心臓は一定のリズムで拡張と収縮を繰り返して血液を循環させていますが、この活動は「洞結節」と呼ばれる部位から命令が出ることで始まります。洞結節から出た命令は心房を経由して、「房室結節」に至り、さらに心室へ伝わって心臓全体が動きます。この命令を伝達するシステムを刺激伝導系と呼びます。

高度・完全房室ブロックは、刺激伝導系内の房室結節での命令の受け渡しに重度の障害があるか、または命令が全く受け渡しできなくなった状態をいいます。

上部から命令が来ないため、心室の活動は低下し、脈拍数が極端に少なくなります。このため全身への血液供給量が不足するので、息切れ、疲労感、むくみなどの心不全症状が現れます。肺水腫のような危険な状態に陥ることもまれではありません。脳への血流が不足すると、めまいや失神などの症状に見舞われます。転倒によってけがをし、大事故につながることも少なくありません。時には死に至ることもあります。

  • 薬を用いた治療は安全性や有効性の面で問題が多く、ペースメーカーという機器を心臓に植え込むことが唯一確実な方法です。

めまいや失神、息切れ、疲れやすいといった自覚症状があるときは、速やかに入院し治療を開始してください。

自分では無症状と思っていても、知らず知らずのうちに症状が出ていることがあります。症状を年のせいと片付けてしまわないようにしましょう。

ペースメーカー移植後は、定期的にペースメーカー外来への通院が必要です。強い電磁場に近づかないようしてください。詳細は入院後に説明が行われます。

普段の生活で気をつけてほしいこと

<ペースメーカー移植前>

  • 塩分摂取を控えましょう。
  • 過度の運動は控えましょう。
  • 症状が出たり悪化するときは直ちに受診してください。
  • 体重を測定し、通常より2kg以上増加していたら受診してください。

<ペースメーカー移植後>

  • ペースメーカー外来を定期的に受診してください。
  • ペースメーカー手帳を常時携帯しましょう。
  • 医療機関を受診する際は、ペースメーカー移植後である旨を医師に必ず伝えましょう。

<ペースメーカー移植前>

  • 自動車の運転や高所での作業、登山、ハイキング、水泳などは、意識を失ったときに危険が大きいので避けましょう。

<ペースメーカー移植後>

  • 発電所・変電所・工場の構内、大出力のエンジンやモーター、MRI検査など強い電磁場に近づくのは避けましょう。
  • 稼働中の万引防止装置やIH調理器のそばに長時間とどまるのは避けましょう。