下垂体腺腫は、下垂体に発生する良性の腫瘍です。脳腫瘍の中では発生頻度が高い疾患です。

腺腫が分泌する下垂体ホルモンの過剰または腺腫の増大に伴って視神経が圧迫され、視力・視野障害が生じたときに治療の対象になります。

症状がなくても脳ドックなどで発見されることがあります。腺腫が視神経に接し、下垂体卒中(出血)が起きると失明の危険性がある場合には、治療の対象になります。

過剰産生される下垂体ホルモンのうち、プロラクチンが過剰な場合は無月経乳汁漏出が生じ、成長ホルモンの場合は先端巨大症が、副腎皮質刺激ホルモンの場合はクッシング病、甲状腺刺激ホルモンの場合は甲状腺機能亢進症になります。

下垂体機能不全による副腎クリーゼ(副腎不全)にも注意が必要です。

診断の確定には、血中下垂体ホルモン・関連ホルモンの測定、MRI検査を行い、下垂体機能不全が疑われるときは負荷試験を行います。

プロラクチン産生腺腫の治療は、原則として外来でのカバサールの内服治療です。半年から1年ごとに定期的に血中プロラクチン値の測定、MRI 撮影を行います。

非機能性腺腫、先端巨大症、クッシング病の場合は、鼻腔(鼻の奥にある空洞)の奥の喉頭骨底部前方を経由する経蝶形骨洞手術が第一選択になります。入院が必要で、入院期間は術後4日から2週間です。なお、蝶形骨洞は副鼻腔の一部で、下垂体の前にある空洞です。

急激な視力障害、眼球運動障害を起こす下垂体卒中の場合は、緊急の経蝶形骨洞手術が必要です。

経過観察の場合は、半年から1年ごとに定期的にMRI 撮影を行います。