食道裂孔ヘルニアの大半を占めるのは、横隔膜から胸部に胃がはみ出した滑脱型食道裂孔ヘルニアです。

ヘルニアそれ自体に自覚症状はありませんが、胃の内容が食道へと逆流する胃食道逆流症と合併すると、焼けつくような痛みを伴う胸やけ、胸や喉の痛みや吐き気、夜間の咳など、さまざまな自覚症状が生じます。まれに鼻や歯の異常、耳の痛みなどが生ずることもあります。

もう一つの傍食道同型食道裂孔ヘルニアの場合は、逆流は生じないものの、ヘルニア部分で食道下部が圧迫されるので、つかえ感が生じたり、息苦しくなったり、血液の循環障害が生じて孔があいたりし、重症となることがあります。

滑脱型食道裂孔ヘルニアの場合、自覚症状がなければ、特別な処置の必要はありません。

胃食道逆流症あるいは逆流性食道炎を合併する場合は、前かがみの姿勢や排便時の力み、腹部の圧迫などを避ける、香辛料・アルコール・タバコを控える、食後すぐに横にならないなど生活習慣の改善が大事です。薬により治療しますが、高度の場合は逆流防止手術が必要となります。

傍食道同型食道裂孔ヘルニアの場合は、自然に治ることはないので、また、症状も重いので、手術をすることが多いです。手術後の経過は良好です。