今日の臨床サポート

尿道損傷(自己抜去の対応含む)

著者: 野村威雄 中村病院 泌尿器科

監修: 中川昌之 公益財団法人 慈愛会 今村総合病院 泌尿器科顧問

著者校正/監修レビュー済:2021/07/28
参考ガイドライン:
  1. ヨーロッパ泌尿器科学会(EAU):EAU guidelines on urological trauma (2005)
患者向け説明資料
薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、林太祐、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、
著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適用の査定において保険適用及び保険適用外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適用の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
野村威雄 : 特に申告事項無し[2021年]
監修:中川昌之 : 研究費・助成金など(武田薬品工業株式会社)[2021年]

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行った(変更なし)。

病態・疫学・診察

疾患情報(疫学・病態)  
尿道外傷:
  1. 泌尿器外傷の50%程度を占める。
  1. ほとんどは男性であり、女性はまれである。
  1. 転落、交通事故、産業事故、打撲、スポーツ事故などの外傷によるものに加え、経尿道的処置による場合(医原性尿道損傷)がある。
  1. 尿道損傷の程度によりグレードI挫傷(<図表>)、グレードII伸展損傷、グレードIII部分断裂(<図表>)、グレードIV完全断裂(尿道の離解<2cm)(<図表>)、グレードV完全断裂(尿道の離解>2cmあるいは前立腺や腟まで達する)
 
尿道損傷グレードI

尿道延長を認めるが、明らかな造影剤の尿道外溢流を認めない。恥骨結合の解離を合併している。

 
尿道損傷グレードIII

後部尿道損傷部から尿生殖隔膜の上下に造影剤の溢流を認める。

 
尿道損傷グレードIV

膀胱頚部および近位後部尿道損傷部(矢印)から造影剤の溢流を認める。骨盤左半側の垂直方向への偏移を認める。

 
  1. 前部尿道損傷(球部から遠位の尿道)と後部尿道損傷(膜様部から前立腺部尿道)に大きく分類される。
  1. 前部尿道損傷では球部尿道損傷が多く、騎乗型損傷が原因となることが多い。外傷性尿道損傷のうち最も頻度が高い。
  1. 後部尿道損傷では膜様部尿道損傷が多く、ほぼ100%骨盤骨折を伴い緊急性が高い。特に両側恥骨枝骨折に伴うことが多い。
  1. 振子部尿道損傷は、振子部の可動性がよいためまれである。陰茎折症に合併して生じることがある。
  1. 前部尿道損傷では尿道出血に加え、排尿困難、陰茎・陰嚢部の蝶形皮下出血斑などが認められる。
  1. 後部尿道損傷では少量の尿道出血、排尿困難を認め、肛門周囲の輪状出血斑が認められる。出血多量のため前立腺は触知不能となり、出血性ショック状態に陥る可能性が高い。
  1. 尿道造影にて前部尿道損傷では、造影剤の陰嚢あるいは会陰部への浸潤を認め、後部尿道損傷では膀胱周囲への溢流を認める。
  1. 受傷直後の強引な尿道カテーテル挿入は禁忌である。
  1. まずは、膀胱瘻造設を試みる。
 
自己抜去による尿道損傷:
  1. 主に高齢者に多くみられるが、乳幼児にも認められる。
  1. 手術後の不穏・せん妄状態や精神疾患合併患者においても認められる。
  1. 移動時に採尿バッグのチューブが引っ掛かることで、強い力がかかり尿道留置カテーテルが抜去されることがある。
  1. 高齢女性の場合、尿道括約筋の弛緩のために尿道径が開大する場合があり、わずかな外力で尿道留置カテーテルが抜去されることがある。
  1. 男性の場合、尿道留置カテーテルのバルーンが膨らんだまま自己抜去されると膀胱・尿道粘膜の損傷の結果、おびただしい尿道出血を来す場合がある。
  1. 尿道出血に加え、陰茎皮下、陰嚢内、会陰部への出血や尿溢流を認めることがある。
  1. ハサミなどによる尿道留置カテーテル切断による自己抜去では尿道損傷は少ないが、膀胱内異物が生じる場合がある。
  1. バルーンの破裂やカテーテルの切断を引き起こし、カテーテルの一部が膀胱内に残存する可能性がある。
  1. 自己抜去による尿道損傷に伴う尿道出血は、通常は尿道カテーテル再留置による尿道圧迫にて止血されるが、尿道損傷が高度の場合は再留置が困難となり、一時的な膀胱瘻管理が必要となる。
  1. 診断は容易であるが、尿道留置カテーテルが途中で切断されていないか確認することが重要である。
問診・診察のポイント  
尿道外傷:
  1. 受傷機転(骨盤骨折、陰茎・会陰部への外傷など)および外尿道口からの出血から推測可能である。

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