抗利尿ホルモンであるバソプレシン(ADH)は、腎臓で水を再吸収することで、体内の水分が不足することがないように働くホルモンです。
ADH分泌過剰症は、ADHの過剰によって水がたまりすぎ、血液中のナトリウムが薄まって低ナトリウム血症を起こす病気です。
ADH分泌過剰症の原因としては、肺がんなどの腫瘍がADHを産生している場合と、脳などの病気でADHの分泌が盛んになる場合に分けられます。
血中のナトリウムが薄まると、倦怠感、食欲低下などの症状が現れますが、症状に気がつかないことも少なくありません。この場合、病院などの検査時に、低ナトリウム血症として発見されることがほとんどです。一方、重症の低ナトリウム血症になると、意識がなくなることがあります。
治療の原則は、水分摂取を制限することが基本です。ほかに、抗利尿ホルモンの働きを抑える薬剤が用いられることもあります。