今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 久保健児 日本赤十字社和歌山医療センター 感染症内科部・救急科部

監修: 山本舜悟 大阪大学大学院医学系研究科 変革的感染制御システム開発学

著者校正/監修レビュー済:2025/03/12
参考ガイドライン:
  1. Practice guidelines for the diagnosis and management of skin and soft tissue infections: 2014 update by the Infectious Diseases Society of America https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24973422/
  1. 海外渡航者のためのワクチンガイドライン2019
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. イヌ咬傷の一次縫合に関するランダム化比較試験の知見を追加するなど、文献を更新した。

概要・推奨   

  1. 創部は、生理食塩水または水道水を使って、シリンジで圧をかけて十分に洗浄するよう推奨される(推奨度1)
  1. 創部は、待機的一次縫合にするよう推奨される(推奨度2)。ただし、イヌ咬傷で、①感染リスクが高くなく(穿刺創ではない等)、②十分な洗浄・デブリードマンができていれば、一次縫合してもよい(推奨度2)
  1. 感染の成立していない(=汚染のみ)ヒト・イヌ・ネコ咬傷に対して、感染リスクの高い症例では、予防的抗菌薬投与(第1選択薬:アモキシシリン/クラブラン酸)が推奨される(推奨度1)
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  1. Pasteurella spp.は、咬傷以外に肺炎など全身の各臓器に病像を呈することがあり、イヌ・ネコとの接触歴があれば疑う(推奨度1)。また、全身の紫斑や急速に悪化する病像でイヌ・ネコとの接触歴があれば、 Capnocytophaga canimorsus を疑う(推奨度1)

病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
日本では:[1]
  1. 約1,000万匹のイヌが飼育され、年間約5,000~6,000件のイヌ咬傷が保健所を通じて環境省に報告され、死亡例は年間1~4人である。ただし全数把握ではないので、氷山の一角と考えられる。
 
米国では:[2]
  1. 疾患の頻度は高く、一生涯で2人に1人が受傷し、90%はイヌ・ネコによる。
  1. 約6,200~6,800万匹のイヌがペットとして飼われていて、年間約470万件のイヌ咬傷があり、約80万人が受診し、約6,000人が入院し、死亡例は年間12人という報告がある
  1. ER部門を受診した約37万人の集計では、5~9歳が15.2%と最多で、14歳以下の小児が42.0%を占めていた。受傷部位は、0~4歳の最多は頭頚部(64.9%)、15歳以上は上肢(55.4%)であった。職業関連(郵便配達、動物病院、電気・ガスのメーターを読む、家屋修繕など)は16歳以上のうち8.0%であった。
 
  1. 咬傷による感染症は、患者の皮膚および咬んだ動物・ヒトの口腔内に由来する、好気性菌と嫌気性菌の混合感染であり、これらをカバーするように推奨される(注意:嫌気性菌は検出されにくいため培養で同定されなくてもカバーするほうがよい)(推奨度1)
  1. 咬傷は混合感染が多いことを示したprospective研究がある。
  1. 1999年のTalanらの研究にて、米国18カ所の救急外来でイヌ・ネコ咬傷による感染症の原因細菌を集計した結果、50例のイヌ咬傷と57例のネコ咬傷において、中央値で5菌種(0から16菌種)が検出された(抗菌薬投与歴あり・骨髄炎例・切断例を除く)。
  1. これは微生物研究施設での培養結果を含めた集計だが、病院内細菌検査室のみに限ると中央値で1菌種(0から5菌種)の検出となり有意に検出率が低かった(P<0.001)。
  1. 好気性菌と嫌気性菌ともに検出されたのは56%、好気性菌のみは36%、嫌気性菌のみは1%、検出なしは7%であった。
  1. 最多の原因菌は、Pasteurella spp.で、イヌの50%P. canisが多い)、ネコの75%P. multocidaが多い)を占めた。
  1. ほかに多かったのは、好気性菌:Streptococci、 Staphylococci、 Moraxella、 Neisseria、嫌気性菌:Fusobacterium、 Bacteroides、 Porphyromonas、 Prevotella などであった[3]
  1. また、2003年のTalanらの研究にて、50例のヒト咬傷感染症において、中央値で4菌種(好気性菌3菌種、嫌気性菌1菌種)が検出された。好気性菌と嫌気性菌ともに検出されたのは54%で、好気性菌のみは44%、嫌気性菌のみは2%であった。
  1. 内訳は、 Streptococcus anginosus (※Viridans streptococcus の1グループ、以前のS. milleri )(52%)、 Staphylococcus aureus (30%)、 Eikenella corrodens (30%)、 Fusobacterium nucleatum (32%)、 Prevotella melaninogenica (22%)、 Candida spp. (8%)であった。
  1. clenched-fist injury では、Fusobacterium、 Peptostreptococcus、 Candida spp. が多かった[4]
  1. 原因微生物の想定および同定の際には、これらのことを念頭に置くよう推奨される。
 
イヌ・ネコ咬傷の原因微生物

1994年4月~1995年、米国カリフォルニアのUCLAなど18カ所の救急外来で、イヌ・ネコ咬傷により皮膚軟部組織感染を発症した症例の培養結果を集計したもの。
 
参考文献:
Talan DA, Citron DM, Abrahamian FM, Moran GJ, Goldstein EJ: Bacteriologic analysis of infected dog and cat bites. Emergency Medicine Animal Bite Infection Study Group. N Engl J Med. 1999 Jan 14;340(2):85-92.

出典

著者提供
問診・診察のポイント  
  1. いつ、何に(ヒトまたは動物)、どこを咬まれたかを確認する。

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
久保健児 : 特に申告事項無し[2025年]
監修:山本舜悟 : 特に申告事項無し[2025年]

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