薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
麻酔剤 セボフルラン等 | 反射性頻脈が弱まり、低血圧のリスクが増加することがある。 陰性変力作用の小さい麻酔剤を選択すること。また、心筋抑制作用を有する麻酔剤との併用は出来るだけ避けること。 | 麻酔剤により低血圧が起こると反射性の頻脈が起こる。β遮断剤が併用されていると、反射性の頻脈を弱め、低血圧が強められる可能性がある。 また、陰性変力作用を有する麻酔剤では、相互に作用を増強させる。 |
交感神経系に対し抑制的に作用する他の薬剤 レセルピン、β遮断剤(チモロール等の点眼剤を含む)等 | 交感神経系の過剰の抑制(徐脈、心不全等)をきたすことがあるので、減量するなど慎重に投与すること。 | 相互に作用(交感神経抑制作用)を増強させる。 |
血糖降下剤 インスリン、トルブタミド、アセトヘキサミド等 | 血糖降下作用が増強されることがある。また、低血糖症状(頻脈等)をマスクすることがあるので血糖値に注意すること。 | 血糖値が低下するとカテコールアミンが副腎から分泌され、肝でのグリコーゲンの分解を促し、血糖値を上昇させる。 このとき、肝臓のβ受容体が遮断されていると、カテコールアミンによる血糖上昇作用が抑えられ、血糖降下作用が増強する可能性がある。 また、カテコールアミンによる頻脈のような低血糖症状がマスクされると考えられている。 |
カルシウム拮抗剤 ベラパミル、ジルチアゼム、ニフェジピン等 | ベラパミル、ジルチアゼム等では、低血圧、徐脈、房室ブロック等の伝導障害、心不全が発現するおそれがあるので減量するなど注意すること。また、ジヒドロピリジン系薬剤でも、低血圧、心不全が発現するおそれがあるので注意すること。 本剤、カルシウム拮抗剤ともに、他方を投与中止後48時間以内は静脈投与しないようにすること。 | 相互に作用(心収縮力や刺激伝導系の抑制作用、降圧作用等)を増強させる。 薬物動態的な相互作用のメカニズムは解明されていないが、肝血流量の変化によって本剤の代謝が影響をうけると考えられている。 |
クロニジン | クロニジンの投与中止後のリバウンド現象(血圧上昇、頭痛、嘔気等)を増強する可能性がある。クロニジンを中止する場合には、本剤を先に中止し、その後数日間観察した後、クロニジンを中止すること。また、クロニジンから本剤へ投与を変更する場合にはクロニジンを中止した数日後から本剤を投与すること。 | クロニジンを投与されている患者でクロニジンを中止すると、血中カテコールアミンが上昇し、血圧上昇をきたす。β遮断剤が投与されていると、カテコールアミンによるα刺激作用が優位になり、血管収縮がさらに増強される。 |
クラスI抗不整脈剤 ジソピラミド、プロカインアミド、アジマリン等 クラスIII抗不整脈剤 アミオダロン等 | 過度の心機能抑制(徐脈、心停止等)があらわれることがあるので、減量するなど慎重に投与すること。 | 抗不整脈剤は陰性変力作用及び陰性変時作用を有する。β遮断剤もカテコールアミンの作用を遮断することにより心機能を抑制するため、併用により心機能が過度に抑制される。 |
交感神経刺激剤 アドレナリン等 | 相互の薬剤の効果が減弱する。また、血管収縮、血圧上昇をきたすことがあるので注意すること。 | 非選択性のβ遮断剤により末梢血管のβ受容体が遮断された状態でアドレナリンなどの交感神経作動薬が投与されると、α受容体を介する血管収縮作用のみがあらわれる。また、徐脈は副交感神経の反射によるものである。 |
リドカイン | リドカインの代謝を遅延させ、血中濃度を上昇させることがあるので併用は避けること。 | 本剤が肝血流量を減らし、また肝の薬物代謝酵素を阻害するために、リドカインの代謝が遅れると考えられている。 |
ジギタリス製剤 | 房室伝導時間が延長し、徐脈、房室ブロック等が発現することがあるので注意すること。 | ジギタリス、β遮断剤はともに房室結節伝導時間を延長させる。ジギタリス中毒時には特に注意を要する。 |
シメチジン | 本剤の血中濃度が上昇し、作用が増強する可能性があるので注意すること。 | シメチジンが肝血流量を低下させ、また、肝の薬物代謝酵素を阻害することにより、肝での本剤の分解が低下し、血中濃度が上昇すると考えられている。 |
クロルプロマジン | 本剤とクロルプロマジンの作用がそれぞれに増強することがある。 | 本剤とクロルプロマジンが薬物代謝酵素を競合するために、本剤、クロルプロマジンともに血中濃度が上昇すると考えられている。 |
ヒドララジン | 本剤の血中濃度が上昇し、作用が増強する可能性があるので注意すること。 | ヒドララジンが肝血流量を増加させるためと考えられている。 |
麦角アルカロイド エルゴタミン等 | 下肢の疼痛、冷感、チアノーゼ等が発現することがあるので注意すること。 | 麦角アルカロイドとβ遮断剤が相乗的に末梢灌流を低下させると考えられている。 |
非ステロイド性抗炎症剤 インドメタシン等 | 本剤の降圧作用が減弱することがある。 | 非ステロイド性抗炎症剤は血管拡張作用を有するプロスタグランジンの合成を阻害する。 |
アルコール | 本剤の血中濃度の変動により、作用が減弱または増強する可能性があるので注意すること。 | アルコールにより本剤の吸収、代謝が変動するためと考えられている。 |
リファンピシン | 本剤の血中濃度が低下し、作用が減弱する可能性があるので注意すること。 | リファンピシンが肝酵素を誘導し、本剤の代謝・消失を促進すると考えられている。 |
キニジン、プロパフェノン | 本剤の血中濃度が上昇し、作用が増強する可能性があるので注意すること。 | 本剤はチトクロームP450によって代謝をうける。このため、チトクロームP450によって代謝をうける薬剤との間で、血中濃度が影響をうける可能性がある。 |
ワルファリン | ワルファリンの血中濃度が上昇し、作用が増強する可能性があるので注意すること。 | 相互作用のメカニズムは解明されていないが、本剤がワルファリンの肝代謝を阻害することが考えられている。 |
フィンゴリモド | フィンゴリモドの投与開始時に本剤を併用すると重度の徐脈や心ブロックが認められることがある。 | 共に徐脈や心ブロックを引き起こすおそれがある。 |