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効能・効果/用法・用量 

効能・効果

  • 慢性期又は移行期の慢性骨髄性白血病

用法・用量

  • 通常、成人にはニロチニブとして1回400mgを食事の1時間以上前又は食後2時間以降に1日2回、12時間毎を目安に経口投与する。ただし、初発の慢性期の慢性骨髄性白血病の場合には、1回投与量は300mgとする。なお、患者の状態により適宜減量する。
  • 通常、小児には体表面積に合わせて次の投与量(ニロチニブとして1回約230mg/m2)を食事の1時間以上前又は食後2時間以降に1日2回、12時間毎を目安に経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。
    体表面積1回投与量
    0.32m2以下50mg
    0.33~0.54m2100mg
    0.55~0.76m2150mg
    0.77~0.97m2200mg
    0.98~1.19m2250mg
    1.20~1.41m2300mg
    1.42~1.63m2350mg
    1.64m2以上400mg

禁忌 

【警告】

  • 1.1 本剤は、緊急時に十分対応できる医療施設において、造血器悪性腫瘍の治療に対して十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤の投与が適切と判断される症例についてのみ投与すること。また、本剤による治療開始に先立ち、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分に説明し、同意を得てから投与を開始すること。
  • 1.2 本剤投与後にQT間隔延長が認められており、心タンポナーデによる死亡も報告されているので、患者の状態を十分に観察すること。[7.4.2、8.2、9.1.2、9.1.3、10.2、11.1.2参照]
【禁忌】

次の患者には投与しないこと

  • 2.1 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
  • 2.2 妊婦又は妊娠している可能性のある女性[9.5参照]

注意 

9.特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 心疾患又はその既往歴のある患者
心疾患が悪化するおそれがある。[11.1.3参照]
9.1.2 QT間隔延長のおそれ又はその既往歴のある患者
QT間隔延長が起こるおそれがある。[1.2、8.2、11.1.2参照]
9.1.3 電解質異常のある患者(低カリウム血症又は低マグネシウム血症等)
投与開始前に必ず電解質の補正を行い、定期的に血液検査を実施すること。QT間隔延長を起こすおそれがある。[1.2、8.2、11.1.2参照]
9.1.4 膵炎又はその既往歴のある患者
膵炎が悪化又は再発するおそれがある。[8.5、11.1.11参照]
9.1.5 イマチニブに忍容性のない患者
前治療の副作用の内容を確認すること。本剤を投与する際には、慎重に経過観察を行い、副作用の発現に注意すること。イマチニブの投与中止の原因となった副作用と同様の副作用が発現するおそれがある。
9.1.6 B型肝炎ウイルスキャリアの患者又は既往感染者(HBs抗原陰性、かつHBc抗体又はHBs抗体陽性)
本剤の投与開始後は継続して肝機能検査や肝炎ウイルスマーカーのモニタリングを行うなど、B型肝炎ウイルスの再活性化の徴候や症状の発現に注意すること。Bcr-Ablチロシンキナーゼ阻害剤の投与によりB型肝炎ウイルスの再活性化があらわれることがある。[8.6、11.1.9参照]
9.3 肝機能障害患者
肝機能障害が悪化するおそれがある。また、肝機能障害により本剤の血中濃度が上昇するとの報告がある。[8.5、16.6.1参照]
9.4 生殖能を有する者
妊娠可能な女性に対しては、投与中及び投与終了後一定期間は適切な避妊を行うよう指導すること。[9.5参照]
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。動物実験(ラット、ウサギ)において、母動物に毒性を示す用量で胚・胎児毒性(吸収胚数の増加、胎児体重の減少、外表及び骨格の変異)が認められたとの報告がある。[2.2、9.4参照]
9.6 授乳婦
授乳しないことが望ましい。動物実験(ラット)で乳汁中へ移行したとの報告がある。
9.7 小児等
9.7.1 低出生体重児、新生児、乳児又は2歳未満の幼児を対象とした臨床試験は実施していない。
9.7.2 臨床試験において、本剤が投与された2~18歳未満の患者に、成長遅延の傾向が認められた。
9.8 高齢者
患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。一般に生理機能が低下している。

8.重要な基本的注意

8.1 血小板減少、好中球減少、貧血があらわれることがあるので、定期的に血液検査(血球数算定、白血球分画等)を行うこと。血液検査を投与開始前と投与後の2ヵ月間は2週毎、その後は1ヵ月毎に行い、また必要に応じて追加すること。これらの血球減少はイマチニブ抵抗性の慢性骨髄性白血病患者において頻度が高く、また慢性期に比べ移行期の慢性骨髄性白血病患者での頻度が高い。[11.1.1参照]
8.2 QT間隔延長があらわれることがあるので、本剤投与開始前には、心電図検査を行うこと。また、本剤投与中は適宜心電図検査等を行うこと。[1.2、7.4.2、9.1.2、9.1.3、10.2、11.1.2参照]
8.3 外国において、本剤投与後の突然死が、心疾患又はその既往歴、心リスク因子のある患者で報告されている。QT間隔延長が寄与因子の可能性がある。[11.1.2、11.1.3参照]
8.4 体液貯留があらわれることがあるので、体重を定期的に測定するなど観察を十分に行うこと。[11.1.12参照]
8.5 血中のビリルビン、肝トランスアミナーゼ、リパーゼ増加があらわれることがあるので、肝機能や膵酵素に関する血液検査を定期的に行うこと。[7.4.2、9.1.4、9.3、11.1.10、11.1.11参照]
8.6 Bcr-Ablチロシンキナーゼ阻害剤の投与によりB型肝炎ウイルスの再活性化があらわれることがあるので、本剤投与に先立って肝炎ウイルス感染の有無を確認し、本剤投与前に適切な処置を行うこと。[9.1.6、11.1.9参照]
8.7 感染症があらわれることがあるので、定期的に血液検査を実施するなど観察を十分に行うこと。[11.1.9参照]
8.8 高血糖があらわれることがあるため、本剤投与中は、定期的に血糖値の測定を行うこと。[11.1.6参照]
8.9 めまい、霧視・視力低下等の視力障害等があらわれることがあるので、このような場合には、高所作業、自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。
8.10 頭蓋内出血、消化管出血、後腹膜出血があらわれることがあるので、定期的に血液検査を実施するなど観察を十分に行うこと。[11.1.8参照]
8.11 腫瘍崩壊症候群があらわれることがあるので、血清中電解質濃度及び腎機能検査を行うなど、患者の状態を十分に観察すること。[11.1.16参照]

14.適用上の注意

14.1 薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。

7.用法及び用量に関連する注意

7.1 成人における本剤の用法・用量は、「17.臨床成績」の項の内容を熟知した上で、患者の状態や化学療法歴に応じて選択すること。
7.2 他の抗悪性腫瘍剤との併用について、有効性及び安全性は確立していない。
7.3 食後に本剤を投与した場合、本剤の血中濃度が増加するとの報告がある。食事の影響を避けるため食事の1時間前から食後2時間までの間の服用は避けること。[16.2.1参照]
7.4 副作用により、本剤を休薬、減量又は中止する場合には、副作用の症状、重症度等に応じて以下の基準を考慮すること。
7.4.1 血液系の副作用と投与量調節の基準
白血病に関連しない好中球減少、血小板減少、貧血(ヘモグロビン低下)が認められた場合は、次表を参考に投与量を調節すること。[11.1.1参照]
休薬・減量基準投与量調節
300mg1日2回投与中の初発の慢性期の慢性骨髄性白血病(CML)好中球数<1,000/mm3
又は
血小板数<50,000/mm3
又は
ヘモグロビン<8.0g/dL
1. 好中球数1,500/mm3以上又は血小板数75,000/mm3以上又はヘモグロビン10.0g/dL以上に回復するまで休薬する。
2. 2週間以内に回復した場合は、300mg1日2回の用量で再開する。
3. 2週間以内に回復しなかった場合は、患者の状態により、400mg1日1回に減量する。
400mg1日2回投与中のイマチニブ抵抗性の慢性期CML好中球数<1,000/mm3
又は
血小板数<50,000/mm3
1. 好中球数1,000/mm3以上又は血小板数50,000/mm3以上に回復するまで休薬する。
2. 2週間以内に回復した場合は、400mg1日2回の用量で再開する。
3. 2週間以内に回復しなかった場合は、患者の状態により、400mg1日1回に減量する。
400mg1日2回投与中のイマチニブ抵抗性の移行期CML好中球数<500/mm3
又は
血小板数<10,000/mm3
1. 好中球数1,000/mm3以上又は血小板数20,000/mm3以上に回復するまで休薬する。
2. 2週間以内に回復した場合は、400mg1日2回の用量で再開する。
3. 2週間以内に回復しなかった場合は、患者の状態により、400mg1日1回に減量する。
小児のCML好中球数<1,000/mm3
又は
血小板数<50,000/mm3
1. 好中球数1,500/mm3以上又は血小板数75,000/mm3以上に回復するまで休薬する。
2. 2週間以内に回復した場合は、230mg/m21日2回の用量で再開する。
3. 2週間以内に回復しなかった場合は、患者の状態により、230mg/m21日1回に減量する。
4. 減量後に再発した場合は、本剤の投与を中止する。
7.4.2 非血液系の副作用と投与量調節の基準
肝機能検査値(ビリルビン、AST、ALT)、膵機能検査値(リパーゼ)の上昇、QT間隔延長及びその他の非血液系の副作用が認められた場合は、次表を参考に投与量を調節すること。[1.2、8.2、8.5、11.1.2、11.1.10、11.1.11参照]
(1)初発の慢性期の慢性骨髄性白血病
休薬・減量基準投与量調節
肝機能検査値
(ビリルビン、AST、ALT)
ビリルビン値>施設正常値上限の1.5倍かつ≦3倍
又は
AST値、ALT値>施設正常値上限の2.5倍かつ≦5倍
1. ビリルビン値が施設正常値上限の1.5倍未満に、AST、ALT値が2.5倍未満に低下するまで本剤を休薬する。
2. 300mg1日2回の用量で再開する。
ビリルビン値>施設正常値上限の3倍
又は
AST値、ALT値>施設正常値上限の5倍
1. ビリルビン値が施設正常値上限の1.5倍未満に、AST、ALT値が2.5倍未満に低下するまで本剤を休薬する。
2. 400mg1日1回に減量して再開する。
膵機能検査値
(リパーゼ)
リパーゼ値>施設正常値上限の2倍1. リパーゼ値が施設正常値上限の1.5倍未満に低下するまで本剤を休薬する。
2. 400mg1日1回に減量して再開する。
QT間隔延長480msec以上の延長1. 本剤を休薬する。
2. 2週間以内に、450msec未満かつベースライン値からの延長が20msec以内に回復した場合は、300mg1日2回の用量で再開する。
2週間の休薬以降も、450msec以上の場合は、本剤の投与を中止する。
3. 投与を再開した後に、再度、450msec以上の延長が認められた場合は、本剤の投与を中止する。
グレード2のその他の非血液系の副作用が発現した場合は、グレード1以下に回復するまで、本剤を休薬すること。投与を再開する場合には、300mg1日2回の用量で再開する。
グレード3以上のその他の非血液系の副作用が発現した場合は、グレード1以下に回復するまで、本剤を休薬すること。投与を再開する場合には、400mg1日1回に減量するなど注意すること(グレードはNCI-CTCに準じる)。
(2)イマチニブ抵抗性の慢性期又は移行期の慢性骨髄性白血病
休薬・減量基準投与量調節
肝機能検査値
(ビリルビン、AST、ALT)
ビリルビン値>施設正常値上限の3倍
又は
AST値、ALT値>施設正常値上限の5倍
1. ビリルビン値が施設正常値上限の1.5倍未満に、AST、ALT値が2.5倍未満に低下するまで本剤を休薬する。
2. 400mg1日1回に減量して再開する。
膵機能検査値
(リパーゼ)
リパーゼ値>施設正常値上限の2倍1. リパーゼ値が施設正常値上限の1.5倍未満に低下するまで本剤を休薬する。
2. 400mg1日1回に減量して再開する。
QT間隔延長480msec以上の延長1. 本剤を休薬する。
2. 2週間以内に、450msec未満かつベースライン値からの延長が20msec以内に回復した場合は、400mg1日2回の用量で再開する。
2週間の休薬以降も、450msec以上480msec未満の場合は、400mg1日1回に減量して再開する。
3. 400mg1日1回に減量して再開した後に、再度、480msec以上の延長が認められた場合は、本剤の投与を中止する。
グレード3以上のその他の非血液系の副作用が発現した場合は、グレード1以下に回復するまで、本剤を休薬すること。投与を再開する場合には、400mg1日1回に減量するなど注意すること(グレードはNCI-CTCに準じる)。
(3)小児の慢性骨髄性白血病
休薬・減量基準投与量調節
肝機能検査値
(ビリルビン、AST、ALT)
ビリルビン値>施設正常値上限の1.5倍
又は
AST値、ALT値>施設正常値上限の5倍
1. ビリルビン値については施設正常値上限の1.5倍未満、AST、ALT値については3倍未満に低下するまで本剤を休薬する。
2. 休薬前に230mg/m21日2回を投与していた場合は、230mg/m21日1回に減量して再開する。休薬前に230mg/m21日1回を投与していた場合は、4週間以内に上記1の値まで回復しなければ本剤の投与を中止する。
膵機能検査値
(リパーゼ)
リパーゼ値>施設正常値上限の2倍1. リパーゼ値が施設正常値上限の1.5倍未満に低下するまで本剤を休薬する。
2. 休薬前に230mg/m21日2回を投与していた場合は、230mg/m21日1回に減量して再開する。休薬前に230mg/m21日1回を投与していた場合は、本剤の投与を中止する。
QT間隔延長480msec以上の延長1. 本剤を休薬する。
2. 2週間以内に、450msec未満かつベースライン値からの延長が20msec以内に回復した場合、休薬前に230mg/m21日2回を投与していた場合は、230mg/m21日1回に減量して再開する。休薬前に230mg/m21日1回を投与していた場合は、本剤の投与を中止する。
2週間の休薬以降も、450msec以上の場合は、本剤の投与を中止する。
3. 投与を再開した後に、再度、450msec以上の延長が認められた場合は、本剤の投与を中止する。
グレード2以上のその他の非血液系の副作用が発現した場合(グレード2の皮疹の初回発現時は、適切な治療を行っても回復しない場合、下痢、嘔吐の発現時は、グレード3以上が発現した場合)は、グレード1以下に回復するまで、本剤を休薬すること。投与を再開する場合には、休薬前に230mg/m21日2回を投与していた場合は、230mg/m21日1回に減量して再開すること。休薬前に230mg/m21日1回を投与していた場合は、本剤の投与を中止すること(グレードはNCI-CTCに準じる)。

5.効能又は効果に関連する注意

5.1 染色体検査又は遺伝子検査により慢性骨髄性白血病と診断された患者に使用すること。
5.2 「17.臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、適応患者の選択を行うこと。
5.3 イマチニブ抵抗性の慢性骨髄性白血病患者に対する本剤の投与は、イマチニブで効果不十分又はイマチニブに忍容性のない患者を対象とすること。

16.薬物動態

16.1 血中濃度
16.1.1 反復投与
(1)初発の慢性期の慢性骨髄性白血病
初発の慢性期の慢性骨髄性白血病日本人患者(8例)にニロチニブ300mgを1日2回(1日用量として600mg)反復経口投与したときの定常状態(投与開始8日目以降)でのCmax及びAUC0-12はそれぞれ1,292ng/mL及び11,032ng・h/mLであった。
初発の慢性期の慢性骨髄性白血病日本人患者にニロチニブを1日2回反復経口投与したときの血清中薬物動態パラメータ
1日用量(mg)NTmax(h)Cmax(ng/mL)Cmin(ng/mL)AUC0-12(ng・h/mL)
定常状態600(300×2)82.04(0.0~7.95)1,292±8531,056±83711,032±7,173
Tmaxは中央値(最小値~最大値)を、それ以外は平均値±標準偏差を示す。
初発の慢性期の慢性骨髄性白血病日本人患者にニロチニブ300mgを1日2回反復経口投与したときの血清中ニロチニブ濃度推移(平均値+標準偏差)
(2)イマチニブ抵抗性の慢性期又は移行期の慢性骨髄性白血病
イマチニブで効果不十分又はイマチニブに忍容性のない慢性期、移行期、急性期注1)の慢性骨髄性白血病及びフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病注1)の日本人患者(42例)にニロチニブ200mgを1日1回注2)、400mgを1日1回注2)又は400mgを1日2回(1日用量として800mg)反復経口投与したとき、投与開始6日目には定常状態に到達し、AUCは投与初日のそれぞれ2.1倍、2.0倍及び2.6倍となった。400mgを1日1回投与したときのCmax及びAUCは、200mgを1日1回投与したときの2倍であった。また、400mgを1日2回投与したときの定常状態における1日あたりのAUC(AUC0-12を2倍したもの)は、400mgを1日1回投与したときの1.8倍であり、概ね1日用量に比例して増加した。
イマチニブ抵抗性の慢性期、移行期、急性期の慢性骨髄性白血病及びフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病の日本人患者にニロチニブを1日1回又は1日2回反復経口投与したときの血清中薬物動態パラメータ
1日用量(mg)NTmax(h)Cmax(ng/mL)Cmina)(ng/mL)AUC0-24(ng・h/mL)AUC0-12(ng・h/mL)
1日目200(200×1)43.1(3.0~4.0)491±174169±96.46,410±2,680
400(400×1)43.5(1.9~7.0)818±420324±16411,600±5,630
800(400×2)333.0(2.0~23.0)1,070±458Not measured7,850±2,790
15日目200(200×1)33.0(3.0~7.0)727±170322±73.611,000±766
400(400×1)43.0(2.0~7.1)1,600±512575±30121,200±9,340
800(400×2)283.0(1.8~8.0)2,320±1,0701,170±58819,000±9,090b)
Tmaxは中央値(最小値~最大値)を、それ以外は平均値±標準偏差を示す。a)1日1回投与では投与後24時間の濃度を、1日2回投与では投与後12時間の濃度を示す。b)N=26
イマチニブ抵抗性の慢性期、移行期、急性期の慢性骨髄性白血病及びフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病の日本人患者にニロチニブ400mgを1日2回反復経口投与したときの血清中ニロチニブ濃度推移(平均値+標準偏差)
16.2 吸収
ニロチニブの絶対バイオアベイラビリティに関するデータは得られていないが、健康成人に14C-標識ニロチニブを経口投与したとき、放射能の68.5%が未変化体として糞中に回収されたことから、ニロチニブが消化管では代謝されず、また吸収されたニロチニブは未変化体として消化管に排泄されないと仮定したとき、ヒトにニロチニブを経口投与したときの吸収率は約30%と推定された(外国人のデータ)。
16.2.1 食事の影響
ニロチニブを通常食摂取30分後及び2時間後に投与したとき、Cmaxは空腹時に比べてそれぞれ1.55倍及び1.33倍に増加し、AUCは1.32倍及び1.19倍に増加した。また、高脂肪食摂取30分後に投与したとき、Cmax及びAUCは空腹時に比べてそれぞれ2.12倍及び1.82倍に増加した(外国人のデータ)。
母集団薬物動態解析の結果、胃全摘出及び部分切除を受けた患者では、ニロチニブの吸収(相対バイオアベイラビリティ)がそれぞれ約48%及び22%低下すると推定された。胃を切除していない患者に対する相対バイオアベイラビリティのベイズ推定値(中央値[最小値~最大値])は、胃全摘出を受けた患者(n=14)では53%[27~124%]、部分切除を受けた患者(n=18)では80%[45~193%]であった(外国人のデータ)。[7.3参照]
16.3 分布
ニロチニブの血漿中蛋白結合率は約98%と高く、また濃度に依存しなかった(in vitro)。ニロチニブは血清アルブミン及びα1-酸性糖蛋白質に結合し、主結合蛋白はα1-酸性糖蛋白質であると考えられた(in vitro)。ヒト血液中でのニロチニブの血液-血漿中濃度比は0.68であった(in vitro)。
16.4 代謝
健康成人に14C-標識ニロチニブ400mgを単回注3)経口投与したとき、血清中のニロチニブ由来放射能の87.5%は未変化体であった。主な代謝経路はメチルイミダゾール環のメチル基の水酸化及び水酸基のカルボン酸への更なる酸化であった(外国人のデータ)。
In vitro試験の結果から、ニロチニブの主代謝酵素はCYP3A4であり、CYP2C8も一部寄与すると考えられた。
16.5 排泄
健康成人に14C-標識ニロチニブを経口投与したとき、投与168時間後までに投与放射能の90%以上が糞中に排泄され、尿中にはニロチニブ及びその代謝物由来の放射能は検出されなかった。したがって、ニロチニブの主排泄経路は糞中であると考えられた。糞中放射能は主に未変化体に由来するものであった(投与量の68.5%)(外国人のデータ)。
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 肝機能障害患者における薬物動態
ニロチニブの血清中濃度は肝機能障害によりわずかに上昇し、軽度(Child-Pugh分類A)、中等度(Child-Pugh分類B)及び重度(Child-Pugh分類C)の肝機能障害を有する被験者にニロチニブを単回経口投与したときのAUCはそれぞれ健康被験者の1.35倍、1.35倍、1.19倍であった。また、単回投与時の血清中濃度推移データを用いて反復投与時の定常状態におけるニロチニブの濃度推移をシミュレーションした結果、軽度、中等度及び重度の肝機能障害を有する被験者における定常状態でのニロチニブのCmaxは、健康被験者に比べてそれぞれ1.29倍、1.18倍、1.22倍になると推定された。肝機能障害によるニロチニブの薬物動態への影響は小さいことから、肝機能障害を有する患者における用量調節の必要はないと考えられる(外国人のデータ)。[9.3参照]
16.6.2 小児患者における薬物動態
小児白血病患者にニロチニブを1回230mg/m2を50mg単位の用量(最大単回投与量400mg)で投与したとき、定常状態における曝露量は、成人患者に400mgを1日2回投与したときと同程度であった。また、母集団薬物動態解析の結果、単回投与時、反復投与時のニロチニブの曝露量は、2歳以上12歳未満の小児患者と12歳以上18歳未満の小児患者とで違いはなかった。
注1)本剤の承認された効能又は効果は、慢性期又は移行期の慢性骨髄性白血病である。
注2)本剤の承認された用法及び用量は、イマチニブ抵抗性の慢性期又は移行期の慢性骨髄性白血病の場合、成人では1回400mgを1日2回である。
注3)本剤の承認された用法及び用量は、成人では1回400mgを1日2回であり、初発の慢性期の慢性骨髄性白血病の場合、1回投与量は300mgである。

併用注意 

薬剤名等臨床症状・措置方法機序・危険因子
CYP3A4を阻害する薬剤等
アゾール系抗真菌剤(イトラコナゾール、ボリコナゾール等)
リトナビル
クラリスロマイシン
グレープフルーツジュース等
本剤の血中濃度が上昇することがあるため、CYP3A4阻害作用がない又は弱い薬剤への代替を考慮すること。併用する場合は、観察を十分に行いQT間隔延長等に注意すること。
また、本剤とアゾール系抗真菌剤(ケトコナゾール:国内未発売の経口剤)との併用により、本剤のCmax及びAUCはそれぞれ1.8倍及び3倍に上昇したとの報告がある。
これらの薬剤等はCYP3A4活性を阻害することにより、本剤の代謝を阻害し、血中濃度を上昇させる可能性がある。
CYP3A4を誘導する薬剤等
フェニトイン
リファンピシン
カルバマゼピン
フェノバルビタール
デキサメタゾン
セイヨウオトギリソウ(St.John's Wort,セント・ジョーンズ・ワート)含有食品等
本剤の血中濃度が低下することがあるため、CYP3A4誘導作用が弱い薬剤への代替を考慮すること。
本剤とリファンピシンの併用により、本剤のCmax及びAUCがそれぞれ1/3及び1/5に低下したとの報告がある。
これらの薬剤等はCYP3A4を誘導することにより、本剤の代謝を促進し、血中濃度を低下させる可能性がある。
CYP3A4により代謝される薬剤
ミダゾラム等
これらの薬剤の血中濃度が上昇することがある。本剤とミダゾラムの併用により、ミダゾラムのCmax及びAUCはそれぞれ2.0倍及び2.6倍に上昇したとの報告がある。本剤がこれらの薬剤の代謝を阻害し、血中濃度を上昇させる可能性がある。
CYP3A4、P糖蛋白の基質及び阻害する薬剤
イマチニブ等
本剤及びこれらの薬剤の血中濃度が上昇することがある。
本剤とイマチニブの併用により、イマチニブのAUCは18~39%、本剤のAUCは18~40%上昇したとの報告がある。
これらの薬剤がCYP3A4及びP糖蛋白の活性を阻害して本剤の血中濃度を上昇させる可能性、及び本剤がCYP3A4及びP糖蛋白の活性を阻害してこれらの薬剤の血中濃度を上昇させる可能性がある。
抗不整脈剤
アミオダロン
ジソピラミド
プロカインアミド
キニジン
ソタロール等
QT間隔延長を起こすおそれのある他の薬剤
クラリスロマイシン
ハロペリドール
モキシフロキサシン
ベプリジル
ピモジド等
[1.2、8.2、11.1.2参照]
QT間隔延長を起こす又は悪化させるおそれがあるため、観察を十分に行うこと。共にQT間隔延長の副作用を有するため。
胃内のpHを上昇させる薬剤
プロトンポンプ阻害剤等
本剤の吸収が低下することがある。
本剤とエソメプラゾールの併用により、本剤のCmax及びAUCはそれぞれ27%及び34%減少したとの報告がある。
なお、ファモチジン、制酸剤については、本剤と服用時間をずらすことで、本剤のCmax及びAUCに影響はなかったとの報告がある(ファモチジン:本剤投与10時間前及び2時間後に投与、制酸剤:本剤投与2時間前又は2時間後に投与)。
本剤の溶解度はpHの上昇により低下するため。

重大な副作用 

次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 骨髄抑制
汎血球減少(0.3%)、好中球減少(14.5%)、白血球減少(8.6%)、血小板減少(20.4%)、貧血(11.1%)があらわれることがある。血小板減少、好中球減少、貧血があらわれた場合には休薬、減量又は中止し、必要に応じてG-CSF製剤の投与、輸血を考慮すること。[7.4.1、8.1参照]
11.1.2 QT間隔延長(3.1%)[1.2、7.4.2、8.2、8.3、9.1.2、9.1.3、10.2参照]
11.1.3 心筋梗塞(1.1%)、狭心症(1.4%)、心不全(0.3%)
症状や徴候がみられた場合には速やかに検査を行うこと。[8.3、9.1.1参照]
11.1.4 末梢動脈閉塞性疾患(0.9%)
閉塞性動脈硬化症、末梢性虚血、四肢動脈血栓症等の末梢動脈閉塞性疾患があらわれることがあり、壊死に至った例が報告されている。観察を十分に行い、間欠性跛行、疼痛、冷感、しびれ等が認められた場合には投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。
11.1.5 脳梗塞(頻度不明)、一過性脳虚血発作(0.3%)
11.1.6 高血糖(6.8%)[8.8参照]
11.1.7 心膜炎(0.2%)
11.1.8 出血(頭蓋内出血(頻度不明)、消化管出血(0.2%)、後腹膜出血(頻度不明)
出血性ショックに至ることがある。[8.10参照]
11.1.9 感染症
肺炎(0.5%)、敗血症(0.2%)等の感染症があらわれることがある。また、B型肝炎ウイルスの再活性化があらわれることがある。[8.6、8.7、9.1.6参照]
11.1.10 肝炎(0.2%)、肝機能障害(4.8%)、黄疸(0.6%)[7.4.2、8.5参照]
11.1.11 膵炎(2.0%)[7.4.2、8.5、9.1.4参照]
11.1.12 体液貯留(胸水(0.5%)、肺水腫(頻度不明)、心嚢液貯留(0.3%)、うっ血性心不全(頻度不明)、心タンポナーデ(0.2%)
急激な体重の増加、呼吸困難等の異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。[8.4参照]
11.1.13 間質性肺疾患(0.2%)
11.1.14 脳浮腫(頻度不明)
11.1.15 消化管穿孔(頻度不明)
11.1.16 腫瘍崩壊症候群(頻度不明)
異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置(生理食塩液、高尿酸血症治療剤等の投与、透析等)を行うとともに、症状が回復するまで患者の状態を十分に観察すること。[8.11参照]

その他の副作用 

次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。

1%以上0.5%~1%未満0.5%未満頻度不明
皮膚発疹(41.4%)、そう痒症(15.6%)、脱毛症(11.4%)、皮膚乾燥(9.7%)、紅斑、皮膚炎、湿疹、皮膚色素過剰、多汗症、寝汗、皮膚剥脱、過角化蕁麻疹、挫傷、皮膚乳頭腫、皮膚疼痛、ざ瘡斑状出血、光線過敏、水疱、結節性紅斑、皮膚嚢腫、皮膚萎縮、脂腺過形成、皮膚肥厚、皮膚変色、顔面腫脹、剥脱性発疹、多形紅斑手足症候群、点状出血、皮膚潰瘍
精神障害不眠症不安、うつ病不快気分、錯乱状態、失見当識
神経系障害頭痛(20.8%)、浮動性めまい、感覚鈍麻、味覚異常、末梢性ニューロパチー片頭痛、嗜眠、錯感覚、意識消失、失神、振戦健忘、知覚過敏、異常感覚、下肢静止不能症候群注意力障害、視神経炎、顔面神経麻痺
眼乾燥、結膜炎、眼瞼浮腫、眼そう痒症、眼充血光視症、結膜出血、眼痛、視力低下、眼窩周囲浮腫眼瞼炎、眼刺激、網脈絡膜症、強膜充血、結膜充血、オキュラーサーフェス疾患、霧視、視力障害、眼出血複視、眼部腫脹、視神経乳頭浮腫、羞明
耳・迷路障害回転性めまい聴覚障害、耳痛耳鳴
筋・骨格系筋骨格痛(17.1%)、関節痛(8.6%)、筋痙縮(8.3%)、背部痛筋骨格硬直、筋力低下関節炎、側腹部痛関節腫脹、投与中止に伴う筋骨格系疼痛
消化器悪心(18.1%)、上腹部痛(8.8%)、嘔吐(9.0%)、便秘(7.9%)、下痢(7.6%)、腹痛(5.6%)、消化不良、腹部膨満、鼓腸、腹部不快感、胃腸炎口内炎、口内乾燥、痔核、胃食道逆流食道痛、胃潰瘍、裂孔ヘルニア、メレナ、歯肉炎、歯の知覚過敏、口腔内潰瘍形成、潰瘍性食道炎吐血、亜イレウス
肝臓ビリルビン増加(29.9%)、ALT増加(26.4%)、AST増加(14.5%)、ALP増加、γ-GTP増加肝腫大胆汁うっ滞
呼吸器呼吸困難、咳嗽鼻出血発声障害、胸膜炎、肺高血圧症、口腔咽頭痛胸膜痛、咽喉刺激感、喘鳴
心臓障害動悸心房細動、頻脈、冠動脈疾患、徐脈、期外収縮駆出率減少、心拡大、チアノーゼ、房室ブロック、不整脈心雑音
血液リンパ球減少症発熱性好中球減少症、好酸球増加症血小板血症、白血球増加症
血管障害高血圧、潮紅低血圧血腫、血栓症高血圧クリーゼ
腎臓血中クレアチニン増加BUN増加頻尿、排尿困難、着色尿、血尿尿意切迫、尿失禁、腎不全
生殖器女性化乳房、勃起不全月経過多、乳頭腫脹、乳房硬結、乳房痛
感染症毛包炎、鼻咽頭炎、ヘルペスウイルス感染気道感染、気管支炎、カンジダ症せつ、皮下組織膿瘍、肛門膿瘍、足部白癬尿路感染
内分泌障害甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症、続発性副甲状腺機能亢進症甲状腺炎
代謝障害高コレステロール血症(5.4%)、糖尿病、食欲不振、高尿酸血症、脂質異常症、高トリグリセリド血症痛風、低血糖脱水、食欲亢進
全身障害疲労(10.8%)、無力症(6.6%)、末梢性浮腫(5.6%)、発熱、顔面浮腫、けん怠感、悪寒、胸部不快感、胸痛、疼痛過敏症、熱感、重力性浮腫、限局性浮腫、口腔乳頭腫、冷感インフルエンザ様疾患
臨床検査低リン酸血症(14.8%)、リパーゼ増加(10.5%)、血中アミラーゼ増加(6.2%)、低カリウム血症、低カルシウム血症、体重増加、体重減少低マグネシウム血症、低ナトリウム血症、血中インスリン増加、血中非抱合ビリルビン増加、CK増加、超低比重リポ蛋白(VLDL)増加、高カリウム血症、高カルシウム血症血中副甲状腺ホルモン増加、トロポニン増加、LDH増加高リン酸血症
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