今日の臨床サポート

分娩時大量出血

著者: 神元有紀1) 三重中央医療センター 周産母子センター

著者: 池田智明2) 三重大学 病態解明医学講座生殖病態生理学

監修: 金山尚裕 静岡医療科学専門大学校

著者校正/監修レビュー済:2020/11/12
参考ガイドライン:
  1. 日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会:産婦人科診療ガイドライン産科編2020
患者向け説明資料

概要・推奨   

  1. 産後24時間以内の出血量が、経腟分娩では500ml以上、帝王切開では1000ml以上の場合、もしくは持続する100bpm以上の頻脈、SI≧1.0の場合、子宮双手圧迫、輸液、子宮収縮薬投与などを開始し、系統的に原因検索を行い、原因に即した治療を行う。
  1. 分娩時大量出血に遭遇した場合、直ちにバイタルサインを確認し、可能であれば心電図モニターとSpO2モニターを装着する。
  1. バイタルサイン(脈拍、血圧、SpO2など)に注意し、出血量、尿量を持続的に観察する。
  1. 閲覧にはご契約が必要となります。閲覧にはご契約が必要となります。閲覧にはご契約が必要となります。閲覧にはご契約が必要
薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、林太祐、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、
著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適用の査定において保険適用及び保険適用外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適用の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
神元有紀 : 特に申告事項無し[2021年]
池田智明 : 特に申告事項無し[2021年]
監修:金山尚裕 : 特に申告事項無し[2021年]

改訂のポイント:
  1. 産婦人科診療ガイドライン産科編2020に基づき改訂を行った。

病態・疫学・診察

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 周産期管理の進歩により妊産婦死亡率は減少してきているが、出血は依然、妊産婦死亡の主要な原因であり、約250人に1人の妊婦が大量出血により生命の危険にさらされている[1]
  1. 分娩後異常出血(postpartum hemorrhage、PPH)は、経腟分娩では産後24時間以内に500mLを超えるもの、帝王切開では1,000mLを超えるものと定義されている。
  1. PPHのすべてが産科危機的出血に移行するわけではないが、出血量が500mL(帝王切開では1,000mL)を超えた場合は、引き続く産科危機的出血を懸念し、系統的な原因検索および治療を行う。
  1. リスク因子には初産、既往帝王切開、多胎分娩、前置・低置胎盤、巨大子宮筋腫合併、癒着胎盤疑い、羊水過多、巨大児、誘発分娩、肥満、分娩遷延、短時間の分娩、器械分娩、妊娠高血圧症候群、臨床的絨毛膜羊膜炎、早産などが挙げられる[2]
  1. 基礎疾患(常位胎盤早期剝離、妊娠高血圧症候群、子癇、羊水塞栓症、癒着胎盤など)を持つ産科出血では中等量の出血でも容易に播種性血管内凝固症候群(DIC)を併発するため、注意が必要である。
  1. わが国における分娩時出血量の90パーセンタイル値は単胎においては経腟分娩:800mL、帝王切開:1,600mLであり、双胎では経腟分娩:1,500mL、帝王切開:2,300mLと報告されている[3]
 
分娩時出血量の90パーセンタイル値

分娩時異常出血の指標となる。(日本産科婦人科学会周産期委員会、253,607分娩例、2008年)

 
  1. 経腟分娩例では0.3%に、帝王切開分娩では1.4%に同種血輸血が行われている[4]
  1. 分娩時の出血は床や寝具などに漏出しやすいこと、羊水が混入していること、腹腔内・後腹膜腔内出血量(頸管裂傷、子宮破裂などによる)は評価困難であること、まとめて出血量を計測すると過少評価しやすいこと、妊娠高血圧腎症では血液濃縮による循環血漿量減少があるため、外出血量に見合わない血圧低下を認めることがある。さらに大量出血後のヘモグロビン値は出血量に見合わない高値を示すことなどがあり、注意を要する。
  1. このため、分娩時では計測された出血量のみにとらわれることなく、バイタルサインの異常(頻脈、低血圧、乏尿)やショックインデックス(SI: shock index、SI=1分間の心拍数/収縮期血圧)に留意し管理する。
問診・診察のポイント  
  1. 分娩時大量出血に遭遇した場合、ただちにバイタルサインを確認し、可能であれば心電図モニターとSpO2モニターを装着する。モニターが装着されていない場合は、頸動脈でカウントする。
  1. バイタルサイン(血圧、脈拍、SpO2など)に注意し、出血量、尿量を持続的に観察する。
  1. 緊急輸血を準備する際の出血量(循環血液量不足)の評価は、出血量とともに循環動態から判断する。SIも重要であるが、バイタルサイン(脈拍数、収縮期血圧、尿量、呼吸数など)の中でも、脈拍数は早期に増加するため重要である。子宮内反症などの副交感神経が刺激されている場合や、腹膜刺激症状時、脳圧亢進時は徐脈を呈することがあり、SI値は参考にならないので注意を要する。

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文献 

著者: Akihide Ohkuchi, Tamaho Onagawa, Rie Usui, Toshimitsu Koike, Mitsuhiro Hiratsuka, Akio Izumi, Takashi Ohkusa, Shigeki Matsubara, Ikuo Sato, Mitsuaki Suzuki, Hisanori Minakami
雑誌名: J Perinat Med. 2003;31(3):209-15. doi: 10.1515/JPM.2003.028.
Abstract/Text OBJECTIVE: An extensive study as to whether maternal age itself is a risk factor for blood loss during parturition.
METHOD: A total of 10,053 consecutive women who delivered a singleton infant were studied. The excess blood loss was defined separately for women with vaginal and cesarean deliveries as > or = 90th centile value for each delivery mode. The effects of 13 potential risk factors on blood loss were analyzed using multivariate analysis.
RESULTS: The 90th centile value of blood loss was 615 ml and 1,531 ml for women with vaginal and cesarean deliveries, respectively. A low lying placenta (odds ratio [OR], 4.4), previous cesarean (3.1), operative delivery (2.6), leiomyoma (1.9), primiparity (1.6), and maternal age > or = 35 years (1.5) were significant independent risk factors for excess blood loss in women with vaginal delivery. Placenta previa (6.3), leiomyoma (3.6), low lying placenta (3.3), and maternal age > or = 35 years (1.8) were significant independent risk factors for excess blood loss in women with cesarean sections.
CONCLUSION: A maternal age of > or = 35 years was an independent risk factor for excess blood loss irrespective of the mode of delivery, even after adjusting for age-related complications such as leiomyoma, placenta previa, and low lying placenta.

PMID 12825476  J Perinat Med. 2003;31(3):209-15. doi: 10.1515/JPM.2003・・・
著者: American College of Obstetricians and Gynecologists
雑誌名: Obstet Gynecol. 2006 Oct;108(4):1039-47.
Abstract/Text Severe bleeding is the single most significant cause of maternal death world-wide. More than half of all maternal deaths occur within 24 hours of delivery, most commonly from excessive bleeding. It is estimated that worldwide, 140,000 women die of postpartum hemorrhage each year-one every 4 minutes (1). In addition to death, serious morbidity may follow postpartum hemorrhage. Sequelae include adult respiratory distress syndrome, coagulopathy, shock, loss of fertility, and pituitary necrosis (Sheehan syndrome). Although many risk factors have been associated with postpartum hemorrhage, it often occurs without warning. All obstetric units and practitioners must have the facilities, personnel, and equipment in place to manage this emergency properly. Clinical drills to enhance the management of maternal hemorrhage have been recommended by the Joint Commission on Accreditation of Healthcare Organizations (2). The purpose of this bulletin is to review the etiology, evaluation, and management of postpartum hemorrhage.

PMID 17012482  Obstet Gynecol. 2006 Oct;108(4):1039-47.

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