A型肝炎は、A型肝炎ウイルス(HAV)が感染して起きる急性の肝障害です。

原因は、汚染された水や食物を食べることによって生じる経口感染です。かつては生ガキなどの貝類の摂取後の感染が多く、冬から春にかけて多発していましたが、2000年以降は、季節性が認められません。これには、輸入食品や冷凍食品などの普及など食材流通の変化が理由にあげられます。

症状としては、38℃以上の発熱、食欲不振、倦怠感などのほか、黄疸がみられます。

A型肝炎の場合、血液検査では肝機能の明らかな上昇や胆道系酵素の上昇が認められます。他の急性肝炎と区別するためウイルス検査をはじめとする各種検査を行い、最終的には血清IgM-HA抗体(免疫グロブリンの一つ)を確認することによって診断します。

治療は、安静が基本です。ただし、約1%に劇症肝炎が発症する可能性があり、そのため成因や重症度を速やかに調べる必要があります。

一般に予後は良好で、軽症の場合は治療の必要がなく、回復まで定期的に観察していきます。

黄疸や肝機能をチェックするPT(プロトロンビン時間)の低下が認められる場合は入院の上、厳重に管理します。

高齢者では特に重症化し、命にかかわることもあります。食材の取り扱いと衛生面の注意、手洗い励行に努めましょう。

男性の同性愛者間の発症例が増加しています。性行為感染症としての側面もあることを理解しておきましょう。

衛生環境の改善で若い世代のHAV抗体保有率が低下し、若い人々の間の増加が予想されます。必要なら免疫グロブリンやワクチンを接種しましょう。