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嗅覚障害

著者: 三輪高喜 金沢医科大学病院 耳鼻咽喉科

監修: 森山寛 東京慈恵会医科大学附属病院

著者校正/監修レビュー済:2021/11/02
参考ガイドライン:
  1. 日本鼻科学会:嗅覚障害診療ガイドライン
患者向け説明資料

概要・推奨   

  1. 嗅覚障害は発生部位から、気導性嗅覚障害、嗅神経性嗅覚障害、中枢性嗅覚障害に分類される。
  1. 半数近くが鼻副鼻腔炎による気導性嗅覚障害である。
  1. 好酸球性副鼻腔炎ではステロイドの内服、点鼻、噴霧が有効であり、非好酸球性副鼻腔炎ではマクロライド系抗菌薬の少量長期投与が有効である。効果に乏しい場合には内視鏡下副鼻腔手術を行う。
薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、林太祐、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、
著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適用の査定において保険適用及び保険適用外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適用の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
三輪高喜 : 研究費・助成金など(千寿製薬(株))[2021年]
監修:森山寛 : 特に申告事項無し[2021年]

改訂のポイント:
  1. 嗅覚障害診療ガイドラインに基づき、嗅覚障害の分類について改訂を行った。

病態・疫学・診察

疫学情報・病態・注意事項  
  1. 嗅覚障害には嗅覚低下、嗅覚脱失を訴える量的障害と、異嗅症を代表とする質的障害とが含まれる。
  1. 大部分の症例は量的障害であり、質的障害は量的障害に合併して発生することが多い。
  1. 嗅覚障害は発生部位から、気導性嗅覚障害、嗅神経性嗅覚障害、中枢性嗅覚障害に分類される。
  1. 気導性嗅覚障害は、嗅神経までにおいが到達しないことにより生じ、慢性副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、鼻中隔湾曲症など鼻副鼻腔の異常によって起こる。
  1. 嗅神経性嗅覚障害は、嗅神経の障害によって起こり、感冒、顔面頭部外傷が主な原因である。
  1. 中枢性嗅覚障害は、頭蓋内の嗅覚経路の異常や傷害によって起こり、頭部外傷、脳腫瘍、脳血管障害、アルツハイマー病などの神経変性疾患によって起こる。
  1. 加齢性の嗅覚障害の原因として、嗅神経の減少、中枢での認知能力の低下が考えられる。
  1. 新型コロナウイルス感染症により、嗅覚障害が高頻度に起こる。
 
嗅覚障害の分類

嗅覚障害には、嗅覚がまったくなくなる嗅覚脱失、においの感じ方が弱くなる嗅覚減退などの量的障害と、異嗅症を代表とする質的障害がある。異嗅症は、においを嗅いだときに感じ方が変わる刺激性異嗅症と、においを嗅いでいないときにも感じる自発性異嗅症に分けられる。嗅盲とは、ある特定のにおいがわからない状態であり、先天性異常と考えられている。

 
  1. 嗅覚障害の病態による分類
  1. 嗅覚低下ならびに嗅覚脱失は、その障害部位と病態により次の3つに分けられる。
  1. 気導性嗅覚障害
    鼻腔内の異常によりにおい分子が嗅神経の受容体まで到達しないために生じるものであり、慢性副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎、鼻中隔湾曲症が代表的疾患である。
  1. 嗅神経性嗅覚障害
    嗅細胞自体の異常により生じるものであり、大部分が感冒後嗅覚障害であり、薬剤性嗅覚障害の一部もこの障害に含まれる。外傷性嗅覚障害のうち、嗅神経の軸索断裂による嗅覚障害も含まれるが、臨床的に中枢性嗅覚障害との鑑別は困難なことが多い。長期間経過した慢性副鼻腔炎例の中には治療により嗅神経までの気流が回復したにもかかわらず、嗅覚が十分に改善しない症例が存在する。このような症例は嗅神経の障害の合併が予想され、混合性嗅覚障害と呼ばれている。
  1. 中枢性嗅覚障害
    嗅覚の一次中枢である嗅球から嗅覚野である眼窩前頭皮質までの嗅覚経路の異常により生じるものである。頭部外傷が代表的な原因であるが、脳腫瘍や頭蓋内手術によっても起こる。近年、パーキンソン病、アルツハイマー病、脳血管性痴呆など神経変性疾患によっても嗅覚障害が生じることが知られ、嗅覚障害が各疾患の前駆症状として現れることから、早期発見のための一症状として注目を集めている。
 
嗅覚障害の発生部位別分類

出典

img1:  著者提供
 
 
 
  1. 嗅覚障害の予後
  1. 嗅覚障害の予後はその原因により異なる。副鼻腔炎による障害や感冒後嗅覚障害では70~80%が改善するが、外傷性嗅覚障害および原因不明の嗅覚障害では改善度は約40%と低い。
 
嗅覚障害の予後

嗅覚障害の予後はその原因により異なる。副鼻腔炎による障害や感冒後嗅覚障害ではおよそ70%が改善するが、外傷性嗅覚障害および原因不明の嗅覚障害では改善度は約40%と低い。

出典

img1:  著者提供
 
 
 
  1. 嗅覚障害の分類 <図表>
  1. 嗅覚障害には量的障害と質的障害が含まれる。量的嗅覚障害は、においをまったく感じない嗅覚脱失と、においの感じ方が弱くなる嗅覚低下とに分けられる。質的嗅覚障害はにおいの感じ方の異常であり、異嗅症が代表的障害である。異嗅症は、単独の症状として現れることもあるがまれであり、量的障害に伴って生じることが多い。「どのにおいを嗅いでも同じにおいに感じる」、「においがこれまでと異なって感じる」などのにおいを嗅いだときに生じる刺激性異嗅症と、「常ににおいが頭の中や鼻の中にある」、「突然ににおいが現れる」などの自発性異嗅症に分けられる。
  1. 特殊な質的嗅覚障害として嗅盲がある。ある特定のにおいのみ感じることができないもので、におい受容体遺伝子の異常とされている。青酸ガスのアーモンド臭、都市ガスに添加されているブチルメルカプタン、T&TオルファクトメーターのCの嗅素であるイソ吉草酸などの感じ方に個人差がある。側頭葉てんかんでは鉤発作として、発作前にオーラとして異嗅を感じるといわれている。嗅覚過敏、悪臭症、自己臭症などは嗅覚機能には問題なく、精神疾患や上気道の感染症に伴うものであり、純粋な嗅覚障害とはいえないが、患者は嗅覚の異常として受診する。
 
問診・診察のポイント  
 
  1. 発症時期、発症様式(急な発症か、気づいたらにおいがしなくなっていたのか)、発症後の変化を聴取する。

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