腎臓は、寝ているときには正常な位置にあっても、立つと5㎝以上、正常な位置から下降することがあります。これを遊走腎といいます。成人女性の約2割にみられます。

腎臓の下降は、ほとんどの場合、無症状です。ただし2~3割の人で側腹部痛や血尿、蛋白尿などがみられ、その中の一部に悪心や嘔吐を伴う人がいます。それでも、症状の多くは横になると改善します。腎臓や尿管の機能が落ちることはまれです。

しかし、遊走腎の場合は、立っていると腎臓の血流量などが低下したり、尿管屈曲や水腎症で尿の流れが悪くなったりし、強い痛みを感じます。血尿をみることもあります。

診断は、症状と診察、排泄性尿路造影、追加の特殊な超音波検査などから確定します。

治療は、最初に体重を増やし腎臓周囲の脂肪を増やして腎臓の下降を抑える肥満療法や腹筋・背筋を鍛える運動療法を行います。

改善されない場合や生活の質が落ちる場合は、手術により腎臓を下がらないようにする腎固定術を行います。

最近では、筋肉などを切らずに体に穴をあけて治療する腹腔鏡手術が行われています。手術による肉体への負担も軽く、良好な成績を収めています。