今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 江崎治 前 国立国際医療研究センター 運動栄養肥満外来

監修: 野田光彦 国際医療福祉大学市川病院 糖尿病・代謝・内分泌内科

著者校正/監修レビュー済:2023/04/19
参考ガイドライン:
  1. 厚生労働省「日本人の食事摂取基準」策定検討会:「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書
  1. 日本肥満学会:肥満症診療ガイドライン2022
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 肥満症診療ガイドラインで用いられている肥満、内臓脂肪蓄積、肥満症、メタボリックシンドロームの定義の注意点を説明した。
  1. チルゼパチド、セマグルチド(高用量注射)、オルリスタット、防風通聖散の抗肥満効果と副作用を記載した。
  1. 日本での腹腔鏡下袖(スリーブ)状胃切除術の体重減少率は平均30%である。

概要・推奨   

  1. 日本人においては、肥満(BMI25)でなくても、過去の体重と糖尿病罹患との間に正の関連が認められる。
  1. 過去のBMIが高いと、癌と動脈硬化性疾患による死亡率が増加する。特に、動脈硬化性疾患による死亡率とは直線的な正の関連が認められた。一方、過去のBMIが低いと呼吸器疾患による死亡が増加し、直線的な負の関連が認められた。
  1. 運動を含む生活習慣改善により少なくとも7%の体重減少が維持できると、糖尿病罹患が58%予防される。
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 肥満は体内の脂肪組織が過剰に増加した状態で、BMI 25kg/m2 以上の人を肥満と判定する。特にBMI 35以上を高度肥満と定義する。
 
肥満度分類

肥満とは?
身長と体重(服の重さを差し引く)を実測し、BMIを計算する。
BMI(kg/m2)=体重(kg)÷身長(m)2
BMI 25以上で、水分(浮腫)、筋肉量増加でないことを確認できたら肥満である。

出典

日本肥満学会:肥満症診療ガイドライン2022.ライフサイエンス出版、2022.p2 表1-3
 
  1. 内臓脂肪蓄積とは、腹部CT、MRIで測定した臍レベルの内臓脂肪面積が100 cm2以上となることである。内臓脂肪蓄積が原因で血圧、血糖の高値、脂質異常症を生じると考え、代謝異常の上流に位置する治療の必要な病態として扱う[1]。BMIで定義される肥満とは異なり混乱を招くので、内臓脂肪蓄積のことを「内臓肥満」とは呼ばないほうがよい。内臓脂肪面積100 cm2は、日本人を対象とした横断研究から求められ、保有する心血管疾患の危険因子(高血圧、高血糖、脂質異常)の数が平均1つ以上となる値になっているが、わが国で行われたより大規模なVACATION J studyでは、100 cm2以上で急激に危険因子数が増加するのではなく、直線的に増加することに注意する(<図表>)。すなわち、内臓脂肪面積は少ないほど良いことを示している。さらにカットオフ値100 cm2は、疾患罹患をエンドポイントとした経時な観察研究から求められた値でなく、心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病罹患予防のための値として適切かどうか不明である。
 
内臓脂肪蓄積(100cm2以上)が認められても、心血管疾患の危険因子(高血圧、高血糖、脂質異常)の数が急に増加することを意味しない

日本人男性10,080人、女性2,363人を対象にした、腹部CTで計測した内臓脂肪面積(VFA)と心血管危険因子との関連(A)とVFA別の頻度(B)を示す大規模横断研究(the VACATION-J study)。内臓脂肪面積100cm2以上は、保有する心血管疾患の危険因子(高血圧、高血糖、脂質異常)の数が平均1つ以上となる値になっていて、「内臓脂肪蓄積」と呼ぶ。図で青の棒グラフが内臓脂肪蓄積に相当する。100cm2以上で急に危険因子数が増加するのではなく、ほぼ直線的に増加していることに注意していただきたい。内臓脂肪面積は少ないほど危険因子数が少ないことを示している。この研究はn数が多いので、広い内臓面積の範囲で信頼性がある。

出典

Aki Hiuge-Shimizu, Ken Kishida, Tohru Funahashi, Yuko Ishizaka, Rie Oka, Minoru Okada, Shizu Suzuki, Norihide Takaya, Tohru Nakagawa, Toshiki Fukui, Hiroshi Fukuda, Naoya Watanabe, Tohru Yoshizumi, Tadashi Nakamura, Yuji Matsuzawa, Minoru Yamakado, Iichiro Shimomura
Absolute value of visceral fat area measured on computed tomography scans and obesity-related cardiovascular risk factors in large-scale Japanese general population (the VACATION-J study).
Ann Med. 2012 Feb;44(1):82-92. doi: 10.3109/07853890.2010.526138. Epub 2010 Oct 22.
Abstract/Text BACKGROUND: The management of cardiovascular risk factors is important for prevention of atherosclerotic cardiovascular diseases (ACVD). Visceral fat accumulation plays an important role in the clustering of cardiovascular risk factors, leading to ACVD. The present study investigated the gender- and age-specific relationship between obesity-related cardiovascular risk factor accumulation and computed tomography (CT)-measured fat distribution in a large-scale Japanese general population.
METHODS AND RESULTS: Fat distribution was measured on CT scans in 12,443 subjects (males/females = 10,080/2,363), who underwent medical health check-up at 9 centers in Japan. The investigated obesity-related cardiovascular risk factors were hyperglycemia, dyslipidemia, and elevated blood pressure. Visceral fat area (VFA) for all males and old females showed almost symmetric distribution, while that of young females showed skewed distribution with a marked left shift. Only a small proportion of young females had large visceral fat and cardiovascular risk accumulation. The mean number of risk factors exceeded 1.0 at around 100 cm(2) for VFA in all groups, irrespective of gender, age (cut-off age 55), and BMI (cut-off BMI 25 kg/m(2)).
CONCLUSIONS: In this large-scale Japan-wide general population study, an absolute VFA value of about 100 cm(2) equated with obesity-related cardiovascular risk factor accumulation, irrespective of gender, age, and BMI.

PMID 20964583
 
  1. 肥満症とは医学的に治療(減量)を必要とする病態をいい、疾患単位として扱う。BMI 25以上の人で、腹部CTで内臓脂肪面積が100 cm2を超える場合か、または肥満に起因ないし関連する健康障害(耐糖能障害、高血圧症など)を合併する場合に肥満症と診断する。肥満症はBMI 25以上の人(肥満)に限定されている。すなわち、内臓脂肪蓄積があっても肥満がなければ、肥満症とは診断されないが、内臓脂肪蓄積の疾患への寄与を考慮すると、治療対象になる。
 
肥満に起因ないし関連する健康障害

出典

日本肥満学会:肥満症診療ガイドライン2022.ライフサイエンス出版、2022.p1 表1-2
 
  1. 日本のメタボリックシンドロームでは、肥満の中には良い肥満と悪い肥満があると考え、内臓脂肪蓄積を推定するため腹囲が一定(男性85 cm、女性90 cm)以上あり、かつ心血管疾患危険因子の数が2つ以上ある病態(悪い肥満)として定義されている[2]<図表>)。肥満はBMIで定義(BMI≧25)されるが、メタボリックシンドロームは腹囲で定義される。このため、非肥満(BMI<25)であってもメタボリックシンドロームに相当する症例があり、特定健診の保健指導の対象者になる。
 
メタボリックシンドロームの診断基準

メタボリックシンドローム診断基準では、CTで内臓脂肪面積を直接測定せず、腹囲を測定することにより内臓脂肪蓄積の有無を推定する。しかし、メタボリックシンドローム診断基準の内臓脂肪蓄積に対する感度、特異度が大規模に調べられてなく、現在のメタボリックシンドローム診断基準が内臓脂肪蓄積の良いスクリーニング法になっているか明らかでない。
 肥満はBMIで定義(BMI≧25)されるが、メタボリックシンドロームは腹囲で定義される。このため、非肥満(BMI<25)であってもメタボリックシンドロームに相当する症例があり、特定健診の保健指導の対象者になる。

出典

メタボリックシンドローム診断基準検討委員会:メタボリックシンドロームの定義と診断基準.日内会誌 2006;94:188-203.
 
  1. 日本の大規模コホート研究(約3万人、8-9年間観察)で、腹囲が正常範囲でも心血管危険因子が存在する場合、メタボリックシンドローム該当者と同等のCVD(虚血性心疾患と脳卒中)罹患リスクが認められていて[3]、腹囲が正常範囲でも心血管危険因子が存在する場合、心血管危険因子に対する治療は必要である。
 
  1. メタボリックシンドローム診断基準では、CTで内臓脂肪面積を直接測定せず、腹囲を測定することにより内臓脂肪蓄積の有無を推定する。しかし、腹囲測定はばらつきが大きく、男性を例に挙げると、腹囲が85cm以下でも内臓脂肪面積が100cm2以上の人は多く(腹囲が85 cm以上でも内臓脂肪面積が100 cm2以下の人も多い)、腹囲測定で内臓脂肪蓄積の有無を推定するのは難しい(<図表>)。さらに冠動脈疾患の検査を受けた人(n=257)では、非内臓脂肪蓄積の人でも2つ以上の心血管疾患危険因子を持つ人は57.5%(内臓脂肪蓄積の人は73%)もあり[4]、腹囲に危険因子の数を基準に追加しても、内臓脂肪蓄積かどうか判定するのは難しいことが予想される。メタボリックシンドローム診断基準の内臓脂肪蓄積に対する感度、特異度が大規模に調べられておらず、現在のメタボリックシンドローム診断基準が内臓脂肪蓄積の良いスクリーニング法になっているか明らかでない。
 
腹囲を測定しても内臓脂肪面積(VFA)の推定は困難である

各個人の腹囲とCTで計測した内臓脂肪面積をプロットした図である。臨床で用いるには相関は弱く、腹囲から内臓脂肪面積を推定することは難しい。男性を例に挙げると、腹囲が85cm以下でも内臓脂肪面積が100cm2以上の人は多く認められ(プロットの左上部分)、腹囲が85cm以上でも内臓脂肪面積が100cm2以下の人も多い(プロットの右下部分)。内臓脂肪面積を知りたい時は腹部CTか生体電気インピーダンス法で調べる必要がある。

出典

Examination Committee of Criteria for 'Obesity Disease' in Japan, Japan Society for the Study of Obesity
New criteria for 'obesity disease' in Japan.
Circ J. 2002 Nov;66(11):987-92. doi: 10.1253/circj.66.987.
Abstract/Text The present study was designed to establish adequate criteria for categorizing 'obesity disease' in Japan in relation to obesity-related complications. The subjects were 1,193 Japanese subjects (775 men, 418 women; age: 20-84 years old, body mass index (BMI): 14.9-56.4 kg/m(2)) including subjects undergoing a health examination and obese subjects visiting an obesity clinic. Visceral fat area (VFA) and subcutaneous fat area (SFA) were determined by computed tomography (CT) at the umbilical level. Anthropometric parameters, including BMI, waist circumference (W), waist/hip circumference (W/H), ratio and waist circumference/body height (W/BH) ratio, were measured. Hyperglycemia, dyslipidemia, and hypertension were evaluated as obesity-related complications. The relationship between each parameter and the prevalence of the complications was investigated. The number of complications increased in accordance with BMI and the average value was greater than 1.0 at a BMI of 25. The best combination of the sensitivity and specificity for detecting subjects with multiple risk factors was a BMI of 25. BMI showed a close positive correlation with SFA (r=0.82), even for BMI > or =25 (r=0.77), but had a weaker correlation with VFA (r=0.54). The obese subjects with a BMI > or =25 had no correlation between BMI and VFA because of the wide individual variation of VFA. The number of disorders was greater than 1.0 at 100 cm(2) of VFA and the best combination of the sensitivity and specificity for determining subjects with multiple risk factors was 100 cm(2) of VFA. Between the simple anthropometric values and measurement of VFA, it was proven that W had the closest relationship with VFA in both men (r=0.68) and women (r=0.65). The regression line obtained from simple correlation analyses indicated that the W corresponding to 100 cm(2) of VFA was 84.4 cm in men and 92.5 cm in women. These data suggest that obesity is adequately specified as a BMI > or =25 in Japan where the prevalence and degree of obesity remains mild. It is reasonable to establish the cut-off point of VFA at 100 cm(2) as indicative of the risk of obesity-related disorders and a waist circumference of 85 cm in men and 90 cm in women approximates to this visceral fat mass.

PMID 12419927
 
  1. 肥満が高度になると、治療は困難になる。このため、予防がきわめて大切で、若年者はBMIが23以上にならないように食事内容(摂取カロリー)と身体活動量を調整する必要がある。
  1. 日本人の食事摂取基準(2020年版)では、年齢別に、目標とするBMIの範囲が示されている(<図表>)。18~49歳ではBMI 18.5~24.9、50~64歳ではBMI 20.0~24.9、65歳以上ではBMI 21.5~24.9となり、BMIの下の基準が高齢になるほど、高くなっている。この基準の根拠は、観察研究で高齢者ではBMIの少し高い群(65歳以上でBMI 22.5~27.4)で総死亡率がもっとも低くなることにある(<図表>)。その理由として、因果の逆転(病気が隠れている人は低体重になりやすいので、低体重の人は死亡率が高くなる)もあり得るが、低体重の人は、低栄養で免疫力が弱く肺炎で重症化しやすい、脂肪組織が少ないと体内エネルギーの蓄積量が少なくなり侵襲時の抵抗力が弱くなるなど、低体重が原因で死亡率が増加する可能性があるためである。しかし、総死亡率でなく、総合的な疾病の罹患リスク低減を目標とするならば、目標とするBMIは、QOLを考慮した健康寿命を最も長くする各年齢層でのBMIが良いが、残念ながら、このBMIは調べられていない。
 
日本人年齢別、目標BMI

日本人の食事摂取基準(2020年版)では、年齢別に、目標とするBMIの範囲が示されている。18~49歳ではBMI18.5~24.9、50~64歳ではBMI20.0~24.9、65歳以上ではBMI21.5~24.9となり、BMIの下の基準が高齢になるほど、高くなっている。
高齢者ではBMIは少し高い人(65歳以上でBMI 22.5~27.4)で死亡率が低いことによる(観察研究)。この理由として、因果の逆転(病気が隠れている人は低体重で、低体重の人は死亡率が高い)もあり得るが、低体重の人は、低栄養で免疫力が弱く肺炎にかかりやすい、脂肪組織が少ないとエネルギーの蓄積量が少ないため侵襲時の抵抗力が弱くなるなど、低体重が原因で死亡率が増加することが挙げられる。

出典

「日本人の食事摂取基準」策定検討会編:[https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf 日本人の食事摂取基準(2020年版)「日本人の食事摂取基準」策定検討会報告書](厚生労働省)より作成
 
日本での主要死因別にみたBMI(kg/m2)と死亡率の関連

BMIが23.0~24.9の群を1とした時の各BMIでのハザード比を示した。わが国における7つのコホート研究のプール解析。追跡開始時年齢=40~103歳、平均追跡年数=12.5年、対象者数(解析者数)=男性162,092人、女性191,330人、死亡者数(解析者数)=男性25,944人、女性16,036人、調整済み変数=年齢、喫煙、飲酒、高血圧歴、余暇活動または身体活動、その他(それぞれのコホート研究によって異なる)。
備考:追跡開始後5年未満における死亡を除外した解析である。
 
参考文献:
Sasazuki S, Inoue M, Tsuji I, Sugawara Y, Tamakoshi A, Matsuo K, Wakai K, Nagata C, Tanaka K, Mizoue T, Tsugane S; Research Group for the Development and Evaluation of Cancer Prevention Strategies in Japan. Body mass index and mortality from all causes and major causes in Japanese: results of a pooled analysis of 7 large-scale cohort studies. J Epidemiol. 2011;21(6):417-30.PMID: 21908941

出典

「日本人の食事摂取基準」策定検討会編:[https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf 日本人の食事摂取基準(2020年版)「日本人の食事摂取基準」策定検討会報告書](厚生労働省)より作成
 
  1. 日本人においては、肥満(BMI25)でなくても、過去の体重と糖尿病罹患との間に正の関連が認められる。(参考文献:[5][6]
  1. 日本人においても、肥満は強い糖尿病罹患リスクであり、BMIが23以上の人は、20以下の人に比べて、糖尿病罹患のハザード比は3倍も高い。
  1. 岐阜県在住の糖尿病に罹患していない男性16,829人、女性8,370人のBMI(35~59歳)を1988年から1991年までに得、その後約7年間観察したところ、男性869人、女性224人の新規糖尿病発症が認められた。1988年から1991年のBMIと糖尿病罹患の関連をCox回帰分析法で調べた。年齢、喫煙、アルコール、運動、教育の5項目の交絡因子を調整しても、BMIが1増加するごとに糖尿病罹患のハザード比は男性で1.26(95%CI, 1.24-1.29) 女性1.24(95%CI, 1.20-1.29)増加した。
  1. 追記:過去のBMIと糖尿病罹患には強い正の関連が認められ、肥満の予防が重要であることが示されている。
 
肥満(BMI)の糖尿病発症リスク、観察研究(性別別)

日本人を対象とした約7年間の観察研究。BMIが高いと、糖尿病発症のリスクになることがよくわかる。BMI 20以下の人に比べて、BMI 23の人では糖尿病発症リスクは7年間で約3倍にもなる。

出典

T Nagaya, H Yoshida, H Takahashi, M Kawai
Increases in body mass index, even within non-obese levels, raise the risk for Type 2 diabetes mellitus: a follow-up study in a Japanese population.
Diabet Med. 2005 Aug;22(8):1107-11. doi: 10.1111/j.1464-5491.2005.01602.x.
Abstract/Text AIMS: Obesity, the strongest risk factor for Type 2 diabetes mellitus, is less prevalent in Japanese than in other populations. We investigated the effects of body mass index (BMI, kg/m(2)) on the incidence of diabetes mellitus in a Japanese population.
METHODS: A follow-up study in 16 829 men and 8370 women who were apparently healthy at baseline (age 30-59 years, BMI 14.9-43.2 kg/m(2)). Incident diabetes mellitus was identified by 'fasting serum glucose > or = 7.00 mmol/l (126 mg/dl)' and/or 'under medical treatment for diabetes mellitus'. Hazard ratio, as an index for risk ratio, for incident diabetes mellitus according to BMI was estimated using Cox's proportional hazard models. Baseline age, smoking, drinking, exercise and education were computed as confounders.
RESULTS: During mean follow-up periods of 7.4 years for men and 7.1 years for women, 869 men and 224 women had incident diabetes mellitus. Although the subjects were averagely non-obese [mean (sd) BMI 23.1 (2.6) kg/m(2) for men, 22.3 (2.7) kg/m(2) for women], hazard ratio for incident diabetes mellitus increased in parallel with increases in BMI. Multivariate-adjusted hazard ratios (95% confidence intervals) for increases in BMI of 1 kg/m(2) were 1.26 (1.24, 1.29) for men and 1.24 (1.20, 1.29) for women.
CONCLUSION: BMI, even within the non-obese level, is a dose-dependent risk factor for diabetes mellitus in middle-aged Japanese. Increases in BMI of 1 kg/m(2) (= body-weight gain of 2.4-2.9 kg) may raise the risk by about 25%.

PMID 16026381
 
  1. 過去のBMIが高いと、癌と動脈硬化性疾患による死亡率が増加する。特に、動脈硬化性疾患による死亡率とは直線的な正の関連が認められた。一方、過去のBMIが低いと呼吸器疾患による死亡が増加し、直線的な負の関連が認められた(o)。(参考文献:[7]
  1. 日本人を含めて多くの観察研究では、痩せていても太っていても死亡率は増加する。このため、過去のBMIと死亡率との関連はU字型のカーブを示し、死亡率の最も少ないBMIは23.0-24.9で、少し小太りのほうが死亡率は低いという結果にある。しかし、死因を分析した韓国での観察研究から、痩せていて死亡率が増加するのは、呼吸器疾患による死亡が増加するためで、動脈硬化性疾患による死亡は、BMIが少ないほど少ないことが示されている。
  1. 120万人を対象とした韓国での12年間の観察研究で、BMIと死因の関連が調べられている。BMIの低かった人は呼吸器疾患(結核、COPD、喘息、肺炎)の死亡率が高く、BMIの高かった人は癌と動脈硬化関連疾患での死亡率が高いことが示された。呼吸器疾患に関しては、研究開始時点で診断できていない呼吸器疾患のある対象者が含まれていて(これらの人は最初からBMIが低い)、体重の少ない人で死亡率が高くなる可能性(因果の逆転)も否定できないが、体重が少ないことが原因となり、呼吸器疾患に罹患すると予後が悪くなることが考えられている。
  1. 肥満者では肺炎罹患のリスクは高くなるが、肺炎による死亡率のリスクは低くなることが、観察研究のメタアナリシスで示されている[8]。肥満が肺炎罹患のリスクになる理由として、肥満では胃食道逆流症が起こりやすく誤嚥性肺炎の原因になること、肥満は糖尿病と喘息のリスクで、糖尿病と喘息は肺炎のリスクであること、肥満の人は血清25(OH)D3濃度が低くなること(血清25(OH)D3濃度が低いと肺炎のリスクになる)、肥満の人はレプチン抵抗性を示すこと(レプチンの効果が減弱すると呼吸器感染症に罹りやすくなる)の4つが挙げられる。一方、肥満者で肺炎の死亡率リスクが低くなる理由として、肥満者は冠動脈疾患、2型糖尿病、心不全罹患のリスクが高いため、肥満の肺炎患者はより高度な治療を受けているかもしれないこと、肥満の肺炎患者ではTNF-α活性を制御する可溶性TNF-αレセプターが脂肪組織からより多く産生されるため、TNF-αが中和され、肺炎の程度が軽減されること、肥満の人は、肺炎による異化作用のストレスを打ち消すのに、十分なエネルギーの蓄えを持っていることの3つが挙げられる。
  1. 動脈硬化性疾患による死亡とはBMI依存性の直線的な正の関連が認められ、BMIは少ないほど動脈硬化性疾患による死亡数は少なくなっている(日本の結果と異なることに注意;日本人を対象とした研究では、心疾患や脳血管障害による死亡はBMIが低かった人でも増加する。これは日本人特有の現象で、その他のアジア人でも認められていない。理由として、心筋機能の異常や心弁膜症の人は低体重の人が多く、低体重の人の中に、動脈硬化以外の原因の心疾患で死亡した人が含まれていた可能性が考えられている。また、低体重の人は血中コレステロール値が低い人が多く、脳出血のリスクになった可能性もある)。
 
BMIと喫煙歴による、癌、動脈硬化性疾患、呼吸器疾患のハザード比(韓国のデータ)

120万人を対象とした12年間のコホート研究。主要な病気のある人は除く。

出典

Sun Ha Jee, Jae Woong Sull, Jungyong Park, Sang-Yi Lee, Heechoul Ohrr, Eliseo Guallar, Jonathan M Samet
Body-mass index and mortality in Korean men and women.
N Engl J Med. 2006 Aug 24;355(8):779-87. doi: 10.1056/NEJMoa054017. Epub 2006 Aug 22.
Abstract/Text BACKGROUND: Obesity is associated with diverse health risks, but the role of body weight as a risk factor for death remains controversial.
METHODS: We examined the association between body weight and the risk of death in a 12-year prospective cohort study of 1,213,829 Koreans between the ages of 30 and 95 years. We examined 82,372 deaths from any cause and 48,731 deaths from specific diseases (including 29,123 from cancer, 16,426 from atherosclerotic cardiovascular disease, and 3362 from respiratory disease) in relation to the body-mass index (BMI) (the weight in kilograms divided by the square of the height in meters).
RESULTS: In both sexes, the average baseline BMI was 23.2, and the rate of death from any cause had a J-shaped association with the BMI, regardless of cigarette-smoking history. The risk of death from any cause was lowest among patients with a BMI of 23.0 to 24.9. In all groups, the risk of death from respiratory causes was higher among subjects with a lower BMI, and the risk of death from atherosclerotic cardiovascular disease or cancer was higher among subjects with a higher BMI. The relative risk of death associated with BMI declined with increasing age.
CONCLUSIONS: Underweight, overweight, and obese men and women had higher rates of death than men and women of normal weight. The association of BMI with death varied according to the cause of death and was modified by age, sex, and smoking history.

Copyright 2006 Massachusetts Medical Society.
PMID 16926276
問診・診察のポイント  
  1. 体重増加の時期を把握することは肥満の原因を推定するうえで重要なので、最初に患者の体重変動の経過を聞く。外来で診察時間が十分とれないときはアンケートに体重の変動について記載してもらう(<図表>)。抗精神薬、ステロイド剤(経口、吸入)服用の有無は必ず聞く。睡眠時無呼吸症候群(SAS)は見落としやすい。昼間に眠たくなるかどうか、寝ているとき呼吸が止まることがあるかどうか聞き、疑いのある場合、Epworth sleepiness scale(ESS)(アンケート調査)を行い5点以上の場合、ポリソムノグラフィー(PSG)検査を行っている病院を紹介する(詳細は睡眠時無呼吸症候群参照)。女性の場合、妊娠の可能性と月経の状態(月経異常があれば多囊胞性卵巣症候群[PCOS]を疑う)を聞く。

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
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(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
江崎治 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:野田光彦 : 特に申告事項無し[2024年]

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肥満と肥満症

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