心筋に血液を送る冠状動脈が狭くなったり、詰まったりして、心筋の血液が不足することを心筋虚血といいます。運動時などに心筋虚血が生じると、通常、胸の痛みあるいは息切れなどを覚えますが、時に症状を感じないことがあります。これを無症候性心筋虚血といいます。

まったく無症状で健診などで見つかる場合と、狭心症や心筋梗塞後に無症候性心筋虚血を合併している場合があります。後者は、軽度の負荷により心電図では虚血性の変化が示されているにもかかわらず痛みを自覚しません。

日常生活で、運動により心拍数が増加したり血圧が上昇したりして心筋への酸素供給が増すと、酸素の供給が不足して心筋虚血が生じます。

検査は、日常連続心電図検査、運動負荷心電図検査、運動負荷心筋シンチを行い、診断をつけます。運動が困難な場合は、心筋虚血を画像化して診断する薬物負荷心筋シンチ検査を行います。

治療は、動脈硬化危険因子の高血圧・高コレステロール血症(脂肪異常症)、糖尿病を治療する薬を用いて、無症候性心筋虚血の頻度や程度を改善していきます。

狭心症のある場合は、ニトログリセリンなどの硝酸薬、β遮断薬、カルシウム拮抗薬などで症状を軽減させます。

場合によっては、カテーテルを挿入して狭くなっている部位を広げたり、広げたところにステントという網状の管を留置して、血行再建を図る治療が行われることもあります。ただし、全く症状がない場合の血行再建術による生命予後の改善効果は証明されていません。

新たに狭心症や息切れなどを自覚した場合は、速やかに受診しましょう。無症候性から有症性へと悪化、あるいは病態が不安定化している危険性があります。