前立腺は膀胱の下にあるクルミ大の臓器です。この前立腺が肥大して、尿路を閉鎖する病気です。

特徴的な病的症状としては、尿が急に膀胱から排出しない急性尿閉があげられます。この発症率は1,000人中6.8人です。また、高齢者、国際前立腺スコアIPSSの値が高い、1回の1秒当たりの尿の排出量である最大尿流率が12mL/sec未満、前立腺の体積が30mLより大きいなどは、急性尿閉の発症の危険が高くなります。

30歳くらいから加齢にしたがって増え、80歳代では約90%に認められます。生理的な加齢現象ともいえます。

症状としては、排尿したいのに尿がすぐに出ない、少ししか出ない、出るのに時間がかかる、排尿後もすっきりしない、尿が残っている感じがある、夜間やたらにトイレに行くなどがあげられます。

治療薬には、尿の出をよくするものと、前立腺を縮小させるものと、膀胱・前立腺・尿道の血流をよくすることで弱った機能の改善を図るという、3薬があります。尿の出をよくする薬は交感神経の働きを抑えて尿道を広げます。前立腺を縮小させる薬は女性ホルモンの1種からつくられたものです。血流の改善の薬は、勃起障害(ED)や肺動脈性肺高血圧症の治療薬と同一の薬で、1番新しく認可された薬になり、第3の治療薬といえるでしょう。

よく使用されるα1遮断薬は前立腺と膀胱頸部の平滑筋の緊張をとく作用があり、3分の2の患者さんに症状緩和の効果が認められています。

風邪薬や深酒は尿閉の契機になります。排尿困難と下腹部膨満感があるときは尿閉の疑いがあります。受診しましょう。

普段の生活で気をつけてほしいこと
  • 排尿を我慢せずにトイレに行きましょう。
  • 冬場は風呂にゆっくりつかり、体を温めましょう。
  • 1日の尿量を1,500mL以内にコントロールしましょう。
  • 市販の風邪薬の服用は避けましょう。
  • 過度の飲酒は避けましょう。