今日の臨床サポート

前立腺炎

著者: 藤本直浩 産業医科大学 泌尿器科学講座

監修: 中川昌之 公益財団法人 慈愛会 今村総合病院 泌尿器科顧問

著者校正/監修レビュー済:2020/03/12
参考ガイドライン:
  1. JAID/JSC感染症治療ガイド2019
患者向け説明資料

概要・推奨   

  1. 急性前立腺炎の場合、尿培養・薬剤感受性試験は必須である。
  1. 原因微生物の60%はE.coliで他のグラム陰性桿菌とグラム陽性球菌がそれぞれ20%であり、empiric therapyとしては前立腺への移行がよいキノロン系薬剤、急性感染時には良好な移行性を示すβ-ラクタム系薬が推奨される。
  1. 青壮年の場合、原因菌は一般細菌だけでなく、淋菌やクラミジアも考慮する。
薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、林太祐、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、
著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適用の査定において保険適用及び保険適用外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適用の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
藤本直浩 : 特に申告事項無し[2021年]
監修:中川昌之 : 研究費・助成金など(武田薬品工業株式会社)[2021年]

改訂のポイント:
  1. 薬剤の投与法を変更した。

病態・疫学・診察

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 前立腺炎とは、何らかの原因により前立腺に炎症が起こり、会陰部痛や泌尿器症状を来す異なった疾患群である。前立腺炎は50歳以下の男性では最も頻度が高い前立腺疾患であり、50歳以上においても前立腺肥大症、前立腺癌に次いで多くみられる疾患である、NIHにより4つのカテゴリー(Ⅰ~Ⅳ)に分類されている。
 
前立腺炎

前立腺炎のイメージ

出典

 
  1. カテゴリーⅠは急性細菌性前立腺炎で、細菌感染(E. coliが約60%)により排尿症状や疼痛、発熱などの身症状を伴うものである。
  1. カテゴリーⅡ、Ⅲは慢性前立腺炎で骨盤痛症候群とも呼ばれる。カテゴリーⅡは慢性細菌性前立腺炎、カテゴリーⅢは慢性非細菌性前立腺炎で、炎症所見を認めるⅢAと認めないⅢBに分類される。
  1. カテゴリーⅣは無症状であるが、前立腺圧出液、精液、生検などで炎症所見が認められるものであり、臨床的に問題となることはない。
  1. 原因としてはカテゴリーⅠ、Ⅱは細菌感染(E. coliが約60%)であるが、その他については原因が明らかではなく、感染、排尿障害、ホルモンバランスの不均衡、前立腺内への尿の逆流、アレルギー、精神的因子が考えられる。
  1. カテゴリーⅠの診断は臨床症状、直腸診、尿および血液検査、細菌培養により比較的容易である。
  1. カテゴリーⅡ、Ⅲは初期尿(VB1)、中間尿(VB2)、前立腺圧出液(EPS)、前立腺マッサージ後の尿(VB3)の沈渣および細菌培養(4-glass test)により分類するが、中間尿、前立腺マッサージ後の尿のみを用いる2-glass testが簡便であり、臨床的には2-glass testで十分である。
  1. カテゴリーⅠ、Ⅱでは抗菌薬の投与を行う。カテゴリーⅢでは治療法のコンセンサスが得られていないが、排尿症状が主な場合にはα受容体遮断薬、疼痛が強い場合には消炎鎮痛薬(NSAIDs)が有効である傾向にある。
  1. カテゴリーⅠはまれに重篤になることがある。カテゴリーⅡ~Ⅲでは改善・増悪を繰り返しながら長期に及ぶことが多いが、重篤になることはない。
問診・診察のポイント  
  1. カテゴリーⅠ(急性細菌性前立腺炎)では排尿痛、頻尿などの尿路症状、会陰部痛や下腹部痛、発熱、悪寒などの全身症状が身体に出現する。
  1. カテゴリーⅠでは、前立腺の腫大、圧痛、ときに波動を認め、検尿、血液検査、細菌培養(尿、血液)を行う。
  1. カテゴリーⅡ、Ⅲ(慢性前立腺炎)では重篤な症状はなく、最も多くみられる症状は疼痛で、会陰部、下腹部、陰茎にみられ、ときに精巣や鼡径部痛、腰痛、射精時、または射精後痛がみられる。排尿症状として頻尿、尿意切迫感、排尿困難がみられることがある。症状は長期に及ぶことが多い。
  1. 慢性前立腺炎の診断には前立腺マッサージ前後の尿を用いる2-glass testが用いられ、マッサージ後の尿中に白血球、細菌を認めるものをカテゴリーⅡ、白血球は認めるものの細菌は認めないものをⅢA、白血球も細菌も認めないものをⅢBとする。

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