今日の臨床サポート

褥瘡(在宅医療)

著者: 中野一司 ナカノ在宅医療クリニック

監修: 和田忠志 いらはら診療所 在宅医療部

著者校正/監修レビュー済:2018/08/23

概要・推奨   

褥瘡のできる要因およびその対応:
  1. 医学的要因として、①力学的要因、②栄養、③褥瘡のできる部位における身体的要因がある。
 
褥瘡の評価方法:
  1. 褥瘡の評価方法として、重要なものとして、①NPUAP分類、②DESIGN分類、③OHスケールの3つがある。
 
在宅の褥瘡治療:
  1. 在宅での褥瘡治療は、ラップ療法(解放式湿潤法)で十分である。
薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、林太祐、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、
著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適用の査定において保険適用及び保険適用外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適用の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
中野一司 : 未申告[2021年]
監修:和田忠志 : 特に申告事項無し[2021年]

病態・疫学・診察

褥瘡のできる要因およびその対応  
医学的要因:
  1. 褥瘡が生じる要因は数多いが、ここでは在宅医療において着目すべき3つの要因、すなわち、①力学的要因、②栄養、③褥瘡のできる部位における身体的要因、について述べる。
  1. ①力学的要因
  1. 褥瘡の力学的要因を「圧」と「ずれ」の2つに分けて考える。この場合、「圧」は皮膚と垂直あるいはそれに近い方向での力の作用(以下この力を「圧力」と呼ぶ)、「ずれ」は、皮膚に水平あるいはそれに近い方向での力の作用である(以下この力を「ずれ力」と呼ぶ)。これらの2つの力が作用して皮膚およびその下部組織に負担を与え、創が形成される。
  1. 圧力とずれ力の発生と作用
  1. 圧は、重力によって身体が床やマットレスなどに接するとき、身体の凸型の部分に圧が集中する性質がある。例えば、仙骨部や踵部に褥瘡ができやすいのはその部分が接地面に対して凸になっているためである。
  1. ずれは、介護を行う時に体を引きずる動作をしたり、車いすに座っているときに重力によって次第に身体が下や前にずれてきたり、ベッドをギャッジアップあるいはダウンしたときに、接地面と皮膚との間にずれ力が発生するものである。車いすに座っている人に尾骶骨に近い部分に褥瘡ができるなどが、この例である。
  1. 圧力とずれ力の除去の方法
  1. 治療に際しては、この2つの力学的要因を除去することを目標にする必要がある。圧に対しては「体圧分散」を行う。ずれに対しては、ずれ力を除去するような操作を行う。例えば、「体圧分散」は、高性能体圧分散マットレスの使用や、隙間がないようにピローなどで創部を含めた身体の部分を支える「ポジショニング」により実現される。
  1. 体圧分散を時間軸で実現する方法として、身体の設置部分を定時的に交換していく「体位交換」があるが、在宅ケア現場においては、定時的な交換(特に夜間)は家族介護者にとって負担が重すぎるためあまり推奨されず、その目的には「高性能体圧分散マットレスの使用」が現実的である。
  1. ずれ力を除去する操作としては、ずれ力の働いている接地面と皮膚とを、一瞬でも引き離しさえすればよい。例えば、車いすでずれ力が働いているときには、(いったん腰を椅子から離して)座りなおしてもらう、でもよいし、介護者が介護グローブなどを用いて、一回身体と椅子の間に手を通すだけでもよい。患者が仰臥位臥床している場合で、ずれの力が背部や臀部に働いていると考えられるときには、「一度側臥位になってから仰臥位に戻ってもらう」「介護者が介護グローブなどを用いて、一回身体と椅子の間に手を通す」(「背抜き」)などの方法がある。
  1. ②栄養
  1. 栄養状態の改善は褥瘡治療においてきわめて重要である。詳しくは栄養の項目に譲るが、栄養状態の改善により、他の環境の変化がないのに褥瘡が改善することは少なくない。
  1. ③褥瘡のできる部位における身体的要因
  1. 麻痺や感覚障害、関節拘縮、浮腫、骨突出など、様々な要因が褥瘡形成の原因となるが、特に浮腫は改善可能な要素であり、意識的な治療が望ましい。浮腫は「OHスケール」においても評価項目となっている。
 
介護環境について:
  1. 介護環境は褥瘡の発生や経過を大きく左右する重要な要因である。家族に自由な理解力がある場合には、家族にケアの具体的な手技の指導、栄養状態改善の具体的な方法を伝えることで、大きな改善をみることができうる。
  1. 介護者に対する教育や指導も重要だが、残念ながら、いわゆる「老老介護」「認認介護」の家庭も少なくない。そのような場合、無理に家族介護に依拠するのではなく、介護保険制度を含めたサービスの導入により、介護環境の改善に努めるのがよい方法である。
  1. また、既述のように、体位交換などの労働は家族負荷が大きいため、介護保険制度により「高性能体圧分散マットレス」などを導入することが現実的である。
 
多職種連携について:
  1. 介護保険制度の在宅サービスを構成する多職種との連携の中で褥瘡を治療していくことが重要である。特に、①力学的要因の除去ができるような介護環境整備や器具導入(看護師、ホームヘルパー、体圧分散マットレス、介護グローブなど)、②栄養改善を行えるような多職種の導入(看護師、栄養士、ホームヘルパーなど)、③療養環境整備(ベッド・リフターなどの導入、屋内物品配置の適切な整備、清潔な環境の維持など)、④家族負担の軽減に留意することになる。
  1. 褥瘡への対応は看護師の専門的な領域であるともいえる。できれば、訪問看護師に具体的な治療プランを立ててもらい、医師はそれに対して必要な助言をしたり、必要な処方などを行って看護師をサポートする形で治療を進めることが望ましい。また、必要な療養環境整備も、ケアマネジャーと連携し、看護師を中心にして行うことで円滑にできることが多い。また、創に対する具体的な薬物療法に関しては、薬剤師に相談しながら進めるとよい。
褥瘡の評価方法  
ポイント:
  1. 褥瘡の状態をその都度評価しながら治療を進めることが望ましい。

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