今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 要伸也 吉祥寺あさひ病院 副院長

監修: 岡田浩一 埼玉医科大学 腎臓内科

著者校正/監修レビュー済:2025/02/26
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、前版改訂時から現在までに新たに発表されたエビデンスを追記した。
 

概要・推奨   

  1. AG正常型代謝性アシドーシスの診断には、高クロール(Cl)血症(血清Cl濃度>110 mEq/L)の存在が手がかりになる(推奨度1)
  1. 血液ガス分析の際には、低Alb血症で血清AGが減少することを考慮に入れる(推奨度2)
  1. 1型RTAとそれ以外(下痢など)の代謝性アシドーシスとの鑑別には、尿pHおよび尿アニオンギャップ(UAG=尿中NaKCl)が有用である(推奨度2)
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 尿細管性アシドーシス(RTA)は、腎尿細管の異常により代謝性アシドーシスを生ずる疾患群である。RTA1型(遠位、低カリウム [K] 血症)、2型(近位)、4型(遠位、高K血症)に分けられ、その原因疾患も多岐にわたる。
  1. RTAの中で、4型RTAが最も多くみられる。Fanconi症候群も比較的多いが、1型RTAやFanconi症候群を伴わない2型RTAの頻度は低い。しかし、有病率や発症率に関する疫学データはない。
  1. RTAの診断・治療には、病態の理解も含めた専門的知識が必要になる。したがって、原因不明の高クロール(Cl)血症あるいは代謝性アシドーシスがみられる場合、特に、低K血症、高K血症およびほかの電解質異常やそれぞれに特徴的な所見のみられる場合(難聴、視力障害、くる病、腎結石など)は、腎臓専門医あるいは小児科腎臓専門医に相談する。
 
低K血症性遠位尿細管性アシドーシス(古典型:1型RTA):
  1. 遠位尿細管の尿酸性化が選択的に障害されたものであり、通常低K血症を伴う[1]
  1. 尿酸性化障害は、集合管の間在細胞において、H+イオン分泌が不十分である(secretory defect)か、細胞内への逆移行により管腔内のH+イオン濃度を保てない(gradient defect)ことが原因である(<図表><図表>)。このため管腔内のpHが高くなり、滴定酸(H2PO4-)とNH4+の尿中排泄が障害される。アシドーシスは進行性で、徐々に酸が蓄積していくため、放置すれば高度酸血症(HCO3- 10 mEq/L以下)になり得る。
 
遠位尿細管(集合管の間在細胞A型)におけるイオン輸送

集合管における酸分泌メカニズムを示す。H+ポンプにより管腔内に分泌されたHイオンは、NH3(アンモニア)およびHPO4-(滴定酸)と塩基を形成し、尿中に排泄される。
 
参考文献:
Taal MW, Chertow GM, Marsden PA, et al. Brenner and Rector's The Kidney. 9th ed, 2011.

出典

参考文献を基に編集部で作成
 
  1. 臨床的には、アシドーシス、骨量低下、アルカリ尿・クエン酸尿中排泄低下、高Ca尿症を背景とした尿路結石、腎石灰化の所見が目立つ。腎機能低下もみられる[2]。低K血症が高度になれば、筋麻痺が生じることがある。
  1. 長期にわたると、小児例では成長障害・くる病、成人例では骨軟化症、骨粗鬆症がみられる[3][4]
  1. 診断は、明らかな酸血症があっても早朝尿(通常最も酸性)のpHが5.5以上であることが手がかりとなる。治療は通常少量のアルカリでよいが、Kも同時に補給する必要がある。
  1. 不完全型の場合は、酸血症が軽度またはみられないことがある[1][5]
 
近位尿細管性アシドーシス(2型RTA)とFanconi症候群:
  1. 近位尿細管の異常により、この部位における重炭酸イオンの再吸収が障害された状態である。
 
近位尿細管のイオン輸送と2型RTA

近位尿細管が全般的に障害されれば、Na-H逆輸送体(2型RTA)だけでなく、他のイオン輸送(リン、グルコース、アミノ酸、尿酸の再吸収)も障害されてFanconi症候群を呈する。
 
参考文献:
Taal MW, Chertow GM, Marsden PA, et al. Brenner and Rector's The Kidney. 9th ed, 2011.

出典

参考文献を基に編集部で作成
 
  1. 血漿HCO3がある閾値(通常12~18 mEq/L)に達すると、それ以後は通常進行しない。遠位尿細管が正常であれば尿の酸性化能も正常に保たれるため、尿pHを 5.5未満に下げることができる。
  1. 先天型を除くと、2型RTAが単独でみられることは少なく、近位尿細管機能全般が障害されてFanconi症候群を呈することが多い。Fanconi症候群では、糖尿、アミノ酸尿、低尿酸血症、低リン血症によるくる病・成長障害、骨軟化症などの骨障害をしばしば合併するが、1型RTAと異なり腎結石の合併は少ない。
  1. 確定診断は、重曹負荷による。重曹投与により血漿HCO3-濃度を正常化させたときの重炭酸排泄率(FEHCO3)15%以上、が診断基準である。成人では通常、単独型の2型RTAの治療は必要ないが、小児ではアシドーシスにより成長が障害されるため、アルカリが投与される。ただし、1型RTAと異なり必要量が多く、正常化させるのは困難である。Fanconi症候群を伴う場合は、そのほかリンおよびビタミンDの補給が必要となる。
 
高K血症性遠位尿細管性アシドーシス(4型RTA):
  1. 遠位尿細管における酸排泄のほか、K分泌が同時に障害された状態であり、1型RTAと異なり高K血症を来す。高K血症はアンモニアの産生障害を来し、それ自体アシドーシスの一因ともなる。
 
遠位尿細管性アシドーシス(1型RTAと4型RTA)

1型および4型RTAは間在細胞の酸分泌障害により生ずる。主細胞が正常に働けば、K分泌は亢進し低K血症(1型RTA)となるが、アルドステロン不足または尿細管障害に起因するアルドステロン抵抗性のため、この部分からのK分泌が制限されれば高K血症(4型RTA)となる。
 
参考文献:
Taal MW, Chertow GM, Marsden PA, et al. Brenner and Rector's The Kidney. 9th ed, 2011.

出典

参考文献を基に編集部で作成
 
  1. 原因は大きく分けて、①アルドステロン分泌低下と、②遠位尿細管側の異常(アルドステロン不応症)に分けられる。前者は、レニン分泌低下による二次的なもの(低レニン性低アルドステロン症)と、アルドステロンの一次的分泌障害に分けられ、後者は機能障害 (voltage-dependent defect) による場合と、全般的な器質障害による場合がある(酸分泌障害を伴うため1型RTAに分類されることもある)。
  1. 臨床的には、高K血症が最も問題になる。したがって、治療もアシドーシスだけでなく、カリウム制限などの高K血症対策が重要となる。
問診・診察のポイント  
  1. 家族歴:一次性のRTAが疑われる場合には、腎疾患や腎結石の家族歴を聴取する。

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
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(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
要伸也 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:岡田浩一 : 講演料(アステラス製薬(株),アストラゼネカ(株),小野薬品工業(株),田辺三菱製薬(株),日本ベーリンガーインゲルハイム(株),協和キリン(株)),研究費・助成金など(中外製薬(株),協和キリン(株))[2024年]

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