今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 竹井謙之 三重大学大学院 医学系研究科 消化器内科

監修: 金子周一 金沢大学大学院

著者校正/監修レビュー済:2020/06/10
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、現状では変更なしだが、新規治療薬等新しいエビデンスを含め改訂準備中。

概要・推奨   

  1. アルコール性肝炎を疑うときは肝生検が推奨される(推奨度2)
  1. 重症型アルコール性肝炎は予後不良であり、その重症度はスコア化で判定する(推奨度1)
  1. アルコール性肝障害では厳格な禁酒が強く推奨される(推奨度1)
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
まとめ:
  1. 飲酒は個人の生活習慣を形成している重要な因子であり、過度の飲酒が引き起こすアルコール性肝障害はアルコール関連生活習慣病である。
  1. アルコールの過剰摂取は脂肪肝から肝線維症、肝硬変、肝癌に至る慢性肝障害、また肝細胞壊死が前景に出るアルコール性肝炎を惹起する。
 
アルコール性肝障害の進展様式

アルコールの過剰摂取は脂肪肝から肝線維症、肝硬変、肝癌に至る慢性肝障害、さらに炎症・肝細胞壊死が前景に出るアルコール性肝炎を惹起する。 わが国のアルコール性肝障害の特徴として炎症や壊死を経ずに肝線維化から肝硬変に進展する肝線維症が多い。

出典

著者提供
 
アルコール性肝障害の発症機序

アルコール性肝障害は過剰飲酒に伴う肝障害であり、多くはアルコール換算60g/日以上の飲酒を5年以上継続することによって発症する。アルコール依存者のなかから肝硬変に進展する率は20~30%であることからもわかるように、アルコールに対する肝障害の感受性には個人差が大きく、性差、年齢、栄養状態、アルデヒド脱水素酵素(ALDH)などの遺伝的素因、免疫機能などにより決定される。アルコール性肝障害の発症および進展には下記に示す多くの因子が複合的に関連し肝病変が進展すると考えられている。
  1. アルコール代謝に伴うほかの代謝系への負荷
  1. アルコールや代謝産物であるアセトアルデヒド自体による肝毒性
  1. 腸内細菌由来エンドトキシンによる肝Kupffer細胞活性化とそれより産生される障害性メディエータ群の関与
  1. 鉄過剰やミクロソームエタノール酸化系(MEOS)活性などによる酸化ストレスの増大
  1. アルコールによる肝微小循環障害

出典

著者提供
 
  1. 女性はアルコール性肝障害への感受性が高い。
 
女性とアルコール関連問題

アルコールへの感受性には性差があり、女性はより少量の飲酒で肝障害を発症する。女性では男性に比べて約2/3の飲酒量で肝障害が出現し、約半分の飲酒期間(10年程度)で肝硬変にまで進展するとされている。アルコールは水溶性であるため、脂肪含有率の高い女性にとっては、体格差と相まって、同量の飲酒でも組織に分布するアルコール量がより高くなる。また女性ホルモンであるエストロゲンによるADHやCYP2E1活性の抑制作用が報告されており、女性ではアルコール分解効率が低下している。さらにはエストロゲンによるエンドトキシンの腸管透過性亢進やKupffer細胞活性化も知られ、肝障害進展における性差発現に関与している。女性のほうがアルコール依存症になりやすいとの報告もある。

出典

U Becker, A Deis, T I Sørensen, M Grønbaek, K Borch-Johnsen, C F Müller, P Schnohr, G Jensen
Prediction of risk of liver disease by alcohol intake, sex, and age: a prospective population study.
Hepatology. 1996 May;23(5):1025-9. doi: 10.1002/hep.510230513.
Abstract/Text The association between self-reported alcohol intake and the risk of future liver disease was studied in a large population-based prospective cohort with 12-year follow-up. Alcohol intake was assessed in 13,285 men and women aged 30 to 79 years by a self-administered questionnaire. Diagnoses indicating alcohol-induced liver disease (n = 261) or alcohol-induced cirrhosis (n = 124) were obtained from death certificates and the hospital discharge register, and data were analyzed by multiplicative Poisson regression models. The total cumulated observation time was 130,558 person-years. The overall incidence rates of alcohol-induced cirrhosis were 0.2% per year in men and 0.03% per year in women. The nadir of the estimated relative risk of developing liver disease was observed at an alcohol intake of 1 to 6 beverages per week, and above this level a steep increase in relative risk was observed. The risk function was independent of age and stable over time. The level of alcohol intake above which the relative risk was significantly greater than 1 was observed at 7 to 13 beverages per week for women and 14 to 27 beverages per week for men. Women had a significantly higher relative risk of developing alcohol-related liver disease than men for any given level of alcohol intake. We observed a dose-dependent increase in relative risk of developing alcohol-induced liver disease for both men and women, with the steepest increase among women. In the general population, self-reported current alcohol intake is a good predictor of the future risk of alcohol-induced liver disease.

PMID 8621128
 
  1. 平均アルコール摂取量150ml以上の大量飲酒者は約240万人と推測されている。特に若年女性の大量飲酒者は急激な増加を示しており、将来への影響が危惧される。
  1. 重症型アルコール性肝炎は発熱、黄疸、腹水など肝不全症状に加え、脳症や消化管出血、感染症、腎不全などを合併しやすく、重篤な経過をたどる病態である。(表<図表>
  1. アルコール性肝障害は内科的領域にとどまらず、アルコール依存や社会経済的問題など飲酒関連問題が介在することに留意しなければならない。
 
  1. 女性はアルコール性肝障害を発症しやすく、男性より少量の飲酒量で発症する。
  1. アルコールへの感受性には性差があり、女性はより少量の飲酒で肝障害を発症し、より重篤な肝障害に進展しやすいことが多くの研究で実証されている[1]。一例を挙げるとBeckerらの検討では、週当たりの飲酒量が7単位(1単位はエタノール約10g)を超えると女性は肝障害の発症が有意に高く、約2倍のリスクがあるとされている。肝硬変への進展リスクも同様に週当たりの飲酒量が7~41単位では男性の約2倍のリスクが認められた[2]。また別の研究では、女性は男性に比べて約2/3の飲酒量で肝障害が出現し、約半分の飲酒期間(10年程度)で肝硬変にまで進展するとされている[3]。これらは欧米のデータであるが、わが国ではALDH2の多型によるpoor metabolizerが約60%を占め、日本人女性のアルコール感受性はより高いと考えられる。また若年女性の大量飲酒者は急激な増加を示しており(健康・栄養情報研究会編:「国民栄養の現状 平成14年度厚生労働省国民栄養調査」)、女性のアルコール性肝障害が将来急増するのではないかと危惧される。女性のほうがアルコール依存症になりやすいとの報告もある。
 
アルコール健康障害対策基本法:
  1. 国際的にアルコール関連問題がますます重要性を増していることを受けて、WHO(世界保健機関)は2010年に「アルコールの有害事象に対する世界的な治療戦略」を策定した。わが国でも2013年12月、「アルコール健康障害対策基本法」が成立し、2016年5月、内閣府によりアルコール健康障害対策推進基本計画が発表された。
  1. 内閣府HP:[ https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000176279.html アルコール健康障害対策]
問診・診察のポイント  
  1. 最も重要なことは正確な飲酒歴の聴取を行うことである。アルコール多飲者は飲酒期間、飲酒量ともに過小申告する傾向にあり、特にアルコール依存者では飲酒自体を否定することもまれではない。

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
竹井謙之 : 未申告[2024年]
監修:金子周一 : 未申告[2024年]

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アルコール性肝障害

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