今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 堀内孝彦 福岡市立病院機構福岡市民病院院長

監修: 上阪等 千葉西総合病院 膠原病リウマチセンター

著者校正済:2024/10/16
現在監修レビュー中
参考ガイドライン:
  1. 一般社団法人日本補体学会:遺伝性⾎管性浮腫(Hereditary angioedema:HAE)診療ガイドライン 改訂 2023 年版
  1. 世界アレルギー機構/欧州アレルギー臨床免疫学会:The international WAO/EAACI guideline for the management of hereditary angioedema-The 2021 revision and update
  1. カナダHAEネットワーク:The International/Canadian hereditary angioedema guideline. Allergy Asthma Clin Immunol 15: 72, 2019
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 『遺伝性⾎管性浮腫(Hereditary angioedema:HAE)診療ガイドライン 改訂 2023 年版』を参照に、下記の点を加筆・修正した。
  1. 「疾病負荷」という新しい概念が導入された。
  1. 疾病負荷とは、発作がある時もない時も患者が常に直面している肉体的、精神的、社会的な重荷、負担である。
  1. 疾病負荷のない日常生活を可能な限り目指す、というより高い治療目標が設定された。

概要・推奨   

  1. アレルギーなどの明らかな原因のない繰り返す浮腫をみたときには補体C1インヒビター(C1-INH)欠損のある遺伝性血管性浮腫(Hereditary angioedema with C1 inhibitor deficiency; HAE-C1-INHを疑い、補体C4値ならびにC1-INH活性を測定する(推奨度1)
  1. C1-INHが正常の場合にはC1-INH正常のHAE(HAE with normal C1-INH; HAEnCIを疑う。アレルギー性血管性浮腫の除外と血管性浮腫の家族歴があることが診断のために重要である。HAEnCIには診断に役立つバイオマーカーがないため、遺伝子解析が診断の助けになることがある推奨度1)。
  1. HAEとの鑑別が重要な疾患として後天性血管性浮腫(acquired angioedema; AAE)がある。補体C4値、C1-INH活性はHAEと同様低下する補体C1qが鑑別に有用とされHAEでは正常、AAEでは低下するといわれる。しかし実際にはHAEでC1qが低下する場合もあり、鑑別に有用とは必ずしもいえない(推奨度2)
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 遺伝性血管性浮腫(Hereditary angioedema; HAE)はC1-INH遺伝子(SERPING1)を代表とするいくつかの遺伝子異常を原因として、四肢、腸管、咽頭・喉頭など全身に発作性浮腫を繰り返す遺伝性疾患である。
 
HAEの病態

 HAEにおける血管性浮腫(angioedema)の主たるメディエーターはブラジキニン(Bradykinin)である。長い間、HAEの唯一の原因であると考えられていたC1-INHは、名前のようにC1を抑制して補体活性化を制御するのみならず、そのほかにも様々な分子を抑制してブラジキニン産生を制御する。ブラジキニン血管内皮細胞のブラジキニンB2受容体(Bradykinin B2 receptor)に結合して血管透過性を上げる。
凝固XII因子(Factor XII)の変異(p.Thr328Lysなど)は機能亢進を来し血漿カリクレインがより多く産生される。その結果、ブラジキニンが過剰に産生されると考えられる。変異プラスミン(p.Lys330Glu)はHMWKを直接切断することが可能になってブラジキニンを多く産生させると考えられている。アンジオポエチン1(ANGPT1)はその受容体TIE2を介してブラジキニンB2受容体の機能を抑制している。アンジオポエチン1の変異によってブラジキニンB2受容体への抑制作用が障害される。ブラジキニンは高分子キニノーゲン(High Molecular Weight kininogen)がカリクレイン(Kallikrein)によって切断されて生じるが、その過程にはキニン系のほか、凝固XII因子やプラスミンなどの凝固・線溶系もかかわっている。ミオフェリン(MYOF)の変異によってVEGF受容体2(VEGFR2)の機能が亢進して浮腫が生じる。またヘパラン硫酸3-O-硫酸基転移酵素6(HS3ST6)の変異は細胞表面のヘパラン硫酸の異常を生じ結果的に高分子キニノーゲンからのブラジキニン産生を亢進させると推察されている。2024年になって新たに、ブラジキニンやC5aの分解酵素のカルボキシペプチダーゼN(CPN)の変異、VEGFR2のシグナル抑制にかかわるDisabled homolog 2 interacting protein (DAB2IP)の変異が報告されている。
補体活性化の結果生じるC3a、C5aなどの分解産物は炎症を強力に誘導する。HAEにおける血管性浮腫などの病態に何らかの役割を果たしている可能性も否定できない。HAEにおいて遺伝子異常が報告されている分子を青で示す。

出典

堀内孝彦ら:遺伝性血管性浮腫(Hereditary angioedema:HAE)診療ガイドライン改訂2023年版. 補体60(2):103-131, 2023
 
  1. HAE with C1-INH deficiency(HAE-C1-INH)はすべての人種に男女の差なく報告されており、頻度は5万人に1人とされる[1]
  1. C1-INHに異常がないHAE(HAE with normal C1-INH; HAEnCI)はHAE-C1-INHに比べてかなり少ないとされるが正確な頻度は不明である。原因遺伝子としては、凝固XII因子(F12)、プラスミノーゲン(PLG)、アンジオポエチン1(ANGPT1)、キニノーゲン1(KNG1)、ミオフェリン(MYOF)、ヘパラン硫酸3-O-硫酸基転移酵素6(HS3ST6)、カルボキシペプチダーゼN(CPN)、Disabled homolog 2 interacting protein(DAB2IP)遺伝子が報告されているが、原因遺伝子が不明の場合も多い。
  1. わが国でもHAEnCIが報告されているが、PLG遺伝子異常のみ報告されている[2]。欧米のHAEnCI患者において約4分の1を占めるF12遺伝子異常はわが国ではまったく認めないことから、HAEnCIの病因には明らかな人種差が認められる[3]
  1. HAEの病態に共通する病態と考えられているのはブラジキニンの過剰産生であり、その結果血管透過性が亢進してさまざまな部位に発作性浮腫を生じる[4]
 
HAE-C1-INHとHAEnCIの臨床所見

出典

Hashimura C, Kiyohara C, Fukushi JI, Hirose T, Ohsawa I, Tahira T, Horiuchi T.
Clinical and genetic features of hereditary angioedema with and without C1-inhibitor (C1-INH) deficiency in Japan.
Allergy. 2021 Nov;76(11):3529-3534. doi: 10.1111/all.15034. Epub 2021 Aug 12.
Abstract/Text
PMID 34343365
 
  1. 皮膚の場合は顔面や口唇、四肢に限局して生じる指圧痕を残さない浮腫(non-pitting edema)として気づかれる。
 
HAEによる手の突発性浮腫

30歳代女性、右手全体の圧痕を残さない突発性浮腫

出典

著者提供
 
HAEによる口唇の突発性浮腫

30歳代女性、突発性の口唇浮腫

出典

著者提供
 
  1. 腸管に浮腫が起きれば激烈な腹痛を生じ、喉頭に浮腫を生じると呼吸困難や窒息を来すため、救急を受診することもまれではない。
 
腹部CT所見

HAEの腸管浮腫による腹痛発作は激烈である。急性腹症の鑑別疾患の1つとして知っておくべきである。
a, b:造影CTで均質な壁肥厚と低吸収の粘膜下浮腫を伴う回腸領域を示す。
c:造影CTで著明な低吸収の粘膜下浮腫と空腸ループを含む周囲の腸間膜浸潤を伴う腸壁肥厚を示す。

出典

This article was published in Atlas of GASTROINTESTINAL IMAGING: Radiologic-Endoscopic Correlation, Kim, David H., MD, 143-209, Copyright © Elsevier 2007.
 
  1. 適切に対処されなかった場合、喉頭浮腫の致死率は30%といわれる[5]
 
下顎矯正術後に発症した喉頭浮腫

18歳男性、下顎矯正術施行後30時間で、重篤な顔面、咽頭、喉頭浮腫を呈し、緊急の気管挿管が行われた(a)。検査の結果HAEと診断された。CT検査にて、気管チューブ(円形)と、その周囲の組織の広範な浮腫を認める(b)。
This article was published in Journal of oral and maxillofacial surgery, Vol.71, No.4, Cifuentes J, et al., e185-e188, Copyright © Elsevier 2013.

出典

Cifuentes J, Palisson F, Valladares S, Jerez D.
Life-threatening complications following orthognathic surgery in a patient with undiagnosed hereditary angioedema.
J Oral Maxillofac Surg. 2013 Apr;71(4):e185-8. doi: 10.1016/j.joms.2012.11.023.
Abstract/Text As described in the literature, hereditary angioedema (HAE) is an autosomal dominant disease that presents with recurrent events of angioedema caused by a) deficiency or b) functional alteration of the plasma protein C1 inhibitor (C1-inh); this enzyme is involved in the regulation of the complement, kallikrein-kinin, fibrinolytic, and coagulation systems. HAE is characterized by episodes of edema in the larynx, facial structures and tissues, gastrointestinal tract, or extremities. Laryngeal edema has been reported to occur predominantly after oral surgery. We describe the case of an 18-year-old Asiatic male, reporting an unremarkable medical history, who experienced complications following orthognathic surgery. Thirty hours post-op, the patient developed severe facial, pharyngeal, and glottic edema that compromised the airway, and an emergency tracheal intubation was performed. He was tested for C1-inh plasma levels, showing a sub-normal concentration and indicating a diagnosis of HAE. The patient received fresh-frozen plasma and improved throughout the day as his condition stabilized. Several cases of HAE following oral surgery have been reported, but, to the authors' knowledge, this is the first case reported following orthognathic surgery. This patient's treatment will be described, and a literature review of the disease and management methods will be provided.

Copyright © 2013 American Association of Oral and Maxillofacial Surgeons. Published by Elsevier Inc. All rights reserved.
PMID 23507325
 
  1. 顔面浮腫を生じ、最終的に遺伝性血管性浮腫と診断された症例
  1. 病歴:30歳女性。16歳頃から四肢に突発性浮腫が出現。顔面浮腫にて当科受診。妹も同様の発作あり。
  1. 診察:顔面に圧迫してもあとの残らない浮腫(non-pitting edema)を認める。
  1. 診断のためのテストとその結果:C4 <2 mg/dL(正常値11~34)、CH50 <8 U/mL(正常値20~50)、C3 124 mg/dL(正常値71~135)、C1-INH活性 <25%(正常値70~130)、C1-INH抗原 9 mg/dL(正常値11~26)、C1q <2 mg/dL(正常値8.8~15.3)
  1. 治療:ベリナートP静注用500を2バイアル静注
  1. 転帰:症状は軽快して帰宅
  1. コメント:この症例は、経過と検査結果、治療への反応性など典型的であるが、唯一C1q低下のみ非典型的であった。C1q低下は教科書的には後天性血管性浮腫の所見とされる。
    確定診断のため、遺伝子解析を施行、C1-INHに1アミノ酸置換の変異を認めHAE1型と診断した。
 
発作時と正常時の写真

出典

著者提供
問診・診察のポイント  
  1. 10~20歳代に顔面や四肢の浮腫、腹痛、喉頭浮腫などの症状が初めて出現し、その後繰り返すことが多い[6]
 
 
  1. 症状は発作性であり、通常は24時間で完成し、3日から数日で完全に治る。

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
堀内孝彦 : 講演料(CSLベーリング(株),モデルナ・ジャパン(株))[2024年]
監修:上阪等 : 特に申告事項無し[2024年]

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