今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 若倉雅登 井上眼科病院

監修: 沖波聡 倉敷中央病院眼科

著者校正/監修レビュー済:2023/07/19
参考ガイドライン:
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 参考ガイドラインとして挙げていた「眼瞼けいれん診療ガイドライン in press」を第2版(2022)へ更新した(大きな変更なし)。

概要・推奨   

  1. 眼瞼けいれんは、神経学的には局所ジストニアに属し、臨床的説明としては「眼輪筋のれん縮による不随意的閉瞼」がその本質である。
  1. 症状としては3つの柱からなり、①運動異常としての開瞼困難、瞬目異常、②感覚異常(感覚過敏)としての羞明、眼不快感、乾燥感など、さらに、③精神神経異常として抑うつ、焦燥、不安、不眠が症例により種々の程度で出現する。
  1. 従来の疾患概念としては①は必須と考えられていたが、①が目立たないまたは欠く例で②、③が全面に出る例がある。これを本症として考えるか、別に分類するかは議論がある。

病態・疫学・診察 

疫学情報・病態・注意事項  
  1. 眼瞼けいれんは、神経学的には局所ジストニアに属し、臨床的説明としては「眼輪筋のれん縮による不随意的閉瞼」がその本質である。症状としては3つの柱からなり、①運動異常としての開瞼困難、瞬目異常、②感覚異常(感覚過敏)としての羞明、眼不快感、乾燥感など、さらに、③精神神経異常として抑うつ、焦燥、不安、不眠が症例により種々の程度で出現する。
  1. 従来の疾患概念としては①は必須と考えられていたが、①が目立たないまたは欠く例で②、③が前面に出る例がある。これを本症として分類するか、別の疾患として考えるかは議論がある[1]。今後の研究における大きなテーマの1つである。
  1. 本症は、本態性、薬物性、症候性に分けられ、男女比はおよそ1:2~2.5、40~50歳以上に多く、軽症例に対する理解が深まり、決してまれな疾患でないことが認識されてきている[2]
  1. 重症例では、眼周囲、口輪筋など口の開閉に関わる筋や、笑筋、舌、咽頭、頚部筋にまで及ぶ不随意運動、つまりジストニアがみられる。眼瞼けいれん+顔面・頭頸部のジストニアをメージュ(Meige)症候群と称するが、眼瞼けいれんと同義で扱われることもある。
 
  1. 発症のメカニズム
  1. 眼瞼ジストニアでは特に視床において有意な糖代謝亢進がみられたとする研究[3][4]があり、特に本症の愁訴として非常に高頻度である羞明の原因は視床の過活動にある可能性があり、中枢性羞明といえる。本症の機能画像研究からは、視床のみならず、広義の基底核(尾状核、被殻、淡蒼球、黒質、視床下核)複合体と補足運動野、視覚野、前部帯状回など大脳皮質とで形成されるサーキットの異常が報告されている[5]
 
  1. 薬物性とは(参考文献:[6]
  1. 遅発性ジスキネジアと同じスペクトラムの局所型と位置づけられるが[7]、遅発性ジストニアでは主として抗精神病薬の長期投与が原因であるのに対して、薬物性眼瞼けいれんでは、そうした薬物[8]に加え、特に日本では、抗不安薬、睡眠導入薬での報告が多くなっている[9][10]。しかも、その減量、中止により改善する例も確実に存在する[11]。一方、離脱症候群として羞明など感覚過敏の記載もある。なお、薬物性では、発症年齢が10~40歳代の症例など若年発症も少なくない。
 
  1. 薬物以外の危険因子について
  1. 実証的研究はあまり進んでいないが、家族性[12]や、環境化学物質[13]、また精神的ストレスの存在[14]を指摘するものもある。
  1. また、日常においても精神状態と症状との関係は深く、ガイドラインでも、「特に好ましくないことを想起したり、好ましくない人と接すると悪化することが多い」と指摘している。
問診・診察のポイント  
  1. 表情は、重症例では眼周囲、眉間、鼻根に皺を寄せて、まぶしそうな「しかめ面」をしている(<図表>)。開瞼しようとしても開瞼できないか、眼周囲の筋肉が不随意に動き(ジストニア)、開瞼が困難である。しかし、中等症以下では、このような表情が診察室でみられることは少ないので、表情からの診断は難しい。

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
若倉雅登 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:沖波聡 : 特に申告事項無し[2024年]

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