今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 金口翔 横浜市立大学医学部 循環器・腎臓・高血圧内科学

著者: 田村功一 横浜市立大学医学部 循環器・腎臓・高血圧内科学

監修: 岡田浩一 埼玉医科大学 腎臓内科

著者校正/監修レビュー済:2024/03/06
参考ガイドライン:
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023」、「CKD治療におけるSGLT2阻害薬の適正使用に関するrecommendation」を基に下記の点について追記した。
  1. CKD stage G4~5患者における使用中のRAS阻害薬の対応について
  1. 腎硬化症に対するSGLT2阻害薬の選択について
  1. SGLT2阻害薬の使用にあたっての注意点

概要・推奨   

  1. 高血圧歴を有し、尿蛋白が少なく、慢性糸球体腎炎や糖尿病などの基礎疾患のない腎機能障害患者は、腎硬化症である可能性が高い(推奨度2)
  1. 適切な降圧療法は、腎硬化症の進展を抑制する(推奨度1)
  1. 尿蛋白症例では、RAS系阻害薬を中心として、尿蛋白減少を意識した降圧療法を選択すべきである(推奨度2)
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 腎硬化症とは、高血圧(参照: 本態性高血圧症 )にある期間曝露されることにより生じる、腎内の動脈硬化性血管病変(小動脈の内膜肥厚と細動脈の硝子化)に基づく腎障害の総称である。
  1. 末期腎不全患者の透析導入における原疾患として腎硬化症の占める割合は、現在、わが国では18%であり、年々増加傾向にある。
  1. その背景として、約4,000万人ともいわれる高血圧患者が存在しており、特に65歳以上の高齢者では2~3人に1人が罹患している。(参照: 本態性高血圧症 )
  1. 高齢化の進んでいるわが国では、今後高血圧患者がさらに増加することが予測され、それは腎硬化症から透析へと至る患者が増加することを意味する。透析患者の増加をくい止めるためにも、的確な降圧治療が重要である。
  1. 病理学的変化は、腎内の小動脈、細動脈での動脈硬化が進展することによる腎血流低下からの糸球体虚血性変化(糸球体硬化)が主体であり、二次的な腎間質障害も加わり腎不全に至る。
  1. 腎硬化症は、臨床的には発症形式により分類される。
  1. 良性腎硬化症では、加齢や持続する高血圧を背景に緩やかに進行する腎機能障害と、比較的軽度な臨床症状を呈する。
  1. 悪性腎硬化症では、高度の高血圧とともに急速に進行する腎機能障害や、高血圧性網膜症、脳血管障害、心不全などの急速な臨床症状を呈する。
  1. 良性腎硬化症と悪性腎硬化症の病態はまったく異なり、一般的に「腎硬化症」と呼ぶ場合は良性腎硬化症を指す。
 
  1. 高血圧歴を有し、尿蛋白が少なく、慢性糸球体腎炎や糖尿病などの基礎疾患のない腎機能障害患者は、腎硬化症である可能性が高い(推奨度2)
  1. まとめ:腎硬化症の大規模臨床試験はアフリカ系アメリカ人を対象としたAASK試験のみであるが、腎硬化症の診断基準について検証されている[1]
  1. 代表事例:AASK試験においては、(二次性および悪性高血圧を除く)高血圧歴を有し、高度な蛋白尿(2.5 g/日以上)および糖尿病や慢性糸球体腎炎などの基礎疾患を伴わないという腎硬化症の診断基準が用いられた。39例に対し腎生検を施行したところ、28例に動脈硬化の所見が認められた。また間質の線維化と血清Crの間には強い相関が認められた。
  1. 結論:著明な尿蛋白がなく、軽度から中等度の腎機能障害を示した非糖尿病性アフリカ系アメリカ人に対する高血圧性腎症(=腎硬化症)との臨床的診断は、組織学的にも一致していることが明らかにされた。
  1. 追記:腎硬化症の唯一の大規模臨床試験であるAASK研究において、高血圧に起因する腎硬化症患者が適切に対象とされていることが本論文により証明されている。
問診・診察のポイント  
  1. 軽~中等症の本態性高血圧に長期間曝露されることにより腎硬化症へと進展することが多く、高血圧性腎症とも呼ばれる。(参照: 本態性高血圧症 )

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※同効薬・小児・妊娠および授乳中の注意事項等は、海外の情報も掲載しており、日本の医療事情に適応しない場合があります。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適応の査定において保険適応及び保険適応外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適応の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
金口翔 : 未申告[2024年]
田村功一 : 未申告[2024年]
監修:岡田浩一 : 講演料(アステラス製薬(株),アストラゼネカ(株),小野薬品工業(株),田辺三菱製薬(株),日本ベーリンガーインゲルハイム(株),協和キリン(株)),研究費・助成金など(中外製薬(株),協和キリン(株))[2024年]

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