今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 谷直樹 諏訪中央病院 呼吸器内科

監修: 具芳明 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 統合臨床感染症学分野

著者校正/監修レビュー済:2023/07/19
参考ガイドライン:
  1. 深在性真菌症のガイドライン作成委員会:深在性真菌症の診断・治療ガイドライン 2014
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 慢性肺アスペルギルス症の分類を整理した。
  1. ① 単純性肺アスペルギローマ(simple pulmonary aspergilloma:SPA)② 慢性空洞性肺アスペルギルス症(chronic cavitary pulmonary aspergillosis:CCPA)③ 慢性壊死性肺アスペルギルス症(chronic necrotizing pulmonary aspergillosis:CNPA)の3つに細分化される。
  1. 治療薬に関して、最近の文献の情報から内容を追記した。
  1. 第一選択薬:
  1. 海外のガイドラインでは、アゾール系抗真菌薬を第一選択とし、MCFGはアゾールによる有害事象、耐性等が出現した際の第二選択薬と位置付けている(推奨度2、G)(Patterson TF, et al. Clin Infect Dis. 2016 Aug 15;63(4):e1-e60.)。
  1. アゾール系抗真菌薬:
  1. VRCZとITCZの比較において、VRCZの方が有効性が高い事を示すデータが複数ある(推奨度2)
  1. 英国のCPA 206名を対象とした研究で、VRCZで治療したケースのほうがITCZ群よりもアゾール耐性が低かった(Bongomin F, et al. PLoS One. 2018 Apr 10;13(4):e0193732.)。
  1. また、静注療法後の経口薬での維持療法において、VRCZとITCZを比較した試験では、VRCZの方がITCZより、改善率が高く、再入院率が低く、治療効果不十分で他の薬剤に変更した割合が低いと報告されている。ただし、この試験で粗死亡率に関しては両群で差はなかった(Tashiro M, et al. Clin Infect Dis. 2020 Feb 14;70(5):835-842.)。
  1. ポサコナゾール(PSCZ:ノクサフィル)は、我が国では慢性肺アスペルギルス症に保険適応はないが、慢性肺アスペルギルス症治療に関するデータはある。PSCZで治療された慢性肺アスペルギルス症79名の後ろ向き試験で、PSCZによる改善は、6カ月間治療が継続されたのは61%、12カ月間治療が継続されたのは46%と報告されている(Felton TW, et al. Clin Infect Dis. 2010 Dec 15;51(12):1383-91.)。
  1. イブサコナゾール(2023年3月15日薬価収載:慢性肺アスペルギルス症に対しては保険適応外)については、慢性肺アスペルギルス症の治療に関するデータはない。
  1. その他の薬剤:
  1. MCFGとCPFGと比較においては、国内のⅢ相試験の結果で、有効率が、MCFG 46.7%、CPFG 45.0%と差がなく、有害事象の面でも差はなかった(Kohno S, et al. Eur J Clin Microbiol Infect Dis. 2013 Mar;32(3):387-97.)。
  1. アンホテリシンBに関しては、慢性肺アスペルギルス症患者380名を対象とした静注抗真菌薬に関するメタアナリシスで、アンホテリシンBで治療された143名の患者(116名はL-AMB)の有効性は61%、エキノキャンディンで治療された237名の患者(197名はMCFG)の有効性は58%と報告されている(Bongomin F, et al. Mycoses. 2020 Sep;63(9):921-927.)。
  1. アンホテリシンBの位置付けとしては、アゾール系抗真菌薬使用例における、耐性例、有害事象発生例などを対象として使用する薬剤と考えられる(推奨度2)
  1. アンホテリシンBを使用する場合は、有害事象の観点から、L-AMBが勧められる(推奨度2)

概要・推奨   

  1. 慢性進行性肺アスペルギルス症は、陳旧性肺結核、COPD、間質性肺炎などの呼吸器系基礎疾患、糖尿病、アルコール依存、低栄養、ステロイド治療などの軽度の免疫不全を背景にもつ患者に多い。
  1. 慢性進行性肺アスペルギルス症の診断において、沈降抗体検査が最も有用である。
  1. 慢性進行性肺アスペルギルス症の治療薬の第一選択はMCFGとVRCZである。

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
谷直樹 : 未申告[2023年]
監修:具芳明 : 特に申告事項無し[2023年]

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