今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 吉田佳弘1) 小川赤十字病院リウマチ科

著者: 三村俊英2) 埼玉医科大学 リウマチ膠原病科

監修: 上阪等 千葉西総合病院 膠原病リウマチセンター

著者校正/監修レビュー済:2021/11/17
参考ガイドライン:
  1. 厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業 自己免疫疾患に関する調査研究班:成人スチル病診療ガイドライン 2017年版
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、以下の点について加筆修正を行った。
  1. インターロイキン(IL)-6受容体の抗体製剤であるトシリズマブの有用性が示されてきたが、実際に保険適用となり実臨床で使用できるようになった。

概要・推奨   

  1. 診断確定例にはステロイドにて治療を行うのが一般的である。国内外においてステロイドは約9割の症例で用いられている(推奨度2)
  1. ステロイド効果不十分例には免疫抑制薬の併用が検討される。メトトレキサートやシクロスポリンAの有効性が報告されている(推奨度3)
  1. 関節リウマチの治療に用いられる生物学的製剤が成人スティル病にも有効なケースが報告されている。その中で抗IL-6受容体抗体製剤のトシリズマブ(アクテムラ)は2019年5月に保険適用となった(推奨度3)
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病態・疫学・診察 

疾患(疫学・病態)  
病態・疫学:
  1. 成人スティル病(または成人スチル病)とは、かつて報告者にちなんでスティル病と呼称された、小児の慢性炎症性疾患である全身型若年性特発性関節炎(sJIA)に類似した臨床症状が成人(16歳以上)に生じたものである。小児期にスティル病(現在のsJIA)を発症し成人に移行した例も成人スティル病に含めて扱われる。弛張熱、有熱時のサーモンピンク疹(<図表>)、多関節炎の3主徴に加え、肝障害やリンパ節腫脹、血清フェリチン値の著増などがみられ、成人における不明熱の鑑別疾患として重要である。一部の症例でマクロファージ活性化症候群または血球貪食症候群(合併症の項で後述)、DICなどを併発し重篤となることがある。
  1. 疫学的にはまれな疾患であり、有病率は約2/10万人程度とされる。年齢分布は16~35歳に6割の患者が分布するとされ、男女比は女性が男性の約2倍である。
  1. 病態に関してはいまだ不明であるが、ウイルスや細菌などの感染因子、HLA-DQ1やDR4など遺伝因子が発症に関与するとの報告がある。また単球・マクロファージの活性化やインターロイキン(IL)-1b、-6、-18やインターフェロン(IFN)-γ、腫瘍壊死因子(TNF)-αの著明な産生亢進も発症に関与していると考えられている。なおIL-18 増加は敗血症など他の炎症性疾患との鑑別に有効性も示される。ただ自己抗体の産生はなく自己免疫疾患というよりも、自然免疫系の制御異常による広義の自己炎症疾患と考えられる。 
  1. 成人スティル病は、指定難病であり、中等症以上の場合などは、申請し認定されると保険料の自己負担分の一部が公費負担として助成される。([平成27年1月施行])
  1.  難病法に基づく医療費助成制度 
 
  1. 成人スティル病患者における血中のIL-18濃度上昇が有意所見とされるようになってきた(推奨度3O)
  1. 血清フェリチンの著増が参考所見とされるが、成人スティル病に特異的な検査所見はない。最近、成人スティル病患者の血中IL-18濃度が他疾患より有意に上昇していると報告されるようになった。
  1. 2001年に岡山大と東京女子医大のグループがそれぞれ別に成人スティル病患者の血中IL-18濃度が関節リウマチ患者などと比較し増加していることを報告している[1][2]。ただし、測定に関して保険適用はない。
 
病型:
  1. 成人スティル病の経過は、発熱などの全身症状が1回のエピソードのみで再発のない単周期全身型、全身症状の再発と寛解を繰り返す多周期全身型、関節炎が持続し慢性化する慢性関節炎型(全身症状が一過性かどうかで慢性関節炎・単周期全身型と多周期全身型とに分かれる)におおむね分類される。
  1. 以前は多周期全身型が多いとされたが、2011年のわが国の疫学調査では単周期全身型が4割を占め最多、慢性関節炎型は約2割5分であり、残りが多周期全身型である。
問診・診察のポイント  
問診:
  1. 抗菌薬加療に反応しない1週間以上持続する発熱(38~39℃台)患者、特に弛張熱(特徴としては、午前よりも午後・夕方に熱のピークがある)を示す場合に可能性を考慮する。
  1. 咽頭炎様症状で初発することもしばしばあり、風邪症状と間違われやすい。

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※同効薬・小児・妊娠および授乳中の注意事項等は、海外の情報も掲載しており、日本の医療事情に適応しない場合があります。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適応の査定において保険適応及び保険適応外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適応の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
吉田佳弘 : 未申告[2024年]
三村俊英 : 研究費・助成金など(Gilead Sciences, Inc.)[2024年]
監修:上阪等 : 特に申告事項無し[2025年]

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