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効能・効果/用法・用量 

効能・効果

  • <適応菌種>

    • ダプトマイシンに感性のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)
  • <適応症>

    • 敗血症、感染性心内膜炎、深在性皮膚感染症、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、びらん・潰瘍の二次感染

用法・用量

  • <成人>

    • 敗血症、感染性心内膜炎

      • 通常、成人にはダプトマイシンとして1日1回6mg/kgを24時間ごとに30分かけて点滴静注又は緩徐に静脈内注射する。
    • 深在性皮膚感染症、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、びらん・潰瘍の二次感染

      • 通常、成人にはダプトマイシンとして1日1回4mg/kgを24時間ごとに30分かけて点滴静注又は緩徐に静脈内注射する。
  • <小児>

    • 敗血症

      • 通常、ダプトマイシンとして以下の用法及び用量に従い投与する。
        年齢用法及び用量
        12歳以上18歳未満1日1回7mg/kgを24時間ごとに30分かけて点滴静注
        7歳以上12歳未満1日1回9mg/kgを24時間ごとに30分かけて点滴静注
        1歳以上7歳未満1日1回12mg/kgを24時間ごとに60分かけて点滴静注
    • 深在性皮膚感染症、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、びらん・潰瘍の二次感染

      • 通常、ダプトマイシンとして以下の用法及び用量に従い投与する。
        年齢用法及び用量
        12歳以上18歳未満1日1回5mg/kgを24時間ごとに30分かけて点滴静注
        7歳以上12歳未満1日1回7mg/kgを24時間ごとに30分かけて点滴静注
        2歳以上7歳未満1日1回9mg/kgを24時間ごとに60分かけて点滴静注
        1歳以上2歳未満1日1回10mg/kgを24時間ごとに60分かけて点滴静注

禁忌 

【禁忌】

次の患者には投与しないこと

  • 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

注意 

9.特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 前治療にHMG-CoA還元酵素阻害剤を用いた患者
CK値を投与期間中は通常(週1回以上)より更に頻回にモニタリングすること。[8.2参照]
9.2 腎機能障害患者
<CLcr 30mL/min未満の成人患者(血液透析又はCAPDを受けている患者を含む)>
9.2.1 本剤の投与間隔を調節すること。投与間隔を調節する必要があるため、腎機能を頻回にモニタリングすること。CK値を投与期間中は通常(週1回以上)よりも更に頻回にモニタリングすること。[7.1、8.2、16.6.1参照]
<CLcr 30mL/min以上の成人患者>
9.2.2 腎機能を頻回にモニタリングすること。CK値を投与期間中は通常(週1回以上)よりも更に頻回にモニタリングすること。[7.1、8.2、16.6.1参照]
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
妊娠ラットにおいて、ダプトマイシンは胎盤を通過することが認められている。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。ヒト母乳中へダプトマイシンが低濃度(0.045μg/mL、乳汁中濃度/血漿中濃度比:0.12%)で移行することが報告された。
9.7 小児等
1歳未満の小児患者への投与は推奨されない。1歳未満の小児患者を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。1歳未満の小児に相当する日齢の新生児イヌを用いた試験では、1歳未満の小児において予想される血中濃度の範囲内で回復性のある筋攣縮及び筋硬直がみられた。[15.2参照]
9.8 高齢者
一般的に生理機能が低下している。CLcr≧30mL/minの高齢者では用量調節は必要ない。

8.重要な基本的注意

8.1 本剤の使用にあたっては、耐性菌の出現等を防ぐため、次のことに注意すること。
8.1.1 感染症の治療に十分な知識と経験を持つ医師又はその指導のもとで行うこと。
8.1.2 投与期間は、感染部位、重症度、患者の症状等を考慮し、適切な時期に、本剤の継続投与が必要か判定し、疾病の治療上必要な最小限の期間の投与にとどめること。[17.1.1-17.1.7参照]
8.2 本剤投与中に、CK上昇が報告されているので、以下の点について十分注意すること。[9.1.1、9.2.1、9.2.2、10.2、17.1.1-17.1.4、17.1.6、17.1.7参照]
8.2.1 CK値を投与期間中は定期的に(週1回以上)モニタリングすること。原因不明のCK上昇を発現した患者では、CK値を更に頻回にモニタリングすること。
8.2.2 CK値が1,000U/L(基準値上限の約5倍)を超え原因不明のミオパチーの徴候又は症状を示す患者、あるいは症状はないがCK値が2,000U/L(基準値上限の約10倍)を超える顕著な増加を示した場合は、本剤の投与を中止すること。
8.3 本剤によるショック、アナフィラキシーの発生を確実に予知できる方法がないので、次の措置をとること。[11.1.1参照]
8.3.1 事前に既往歴等について十分な問診を行うこと。なお、抗生物質等によるアレルギー歴は必ず確認すること。
8.3.2 投与に際しては、必ずショック等に対する救急処置のとれる準備をしておくこと。
8.3.3 点滴静注の場合は投与開始から投与終了後まで、また、静脈内注射の場合は投与終了後もしばらくの間、患者を安静の状態に保たせ、十分な観察を行うこと。特に、投与開始直後は注意深く観察すること。

14.適用上の注意

14.1 薬剤調製時の注意
14.1.1 本剤1バイアルにつき7mLの生理食塩液をゆっくりと加えて溶解し、50mg/mLの溶液とする。なお、泡立ちを抑えるため、溶解時又は溶解後のバイアルは激しく振とうせずに、以下の手順に従って調製する。
・ゴム栓の中央部に針を刺す。
・生理食塩液7mLをバイアルの内壁をつたわらせながらゆっくりと注入する。
・バイアルをゆっくりと回しながら塊又は粉末を十分に湿らせる。
・溶解するまで約10分間静置する。
・数分間ゆっくりとバイアルを回す。
・完全に溶解したことを確認する。
14.1.2 成人に静脈内注射する場合、14.1.1の溶液をそのまま使用する。
14.1.3 点滴静注する場合、14.1.1の溶液をさらに生理食塩液で希釈し使用する。
14.1.4 調製後は速やかに使用すること。なお、やむを得ず保存を必要とする場合でも、調製開始後、室温(25℃)では12時間以内、冷所(2~8℃)では48時間以内に使用すること。
14.2 薬剤投与前の注意
不溶物がないことを目視で確認すること。
14.3 薬剤投与時の注意
小児には、年齢に応じて30分又は60分かけて点滴静注し、静脈内注射しないこと。
14.4 配合適性
14.4.1 本剤は生理食塩液及び乳酸リンゲル液とは配合可能である。
14.4.2 ブドウ糖を含む希釈液とは配合不適である。
14.4.3 配合適性については限られたデータしかないため、他の薬剤を同一の輸液ラインを通して同時に注入しないこと。他の薬剤を同一の輸液ラインから連続注入する場合には、配合変化を起こさない輸液(生理食塩液又は乳酸リンゲル液)を本剤の投与前後に輸液ライン内に流すこと。

7.用法及び用量に関連する注意

7.1 ダプトマイシンは主に腎臓で排泄されるため、血液透析又は連続携行式腹膜透析(CAPD)を受けている患者を含む腎機能障害の成人患者では、下表を目安に本剤の投与間隔を調節すること。小児の腎機能障害患者に対する検討は行われていない。[9.2.1、9.2.2、16.6.1参照]
クレアチニンクリアランス(CLcr)(mL/min)効能・効果(成人)
敗血症、感染性心内膜炎深在性皮膚感染症、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、びらん・潰瘍の二次感染
≧301回6mg/kgを24時間ごと1回4mg/kgを24時間ごと
<30
(血液透析又はCAPDを受けている患者を含む)
1回6mg/kgを48時間ごと1回4mg/kgを48時間ごと
†可能な場合、血液透析日には血液透析後に本剤を投与すること。週3回でも可。
7.2 本剤は、1日2回以上投与しないこと。海外第I相及び第II相試験において1日2回以上投与した場合、血中CK値が上昇した。
7.3 グラム陰性菌等を含む混合感染と診断された場合、又は混合感染が疑われる場合は本剤と適切な薬剤を併用して治療を行うこと。ダプトマイシンはグラム陽性菌に対してのみ抗菌活性を有する。

5.効能又は効果に関連する注意

<効能共通>
5.1 本剤の使用にあたっては、耐性菌の出現等を防ぐため、原則として他の抗菌薬及びダプトマイシンに対する感受性を確認すること。[18.2参照]
5.2 本剤は肺炎に使用しないこと。本剤は肺サーファクタントに結合し、不活性化される。
<感染性心内膜炎>
5.3 成人の右心系感染性心内膜炎にのみ使用すること。左心系感染性心内膜炎に対して、国内での使用経験はなく、海外でも有効性は認められていない。また、小児の感染性心内膜炎に対する有効性及び安全性は確認されていない。

16.薬物動態

16.1 血中濃度
16.1.1 単回投与(点滴静注)
健康成人にダプトマイシン2、4、6、9及び12mg/kgを30分間単回点滴静注した際、ダプトマイシンの血漿中濃度-時間曲線下面積(AUC0-∞)及び最高血漿中濃度(Cmax)は、ほぼ用量に比例して増加した。終末相消失半減期(t1/2)、血漿クリアランス(CL)及び分布容積(Vd)は、用量によらずほぼ一定であった(下図及び表1)。
図 健康成人におけるダプトマイシン30分間点滴静注時の平均血漿中濃度の推移(平均、n=6)
表1 健康成人におけるダプトマイシン30分間点滴静注時の薬物動態パラメータ
用量(mg/kg)AUC0-∞(μg・hr/mL)Cmax(μg/mL)t1/2††(hr)Vd§(L/kg)CL§(mL/hr/kg)
2202.8(188.0,218.9)26.4(23.8,29.3)7.4(0.7)0.1087(0.0103)10.07(0.58)
4457.4(423.4,494.1)58.0(52.2,64.5)9.1(0.9)0.1175(0.0156)8.90(1.26)
6728.1(674.7,785.6)83.8(75.5,93.1)10.2(1.1)0.1212(0.0098)8.20(0.74)
9998.8(924.6,1079.0)113.5(102.0,126.2)9.7(1.0)0.1262(0.0146)8.92(0.73)
121434.8(1329.7,1548.3)155.4(140.0,172.5)9.4(0.9)0.1147(0.0067)8.47(0.73)
n=6†パネル及びパネル内投与量を固定効果、パネル内被験者を変量効果とした混合効果モデルによる最小二乗幾何平均(95%信頼区間)††調和平均(ジャックナイフ法を用いて計算した標準偏差)§算術平均(標準偏差)
16.1.2 単回投与(静脈内注射及び点滴静注)
健康成人にダプトマイシン6mg/kgをクロスオーバーで10秒間静脈内注射又は30分間点滴静注した際、静脈内注射のCmaxは、30分間点滴静注に比べ約1.5倍高かったが、AUC、C24hr及びt1/2等の他の薬物動態パラメータは同程度であった(表2)。
表2 健康成人におけるダプトマイシン6mg/kgを静脈内注射又は30分間点滴静注した際の薬物動態パラメータ
AUC0-∞(μg・hr/mL)Cmax(μg/mL)C24hr(μg/mL)t1/2††(hr)Vd§(L/kg)CL§(mL/hr/kg)
静脈内注射700(671,729)133(122,143)8.14(7.51,8.83)9.22(0.586)0.115(0.0103)8.60(0.690)
30分間点滴静注690(660,721)88.2(83.6,93.1)7.76(7.23,8.32)9.25(0.630)0.117(0.0115)8.72(0.758)
静脈内注射は10秒間投与で実施した。n=16†自然対数変換後の値に対する混合効果モデルから計算した最小二乗平均及び信頼区間を逆変換した。(95%信頼区間)††調和平均(ジャックナイフ法を用いて計算した標準偏差)§算術平均(標準偏差)
16.1.3 反復投与
<成人>
健康成人にダプトマイシン4、6及び10mg/kgを1日1回7日間反復静脈内投与した際、ダプトマイシンの薬物動態はおおむね線形(用量比例)で、時間(投与日数)非依存的であった。ダプトマイシンの血漿中濃度は、おおむね3~5日目で定常状態に達した。反復投与による蓄積性はほとんど認められず、4、6及び10mg/kg投与によるAUC0-24hr及びCmaxの累積係数(7日目/1日目)はそれぞれ1.15~1.17及び1.03~1.08であった。
<小児>
(1)国内第II相試験(029試験)
グラム陽性球菌による皮膚・軟部組織感染症の1~17歳の小児患者を対象に、ダプトマイシン5~10mg/kgを1日1回反復点滴静注、及びグラム陽性球菌による菌血症の1~17歳の小児患者を対象に、ダプトマイシン7~12mg/kgを1日1回反復点滴静注した後の薬物動態を評価した。ダプトマイシンの薬物動態パラメータは表3及び表4の通りであった。
表3 日本人小児患者におけるダプトマイシン5~10mg/kgを1日1回反復点滴静注した際の薬物動態パラメータ
年齢薬物動態パラメータ
用量(mg/kg)点滴時間(min)AUC0-24hr(μg・hr/mL)Cmax(μg/mL)t1/2(hr)Vss(mL)CLss/wt(mL/hr/kg)
12歳から17歳
(N=3)
530316(18.2)49.3(1.33)5.71(0.942)6410(1090)15.8(0.917)
7歳から11歳
(N=5)
730409(143)64.4(15.1)5.07(1.09)3930(2030)19.4(8.27)
2歳から6歳
(N=3)
960431(53.6)80.3(4.48)3.87(0.514)1750(486)21.1(2.69)
1歳から2歳未満
(N=3)
1060574(99.1)91.7(6.66)4.94(0.460)1150(299)17.8(2.86)
算術平均(標準偏差)
表4 日本人小児患者におけるダプトマイシン7~12mg/kgを1日1回反復点滴静注した際の薬物動態パラメータ
年齢薬物動態パラメータ
用量(mg/kg)点滴時間(min)AUC0-24hr(μg・hr/mL)Cmax(μg/mL)t1/2(hr)Vss(mL)CLss/wt(mL/hr/kg)
12歳から17歳
(N=1)
73042294.03.98511016.6
7歳から11歳
(N=1)
93059973.15.85401015.0
1歳から2歳未満
(N=2)
126050297.7,1104.46192023.9
†n=1
(2)海外第IV相試験(017試験)
グラム陽性菌による複雑性皮膚・軟部組織感染症の1~17歳の小児患者を対象に、ダプトマイシン5~10mg/kgを1日1回反復点滴静注した後の薬物動態を評価した。ダプトマイシンの薬物動態パラメータは表5の通りであった(外国人データ)。
表5 外国人小児患者におけるダプトマイシン5~10mg/kgを1日1回反復点滴静注した際の薬物動態パラメータ(母集団薬物動態解析)
年齢薬物動態パラメータ
用量(mg/kg)点滴時間(min)AUC0-24hr(μg・hr/mL)Cmax(μg/mL)t1/2(hr)Vss(mL)CLss/wt(mL/hr/kg)
12歳から17歳
(N=6)
530434(67.9)76.4(6.75)7.1(0.9)8200(3250)11.8(2.15)
7歳から11歳
(N=2)
73054392.46.8447013.2
2歳から6歳
(N=7)
960452(93.1)90.3(14.0)4.6(0.8)2750(832)20.8(4.29)
1歳から2歳未満
(N=27)
1060462(138)81.6(20.7)4.8(0.6)1670(446)23.1(5.43)
算術平均(標準偏差)†n=2の算術平均
(3)海外第IV相試験(005試験)
黄色ブドウ球菌による菌血症の2~17歳の小児患者を対象に、ダプトマイシン7~12mg/kgを1日1回反復点滴静注した後の薬物動態を評価した。ダプトマイシンの薬物動態パラメータは表6の通りであった(外国人データ)。
表6 外国人小児患者におけるダプトマイシン7~12mg/kgを1日1回反復点滴静注した際の薬物動態パラメータ(母集団薬物動態解析)
年齢薬物動態パラメータ
用量(mg/kg)点滴時間(min)AUC0-24hr(μg・hr/mL)Cmax(μg/mL)t1/2(hr)Vss(mL)CLss/wt(mL/hr/kg)
12歳から17歳
(N=13)
730656(334)104(35.5)7.5(2.3)6420(1980)12.4(3.9)
7歳から11歳
(N=19)
930579(116)104(14.5)6.0(0.8)4510(1470)15.9(2.8)
2歳から6歳
(N=19)
1260620(109)106(12.8)5.1(0.6)2200(570)19.9(3.4)
算術平均(標準偏差)
16.3 分布
16.3.1 健康成人におけるダプトマイシンの分布容積は約0.1L/kgで、2~12mg/kgの用量範囲でほぼ一定であった。また、ダプトマイシンは濃度非依存的にヒト血漿蛋白に可逆的に結合する(平均値90~93%)。
16.3.2 著しい腎機能障害成人患者(外国人、CLcr 30mL/min未満又は透析)においてダプトマイシンの血清蛋白結合率(83.5~87.6%)が低下する傾向を示した。軽度から中等度肝機能障害成人患者(外国人、Child-Pugh分類B)における蛋白結合率は健康成人と同様であった。
16.3.3 ラットにおける組織分布試験の結果、ダプトマイシンは単回投与及び反復投与後、血液-脳関門及び胎盤をごくわずかしか通過しなかった。
16.4 代謝
16.4.1 健康成人に14C-ダプトマイシン点滴静注後の血漿中放射能濃度は、微生物学的分析で測定した濃度と類似していた。総放射能濃度と微生物学的活性濃度の差より、不活性代謝物が尿中に認められた。別試験において、血漿中に代謝物は認められず、微量の3種類の酸化代謝物及び1種類の構造未知な代謝物が尿中に検出された。代謝部位は特定されていない(外国人データ)。
16.4.2 ヒト肝細胞を用いたin vitro試験において、ダプトマイシンはCYP1A2、2A6、2C9、2C19、2D6、2E1及び3A4の活性を阻害せず、さらにそれらの活性を誘導しないことが示された。また、in vitro試験において、ダプトマイシンはヒト肝ミクロソームにより代謝されなかった。ダプトマイシンは、P450を介して代謝される薬物の代謝を阻害又は誘導する可能性は低い。
16.5 排泄
16.5.1 ダプトマイシンは主に腎臓から排泄される。健康成人にダプトマイシン12mg/kg単回点滴静注した際、未変化体ダプトマイシンの投与後48時間までの尿中排泄率は73.4%で、腎クリアランスは約6mL/hr/kgであった。
16.5.2 健康成人に放射能標識したダプトマイシンを点滴静注した際、総放射能に基づくと、投与量の約78%が尿中に排泄され、このうち未変化体の尿中排泄率は投与量の約52%であった。また総放射能に基づくと、投与量の約6%が糞中に排泄された(外国人データ)。
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 腎機能障害患者
腎機能障害の程度がさまざまな成人患者(複雑性皮膚・軟部組織感染症及び黄色ブドウ球菌菌血症)にダプトマイシン4mg/kg又は6mg/kgを点滴静注した際、ダプトマイシンのクリアランスは減少し、AUCは増加した。CLcr(30mL/min未満)の患者及び透析患者(CAPD又は血液透析後に投与)におけるAUCは、腎機能正常の患者に比べてそれぞれ約2倍及び3倍高かった。腎機能障害患者にダプトマイシン4mg/kgもしくは6mg/kg点滴静注時の薬物動態パラメータを表7に示す(外国人データ)。
表7 腎機能障害成人患者にダプトマイシン4mg/kg又は6mg/kg点滴静注時の薬物動態パラメータ
正常軽度腎機能障害中等度腎機能障害重度腎機能障害血液透析、
CAPD
4mg/kg
AUC0-∞(μg・hr/mL)417±155
N=165
466±177
N=64
560±258
N=24
925±467
N=8
1244±374
N=21
t1/2(hr)9.39±4.74
N=165
10.75±8.36
N=64
14.70±10.50
N=24
27.83±14.85
N=8
29.81±6.13
N=21
CL(mL/hr/kg)10.9±4.0
N=165
9.9±4.0
N=64
8.5±3.4
N=24
5.9±3.9
N=8
3.7±1.9
N=21
6mg/kg
AUCss††(μg・hr/mL)545±296
N=62
637±215
N=29
868±349
N=15
1050,892
N=2
NA
平均±標準偏差腎機能の程度[CLcr(mL/min)]:正常(>80)、軽度(50~80)、中等度(30~<50)、重度(<30)†複雑性皮膚・軟部組織感染症患者及び健康被験者より得られた単回投与後の薬物動態パラメータ††黄色ブドウ球菌菌血症患者より得られた定常状態での薬物動態パラメータ
また、末期腎不全患者[(血液透析実施患者及びCAPD実施患者含む)にダプトマイシン4mg/kgもしくは6mg/kg反復点滴静注時の定常状態での推定曝露量(シミュレーションにより算出)を表8に示す。[7.1、9.2.1、9.2.2参照]
表8 末期腎不全成人患者にダプトマイシン4mg/kg又は6mg/kg反復点滴静注時の定常状態での曝露量の推定値
用法Cmax(μg/mL)AUC0-24hr(μg・hr/mL)AUC24-48hr(μg・hr/mL)AUC48-72hr(μg・hr/mL)AUC0-168hr(μg・hr/mL)
4mg/kg
血液透析未実施48時間
間隔
54.87984827984638
血液透析未実施48時間
-48時間
-72時間間隔
48.6~53.97814712893838
血液透析
(投与後)
48時間
-48時間
-72時間間隔
43.9~47.14962851752425
血液透析
(投与前)††
48時間
-48時間
-72時間間隔
45.1~48.66804092463368
CAPD§48時間
間隔
51.97234097234119
6mg/kg
血液透析未実施48時間
間隔
82.1119672211966950
血液透析未実施48時間
-48時間
-72時間間隔
72.9~80.811717074345756
血液透析
(投与後)
48時間
-48時間
-72時間間隔
65.9~70.77434282623637
血液透析
(投与前)††
48時間
-48時間
-72時間間隔
67.7~72.910196143695052
CAPD§48時間
間隔
77.9108561410856182
†投与終了後0~4時間に実施††1回目及び2回目投与時は投与終了後44~48時間に、3回目投与時は投与終了後68~72時間に実施§連続携行式腹膜透析∥定常状態の1回目投与時のCmax~3回目投与時のCmax¶週3回投与
16.6.2 肝機能障害患者
中等度肝機能障害成人患者(Child-Pugh分類B)にダプトマイシン6mg/kgを単回点滴静注した際の薬物動態は、健康成人と変わらなかった。重度肝機能障害成人患者(Child-Pugh分類C)での薬物動態は検討していない(外国人データ)。
16.6.3 高齢者
健康高齢者(75歳以上)及び健康若年成人(18~30歳)に、ダプトマイシン4mg/kg単回点滴静注した際、高齢者では若年成人に比べてダプトマイシンの血漿クリアランスは約35%低く、AUC0-∞は約58%高かったが、Cmaxに差はなかった(外国人データ)。
16.6.4 肥満
ダプトマイシンの薬物動態を中等度肥満[体格指数(BMI)25~39.9kg/m2]の成人被験者6例、重度肥満(BMI 40kg/m2以上)の成人被験者6例において検討した。AUCは、非肥満対照被験者と比較して中等度の肥満被験者では約30%、重度肥満の被験者では31%高かった(外国人データ)。
16.7 薬物相互作用
16.7.1 トブラマイシンとの併用
健康成人にダプトマイシン2mg/kgとトブラマイシン1mg/kgを併用して点滴静注した際、ダプトマイシンのAUC0-∞及びCmaxはそれぞれ8.7%及び12.7%上昇し、トブラマイシンのAUC0-∞及びCmaxはそれぞれ6.6%及び10.7%低下した。臨床用量のダプトマイシンとトブラマイシンの相互作用は不明である(外国人データ)。
16.7.2 その他の薬剤との併用
健康成人におけるダプトマイシンとアズトレオナム、ワルファリン及びプロベネシドとの薬物相互作用が検討された。ダプトマイシンはワルファリン及びプロベネシドの薬物動態に影響を及ぼさず、またこれらの薬剤もダプトマイシンの薬物動態に影響を与えなかった。アズトレオナムはダプトマイシンの薬物動態にほとんど影響を与えなかった(外国人データ)。

併用注意 

薬剤名等臨床症状・措置方法機序・危険因子
HMG-CoA還元酵素阻害剤
[8.2参照]
本剤及びHMG-CoA還元酵素阻害剤を併用した場合CKが上昇するおそれがあることから、本剤投与中はこれらの薬剤の休薬を考慮すること。これらの薬剤を前治療又は併用した患者では、CK値を頻回にモニタリングすること。機序不明

重大な副作用 

次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 ショック(頻度不明)、アナフィラキシー(0.9%)[8.3参照]
11.1.2 急性汎発性発疹性膿疱症(頻度不明)
11.1.3 横紋筋融解症(頻度不明)
筋肉痛、脱力感、CK値上昇、血中及び尿中ミオグロビン上昇が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.4 好酸球性肺炎(頻度不明)
本剤投与2~4週後、発熱、低酸素血症性呼吸困難、びまん性肺浸潤を伴う好酸球性肺炎が報告されている。これらの症状や徴候があらわれた場合には、投与を中止し、全身ステロイド療法等の適切な処置を行うこと。
11.1.5 末梢性ニューロパチー(頻度不明)
本剤投与中は末梢性ニューロパチーの徴候及び症状に注意すること。
11.1.6 腎不全(頻度不明)
腎不全等の重篤な腎障害があらわれることがある。
11.1.7 偽膜性大腸炎(頻度不明)
偽膜性大腸炎が疑われたり、確定診断がなされた場合には、本剤の投与中止又は適切な処置を考慮すること。偽膜性大腸炎は、ダプトマイシンを含むほぼすべての抗菌薬の使用により報告されている。

その他の副作用 

次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。

1~10%頻度不明
感染症及び寄生虫症尿路感染、真菌感染、カンジダ感染、真菌血症
血液及びリンパ系障害貧血、血小板増加症、好酸球増加症
代謝及び栄養障害高血糖、電解質失調、食欲減退
精神障害不安、不眠症
神経系障害浮動性めまい、頭痛、錯感覚、振戦、味覚異常
耳及び迷路障害回転性めまい
心臓障害上室性不整脈
血管障害高血圧、低血圧、潮紅
胃腸障害下痢消化器痛/腹痛、嘔吐、鼓腸/腹部膨満感/腹部膨満、便秘、悪心、消化不良
肝胆道系障害黄疸
皮膚及び皮下組織障害湿疹そう痒症、発疹、蕁麻疹、小水疱水疱性皮疹(粘膜性又は非粘膜性)
筋骨格系及び結合組織障害四肢痛、筋力低下、筋肉痛、関節痛
腎及び尿路障害腎障害
生殖系及び乳房障害腟炎
全身障害及び投与局所様態発熱無力症、注射部位反応、悪寒、疲労、血管性浮腫
臨床検査肝機能検査異常(AST上昇、ALT上昇、Al-P上昇)、血小板数減少、CK上昇、好酸球数増加血中クレアチニン上昇、INR増加、LDH上昇、プロトロンビン時間延長、血中ミオグロビン上昇、尿中ミオグロビン上昇
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