養高リスク環境について追記した。

概要・推奨   

  1. 在宅で最も必要な栄養管理は低栄養への対処[1]で、低栄養状態は筋肉減少症(サルコペニア)を悪化させ、ADLの低下を加速させる。そのため早期発見、早期介入が重要である。ただし、その際に介入すべきかどうかの判断はあくまで患者本人もしくは意思決定代理者と十分に話し合った上でなされる必要がある(推奨度2)
  1. 通常、必要栄養量は体重(kg)×30 Kcalを目安にし、タンパク量は1.0 g/kgを初期の目標とする[2]。体重1 kgの増減が熱量約7,000 Kcalの過不足に相当する。簡易的にはこのことを用いて栄養量の調整を行うとよい(推奨度2)
  1. 人工栄養を開始するのであれば、経腸栄養を最優先に考えること(推奨度1)
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まとめ 

まとめ  
疫学:
  1. 在宅医療を受けている多くの患者が要介護状態の高齢者でそのうち30%以上が低栄養状態にある[3]。また、現在、安定していても要介護状態の高齢者は嚥下障害や認知障害を伴っており、容易に栄養状態が悪化しやすい。摂取カロリー不足による蛋白・エネルギーの低栄養状態はprotein energy malnutrition(PEM)と呼ばれ、るいそうや意識障害、筋力低下などの障害を来すことがある。
  1. 在宅で最も必要な栄養管理は低栄養への対処[1]で,低栄養状態は筋肉減少症(サルコペニア)を悪化させ、ADLの低下を加速させる。そのため早期発見、早期介入が重要である。ただし、その際に介入すべきかどうかの判断はあくまで患者本人もしくは意思決定代理者と十分に話し合った上でなされる必要がある。
  1. 高齢者では過体重傾向の方が予後がよい可能性が指摘されており、無理に減量を進める必要はなく、むしろ痩せに注意すべきである[4]
  1. 現在のところ、ASPENなどから提示されているものを含めいくつかの低栄養状態の定義があるが、統一されておらず、したがって低栄養状態の頻度の報告は報告によってさまざまである[1][5][6][7][8][9][10][11][12]
 
低栄養状態(Protein Energy Malnutrition、PEM)の分類:
  1. 通常、摂取カロリー不足による蛋白・エネルギーの低栄養状態はprotein energy malnutrition(PEM)と呼ばれ、いくつかの病態に分類される。古くから飢餓の子どもたちにみられる低栄養の分類が成人にも当てはめられてきた。
  1. 長期間にわたり摂取量全体が不足して、著明なるいそうがみられるがアルブミン値は保たれているマラスムス(marasmus)と、蛋白摂取が足りず、もしくは異化が亢進して起きる低栄養で、浮腫があるためるいそうは目立たずアルブミンが著明に低値となるクワシオルコル(kwashiorkor)である。また、るいそうと浮腫、低蛋白が合併することも成人ではまれではなく、marasmic kwashiorkorといわれることもある。
  1. 2012年に米国静脈経腸栄養学会(American society of parenteral and enteral nutrition、ASPEN)から出された成人の低栄養の記述についての声明[13]では、低栄養の原因に基づいて、①飢餓による低栄養(starvation related malnutrition)、②慢性疾患関連低栄養(chronic disease-related malnutrition)、③急性疾患・外傷関連低栄養(acute disease or injury-related malnutrition)――に分類されており、よりわかりやすく、かつ臨床上での対処に直結した形になっている。今後はこちらの分類が多く用いられると考える。
 
栄養管理:
  1. 栄養管理は、スクリーニングで問題のある症例について、①栄養状態の評価、摂取栄養量の計測、②必要栄養量と不足栄養量の算出、③投与方法・投与経路の検討、④投与計画の実施、⑤モニタリング→栄養状態の評価、というように5つのステップを繰り返し行う事によって成り立つ。
  1. 栄養管理において、最も難しいのは立てた栄養計画を誰がどのように実行するのか、という点である。これを実行するためには、栄養士、介護職との多職種連携が必須である。
  1. また、在宅医療の対象となる進行性疾患や高齢者の栄養管理において、エビデンスレベルが高いものは栄養補助食品などの使用などに限られている[14][15]。また、効果については個別性が高い。その限界を見極め、無理な介入は慎むようにすべきである。
  1. 人工栄養の選択についての話し合いについては、十分に情報を提供した上で、本人の意思を最大限尊重するべきである。また、不開始の希望がある場合には、厚生労働省の『人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン』を参照し、倫理的な配慮を行う必要がある。
  1. 外出に困難が伴う高齢者の場合には、多くの家庭で、食事摂取に十分な注意が払われていない場合が多く、低栄養の高リスクとなっている。在宅医療の対象者で、特に、老老介護の場合、息子など男性が介護者の場合には注意を要する。必要があれば、ホームヘルパーの導入や配食サービス利用を促す必要がある[16]
 
鑑別疾患表:
急性炎症
  1. 急性疾患・外傷に関する栄養障害(急性の侵襲):感染症、外傷、頭部外傷などに関する栄養障害など
慢性炎症
  1. 臓器不全、関節リウマチ、代謝からみたサルコペニアなどに関する栄養障害など
摂取障害
  1. 栄養摂取障害に関する栄養障害(飢餓)-食欲不振や神経性食欲不振症による慢性的な栄養摂取障害など

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
小野沢滋 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:和田忠志 : 未申告[2024年]

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