今日の臨床サポート

居宅虐待への対応(在宅医療)

著者: 和田忠志 いらはら診療所 在宅医療部

監修: 和田忠志 いらはら診療所 在宅医療部

著者校正/監修レビュー済:2017/01/20

概要・推奨   

ポイント
  1. 高齢者虐待に関して、わが国で通常使用される概念は、①身体的虐待(physical abuse)、②心理的虐待(psychological abuse)、③性的虐待(sexual abuse)、④介護等放棄(neglect)、⑤経済的虐待(financial abuse)である。
  1. これらは高齢者虐待防止法(正式名称「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」(平成17年11月9日法律第124号)に記載されている。最近では、加えて、セルフネグレクト(self-neglect)も虐待に含めて考えることが多い。
  1. 虐待事例では、被害者の救済も重要であるが、「加害者を含めた家庭全体の生活支援」がきわめて重要である。
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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、林太祐、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、
著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適用の査定において保険適用及び保険適用外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適用の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
和田忠志 : 特に申告事項無し[2021年]
監修:和田忠志 : 特に申告事項無し[2021年]

まとめ

まとめ  
  1. わが国で通常使用される概念は、①身体的虐待(physical abuse)、②心理的虐待(psychological abuse)、③性的虐待(sexual abuse)、④介護等放棄(neglect)、⑤経済的虐待(financial abuse)である。これらの概念は高齢者虐待防止法(正式名称「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」(平成17年11月9日法律第124号)に記載されている。最近では、加えて、セルフネグレクト(self-neglect)も虐待に含めて考えることがある。
  1. 基本的には虐待の疑いを発見した者は、地域包括支援センターあるいは市役所に通報義務がある。通報者は疑いのみで通報して差し支えなく、虐待の存在確認は地域包括支援センターあるいは市役所の責務とされる。
  1. 虐待かどうかが見分けにくい「グレーゾーンの事例」が多いことも事実である。その場合、在宅ケアに関わる支援者間での情報共有を行い、生活支援を行うことが多いであろう。そのうえで、「虐待がやはり存在しそうだ」とか、「支援が困難な事例である」と支援者が判断したときには、通報窓口である地域包括支援センターに通報あるいは相談し、地域包括支援センターを含めて支援計画を組み立てたい。
  1. 虐待事例では、被害者の救済も重要であるが、「加害者を含めた家庭全体の生活支援」が重要である。また、「見守り」を行う場合には、支援者で「介入の基準」を作成して対応する。身体的虐待や介護等放棄、セルフネグレクトは生命に関わり得る点で重要な虐待だが、支援者からみえやすく、その意味では対応がしやすい。一方、経済的虐待は支援者からみえにくく、認知症高齢者が被害者になりやすい。経済的虐待では成年後見制度活用が有効である。はなはだしい虐待事例では、「一次分離」に踏み切り、その後、虐待が改善する見込みがないとき、あるいは被害者が永久的な別離を希望するとき、「二次分離」を行う。
  1. 多くの虐待事例では経済的虐待も伴い、支援者が介入したときにはすでにわずかな手持ちの財産しか残ってない場合も多い。そのような場合、行政担当者と連携して生活保護の検討を行う。まれな深刻な事例では、自己破産の手続きを行う必要がある場合がある。経済的虐待の加害者はしばしば生活能力や対人関係能力に障害を持ち、長期的な支援を必要とするが、そのような若年者への社会復帰の支援体制が整っていない。
  1. 在宅医療は本人のみならず家族に関わる医療である。家族は高齢者や障害者の最大の擁護者でもあり、一方では残念ながら、最大の虐待者でもある。そして、地域医療や在宅医療を真剣に行っている医師は、地方公共団体や福祉事務所などからこのような社会的困難事例を多く紹介されるであろう。その意味では、虐待の問題を避けては在宅医療はできないというのが私の認識である。

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