本態性振戦は、原因がわからない(本態性)ふるえ(振戦)をいいます。振戦とは、自分の意思とは無関係に規則的なふるえが生じる不随意運動のことで、最も一般的に見られる運動障害です。

ふるえ以外に症状がなく、生活に支障がない場合は、経過観察をしていきます。生活上の支障を感じた際には、内服薬を用いて治療します。薬は一般的によく効き、何もできなくなるほどひどくなるケースはまれです。

1,000人に4~5人に発症するといわれています。多くは中高年で、高齢になるほど発症率は高くなります。

コップを取ろうとするなどの運動時やコップを持つなど一定の姿勢を保つときにふるえが生じます。安静時にふるえが起こることはまれです。精神的な緊張でふるえは強くなり、飲酒によって症状が軽くなることが多いです。ふるえは、基本的には両手指に出ることが多く、頭部だけに出ることは10%以下とまれです。足から症状が始まることもあります。

発症後は、加齢とともに徐々に進行していく可能性があり、振幅が大きくなったり、症状のみられる身体の部位が広がったりすることがあります。

内服治療でふるえが改善されるなら、この治療法を継続して問題はありません。ただし、内服治療はふるえを根本的に治すものではなく、あくまでも症状を改善させる治療なので、必ずしも内服を継続する必要はないともいえます。症状によっては、ふるえを軽減したいときだけ、頓服薬として使用することも可能です。

経過観察中に生活に支障を感じたときは再受診し、内服治療について主治医と相談しましょう。6カ月~1年後にふるえの程度に変化がないか、その他の症状が現れていないかなどを診てもらうとよいでしょう。

腕を挙げたとき、手に何かを持ったとき、字を書くとき、箸を使用するときなどのふるえ以外に症状が現れたときには、必ず再受診してください。
例)安静時にふるえる、ふるえの左右差が目立つ、動作が緩慢になったり歩行がスムーズにできなくなるなどのふるえ以外の運動機能の異常。
動悸、頻脈、体重減少、多汗など。

普段の生活で気をつけてほしいこと
  • 過度に人目を気にするあまり、自ら生活の質(QOL)を低下させないように注意しましょう。「ふるえの体質の家系」と割り切ってしまうことも勧められます。
  • ふるえに伴い、生活上の支障を自覚した場合は、内服治療を受けましょう
  • ふるえ以外の症状が見られるようになったら、必ず再受診しましょう。
  • 飲酒によってふるえが軽減しても、飲酒を治療法として常用すべきではありません。