私たちは常に、酸素を空気中から取り込み、体の中にできた二酸化炭素を排出する呼吸をしています。この機能が著しく障害され、酸素が十分に体内に取り込めなくなった状態(低酸素状態)を呼吸不全と呼びます。

症状が1カ月以内に起こる場合を急性呼吸不全といい、酸素不足が体内の組織や臓器に重大な悪影響を与えます。

呼吸不全を起こした原因について精密検査が行われ、これに対しての治療も同時に行われます。

死亡率は報告によって異なりますが、35~65%といわれています。加齢または併存疾患によりさらに死亡率は高くなります。

急性呼吸不全のなかの一つが、急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome:ARDS)です。重症の肺感染症、敗血症、誤飲、急性膵炎などの重い病気や大量輸血、体に負担がかかる大きな手術後、有毒ガスの吸入などの際に起こります。

急性呼吸窮迫症候群のほとんどの場合、入院して治療が行われます。低酸素状態を改善するため、症状に応じて酸素の投与、場合によっては人工呼吸器を装着し呼吸を管理します。また状態によっては集中治療室(ICU)での全身管理が必要になります。

急性呼吸窮迫症候群では、迅速な対応が必要です。

体を動かしたときに感じる息切れ(労作時呼吸困難)、これに伴って発熱、胸がどきどきするなどの症状が現れた場合は、現在受診している医療機関や救急病院などを早めに受診してください。

唇や皮膚の色が青~紫色の状態となるチアノーゼが見られる、酔ったときのように暴れるなどの不穏行動が現れる、意識がもうろうとしてくるといった場合には、すぐに救急車を呼んでください。