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著者: 稲光哲明 にゅうわ会及川病院 心療内科

監修: 今井靖 自治医科大学 薬理学講座臨床薬理学部門・内科学講座循環器内科学部門

著者校正/監修レビュー済:2024/12/11
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 不安症の治療に、海外ではSNRI、新しいSSRI(エスシタロプラム)やSSRI+セロトニン受容体調節作用のあるボルチオキセチンなどの薬剤、さらに経頭蓋磁気刺激法の治療法が用いられているが、保険上の適応を考えて本項目では追加記載しなかった。ただ、最近、呼吸法と瞑想法をあわせた心理療法であるマインドフルネスを治療法として追加した。
  1. 心臓神経症患者では薬物に対する過敏性があり、治療開始時のとくにSSRIに対する抵抗が見られることがあり、漢方薬の治療を追加した。
  1. COVID-19の流行下で心臓神経症患者が増加している。さらに感染者の症状に起因したり、感染治癒後の後遺症として心臓神経症の症状を呈することが知られている。

概要・推奨   

  1. 胸痛を主訴に循環器科を受診する患者の30~60%は心臓神経症である。一方で、正確な診断がつけられず、専門的な治療を受けられないまま経過している患者が多い(O、推奨度2)。
  1. 胸痛を主訴とする患者で心臓神経症を積極的に疑う症例としては、若い女性で強い不安を訴えて多彩な自律神経症状を伴っている場合である。器質的心疾患患者との不安の違いは、心臓への注意集中と症状に対する不安の程度が強いことである(O、推奨度2)。
  1. 冠動脈疾患患者でも不安やうつを伴うことが多く、不安やうつは冠動脈疾患のリスク因子であり、合併症であり、予後不良因子であることから治療介入が必要となる(O、推奨度2)。
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 心臓神経症は、胸痛や動悸などの心血管系愁訴があるものの、それを説明するだけの器質的疾患が認められない場合に診断する。広義には、器質的疾患や不整脈などを伴っていても、患者の訴える症状が明らかに強い場合も含まれる[1]
  1. 心臓神経症の定義:表<図表>
  1. 不安を基調とする神経症圏の病態を「心臓神経症」、体質的素因が強く自律神経に基づく身体症状が強い病態を「神経循環無力症」と区別する考え方もある[1]
  1. 上のような病態に対して歴史的にはさまざまな病名が報告されてきた。「ダ・コスタ症候群」、「努力症候群」、「過敏心」、「兵隊心」、「戦争神経症」、「神経循環無力症」などの病名は戦時中の兵士で報告された病名であり、「自律神経失調症」、「機能性心血管障害」、「多動心症候群」「β-アドレナリン性高心拍出性循環状態」は自律神経機能異常、特に交感神経機能亢進状態に注目した病名である。その他に、「神経衰弱症」、「不安神経症」の病名は精神面での疲労や不安に焦点を当てた病名である。
 
  1. 現在、「心臓神経症」の病名は用いられることが少なくなり、「パニック症」「双極性障害および関連障害群」「抑うつ障害群」「身体症状症および関連症群」「病気不安症」などのDSM-5の診断名がそれぞれの診断基準で用いられている[2]
  1. 心臓神経症に相当する精神障害の種類とその診断基準(要約)と治療:表<図表>
  1. ICD-10では、「身体表現性自律神経機能不全」 の「心臓および血管系の項目」として、ダ・コスタ症候群や神経循環無力症とともに「心臓神経症」が挙げられている[3][4]が、パニック症やうつ病などによる心血管系の症状を呈する場合を含めて考えるのが一般的である[1]
  1. ICD-10にみられる心臓神経症の診断ガイドライン(診断: >詳細情報 「DSM-5による精神障害の評価:」参照)
  1. 一方で、心筋梗塞や心不全などの重症心疾患では死の恐怖から、心臓神経症が起こりやすい。
  1. 心臓に対する病的関心(とらわれ)の度合いには、心臓病を過度に心配して通常の病状説明では納得しない症例(病気不安症)から、妄想的に心臓病を確信しており修正が困難な症例(妄想性障害-身体型)もある[2]
  1. 病前性格、心身疲労やストレス、心理的葛藤、死への不安が病態に関与しており、不安中枢(扁桃核)と自律神経交感神経中枢(視床下部)の神経興奮状態が病気の本態と考えられる。
 
心臓神経症の成立機序(森田療法の神経症理論による)

心臓神経症の発症には、準備因子、発症(誘発)因子、持続・増悪因子がある。準備因子としては、性格、幼少時の分離不安体験、現実生活での慢性的な心理的ストレスがあり、発症因子には、急性の身体的または精神的ストレスによる偶発的な初発症状がある。
こうしていったん発症すると、不安と症状の悪循環(精神交互作用と呼ばれている)が形成されて、心臓神経症が完成することになる。そして、この悪循環は持続、増悪因子となる。長期間の悪循環の持続は、うつ状態を引き起こして、社会生活、日常生活、職業的生活が営めなくなり、疾患が固定化して難治性となる。
 
参考文献:
稲光哲明:パニック障害.久保千春,中井吉英,野添新一編.現代心療内科学.永井書店,2003;510.

出典

著者提供
 
  1. 心臓神神経症の頻度は不明であるが、代表的な類縁疾患であるパニック症については、生涯有病率で1~3%、胸痛で救急部を受診する患者の17~25%であり、循環器専門の診療科における外来患者の30~60%が心臓神経症やうつ病であるといわれる。年齢では思春期より30歳代前半までが多く、そのほかに中年期にも1つの山がある。女性が男性の2倍多い[5][6]
  1. 慢性になると社会生活が営めなくなって難治化しやすい。重症うつ病や薬物依存などを合併してくる[5][6]
 
  1. 心臓神経症においては交感神経機能が亢進した状態にある(O)。
  1. パニック症をはじめとする不安症患者の自律神経機能が検討されている。
  1. 安静時における差については議論があるが[7]、実験的ストレス負荷時には、心拍数の上昇[8][9]、血圧の上昇[10]、血中エピネフリンの増加[7]、心拍変動の低下[9]、心拍変動スペクトル解析における中周波成分(一般には低周波成分に入る領域)の上昇[11]などが報告されている。このことから、パニック症では少なくともストレス下では交感神経機能が亢進し、副交感神経機能が減弱していることが考えられる。
  1. 追記:心臓神経症では、ストレスを受けたときに交感神経機能が亢進し、副交感神経が減弱した状態にある。
 
  1. 胸痛を主訴に循環器科を受診する患者の30~60%は心臓神経症である。一方で、正確な診断がつけられず、専門的な治療を受けられないまま経過している患者が多い(O、推奨度2)。
  1. 胸痛を訴える患者の30~40%は、心血管系の疾患ではなく心臓神経症(文献ではパニック症や恐怖症)やうつ病と診断される[12][13]
  1. 循環器科ならびに救急外来で胸痛を主訴として来院する患者のうち、約25~57%がパニック症とみられている[14][15][16]
  1. しかし、多くの患者は循環器検査を受けても診断がつかないため、非定型胸痛、非心臓性胸痛、非狭心症性胸痛などと診断名がつけられて[17]、一般的な循環器治療が続けられており、心臓神経症(文献ではパニック症、うつ病、恐怖症などの精神障害)を疑われて専門医を紹介される症例は少なく、したがって適切な治療を受けられないまま、複数の循環器専門医を訪れて、同一の循環器系検査を複数回受けている患者が多い[14][18]
  1. 追記:胸痛などの心血管系愁訴がある患者に、心臓神経症(できればDSM-5による精神障害)の診断がつけられて、適切な治療が開始されることが望まれる。
 
COVID-19流行と心臓神経症
  1. COVID-19流行は感染した人にとっても、感染しなかった人にとっても心臓神経症患者の増加に影響を与えたことが報告されている[19][20]
  1. 1) 感染流行下で身体症状への注意がとらわれを強化して、心臓神経症の発症や悪化につながった。
  1. 2) 中等症から重症のCOVID-19感染症に罹患した場合に、死への恐怖が高まり心臓神経症の症状につながった(心的外傷やストレスが原因でおこる障害)。
  1. 3) 呼吸器症状が発症してβ刺激薬(吸入薬や経口薬)を使用した場合に、気管支喘息に合併する症例と同様に、心臓神経症の症状を悪化させた。
  1. さらに、感染拡大による外出制限や自宅療養により回避行動が強化されて治癒の遷延や症状の悪化につながる。また、感染治癒後も長引く症状のなかに心臓神経症と同様の呼吸苦、非定形胸痛、動悸などの症状を呈することがある。
問診・診察のポイント  
  1. 身体症状、すなわち動悸、息切れ、胸痛、胸部不快感、めまい、疲労感、発汗、ふるえ、頻脈など自律神経を中心とした症状の有無について聴取する。

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
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(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
稲光哲明 : 特に申告事項無し[2025年]
監修:今井靖 : 講演料(第一三共(株)),原稿料((株)南江堂)[2025年]

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